「井川遥さんがとにかく素晴らしい」平場の月 akiraさんの映画レビュー(感想・評価)
井川遥さんがとにかく素晴らしい
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中年の男女が中学校卒業以来、三十数年ぶりに再会し、互いに惹かれ合う物語。結末はとても哀しく、ある意味では定型的な悲恋だが、私には深く刺さった。鑑賞中よりも、見終わった後にじわじわと心に染みてくる。そんな時間差の余韻が心地よく、気づけばすでに三度も観てしまった。
登場人物は、主人公の二人を含め、皆ごく普通の市井の人々。まるでNHKの『ドキュメント72時間』に登場するような、どこにでもいそうな人たちばかりだ。でも、そこがいい。感情移入しやすく、彼らの人生に自然と寄り添いたくなる。平凡に見える日常の中にも、それぞれのドラマが確かに存在していて、その姿を見つめるカメラの眼差しがとても温かい。鑑賞後に原作小説も読んだが、映画の方がほんの少しだけ、登場人物たちに対するまなざしが優しく感じられた。
物語は悲恋だが、決して大げさではなく、淡々とした描写が続く。その抑えた演出が、かえって切なさを引き立てている。静かな語り口の中に、深い感情が確かに息づいている。
俳優陣は皆素晴らしかったが、特に井川遥さんの演技には心を奪われた。難しい役どころだと思うが、見ているこちらが思わず応援したくなるような、健気で芯のある女性を見事に演じきっていた。とりわけ、ラスト近くの自転車の二人乗りではしゃぐ姿と、その直後に訪れる行き違いからの別れの場面が、あまりにも切なく、今も胸に焼きついて離れない。
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