「映画がうまい 誰だこの映画を作ったのは とっても素晴らしい」平場の月 らぐさんの映画レビュー(感想・評価)
映画がうまい 誰だこの映画を作ったのは とっても素晴らしい
映画館で泣かなかったのに、運転中じわじわ泣けてきた、余韻がすごい映画です。
私は嫌いじゃないけど恋愛映画はあんまり見ない、選択肢にはあまり出てこないタイプなのですが
星5!!といえるレベルでイイ映画でした。
映画に限らず、漫画も何もかも恋愛系もバトルもなんにせよ
簡単に泣かせるには死がいちばん手っ取り早いと思っているので、その死をどう扱って話を持っていくかって言うのが重要だと思うのですが
それがうまかったなーと。 展開はありきたりで予想がつくんだけど、俳優の演技と監督の場面場面の魅せ方がむちゃくちゃ上手だったって感じです。
個人的に映画がうまい!!(?)と思った感想なのですが、起承転結がすごく綺麗。嫌なシーン、不要なシーンが個人的にはひとつもないと思うくらい綺麗でした。
窓の外を見て、何を考えてたの。と須藤が言ったら、「夢みたいなことを考えてた」という須藤。
そこで二人が須藤の家の中に入るシーンがある。きっと「これが夢みたいなこと」であるんだろうなと察したところ。
私(視聴者)が知らないだけで、映画にあったあの中学生の場面以外にもきっとこの二人はすっごい中学生の時に色々話したんだろうな~と
最後の自転車のシーンや、どんな大人になりたいか等話してるところで思いました。
それを見たかったと思うと同時に、それは無粋だとも思った。でもなんだかそれがすごく素敵なことだなぁと。
二人のベッドルームのときに、人工肛門の音。須藤は泣きそうになりながら、「ごめんね止められないの」となるが、青砥は「そんなのいいんだ」と抱きしめるシーン。あまりにも「愛」でした。
最後の畳み掛け。最初に場面が戻り、12月20日ってそういうことか!になったあとの訃報。
青砥「(須藤が死んだと聴いた直後のびっくりした顔)」私「まあ展開的にそうよな」
→須藤妹「青砥さんにも連絡しようかと思ったんですけど、姉が誰にも言うなって言ったから、悩んでしまって」青砥「(信じられない顔で部屋を見渡す)」私「まあそうよな」
→青砥「(居酒屋で薬師丸ひろ子のメイン・テーマを聞きながら泣くシーン)」私「まあそうなるな」
→エンドロール:私「あれ、なんか泣けてきた」の、時間差。
全く青砥と同じだった。じわじわとした悲しみを侵食するように植え付けてくるというのはすごいと思った。
すべてのタイミングが良いも悪いも凄くよかったストーリーなのだなと。
きっと須藤がDV旦那に熱をあげているとき、年下の男に貢いでるときに青砥と再会しても、おそらく青砥も結婚していたし、お互いこういう関係にはならなかった…んじゃないか…?
だから私は最後に須藤は亡くなってしまったけれど、多分全てがこのタイミングでなければいけなかったのだろうと思いますね。
癌が全身に転移してそのまま亡くなった話でも、あのプロポーズした日に
癌の転移が見つかったんだっていうのは、青砥も須藤も悪いわけじゃないけど
もし転移を聞いたあとだったとしても、多分青砥プロポーズしてたんじゃないかなぁと。
病気を受け入れてくれる、昔好きだった、汚い自分全てを今だって受け入れてくれる男が
夢のようで、好きで、怖ろしくもあり、とてつもなく愛おしく
須藤にとって思い出の再生と続きだったのだろうと切なくなりました。
以下、簡単なあらすじ解説(ガッツリネタバレ)
・主人公、青砥(あおと)が朝起きて、ニュースを見ているシーン。今日から12月、という言葉にカレンダーをめくる青砥。12月20日に丸をしてある。
・青砥、おそらく働いてるところは製本工場?そこの兄ちゃんやおじさん、おばさんたちとも仲が良い青砥。
・仕事から帰ってくると、家に青砥の息子らしい若い兄ちゃんが。マンションの保証人のサインを貰いにどうやら来る。
・どうやら青砥は母さんはゼクシィを買って再婚を考えているらしい。青砥は離婚しているっぽい。
・12月20日に丸をしてある。息子がそれに気がついて、なにこれ?ってなる。
・場面が変わって胃カメラでデキモノみたいなのが見つかる青砥。そのデキモノを調べるのに、大体は大丈夫だろうけど、万一ってこともあるから。と検査することに。
・その検診センターの売店で働く須藤という女。青砥がご飯を買おうとして、もしかして須藤?と再会。ふたりは中学の同級生。なんならその隣にまた女の同級生。青砥が「なにこれ、同窓会?」と笑う。
・シフト交代だったらしく、須藤は裏へ戻っていくのを見た青砥は、待合室で須藤を待つ。そのまま一緒に公園へ。どうやら須藤は中学の時に引っ越しして、色々あって地元に戻ってきたらしい。
・二人でお互い近況話し合ったりしよう、とお互い定期的に会うことに。
・ほぼ毎週のようにとある焼き鳥屋で会う。その焼き鳥屋で流れてた曲を口ずさみ、「これ、なんて曲だっけ?」ゆっくり歌い出す須藤。「確か〇〇が文化祭で歌ってたやつだよな?」と二人でハミング。焼き鳥屋の店主が「薬師丸ひろ子」とだけいい、二人でそうだ!となって、店主がそれからよくふたりを気にかけてくれる。
・が、とある日予約をしていなかったため入れず、どこも断られ、須藤がうちで飲もうと言うが青砥は「男女だからそれはダメだろ」と言う。しかし須藤は「ぶっちゃけお金が無い。毎週飲みに行くのはしんどいから、家で飲みたい、というのを聞き、青砥は折れて須藤の家に向かう。
・過去話。須藤は引っ越したあと、どうやら結婚して、その男が金持ちだがろくでもない、けど須藤はその男が大好きで、ベタ惚れで、でも若くして亡くなった。
・そのあと須藤は銀行で働いていたが、そこに来る美容師の年下の男に貢ぎ始めてしまう。最終的には銀行の稼ぎだけでは物足りず、バイトもしても足りず、貯蓄に手を付け、亡くなった旦那の家を売り、ほぼ全部その美容師の男にお金をあげたらしい。
・そしてちょっとのお金で地元に戻ってきたとのこと。
・青砥も青砥で5年前に離婚したこと、離婚後アル中になってしまったこと、でも「離婚でアル中ってださくないか?」って笑えるくらいには復活してることと、それに対して「ださい!」っていう須藤。
・そして実は須藤も大腸にポリープがあることを告白。検査結果は青砥と同日で、その日の夜にどうだったか話そう。となる。青砥が須藤に「俺はなにもなかった、お前はどうだったんだ?今日遅かったな」と言うと
『妹に会っていた。手術になったら、親族のサインが必要だから』と。
・須藤、手術へ。抗がん剤治療も進みつつ、青砥といい感じになり、付き合うことに。入院中、三日月のネックレスをプレゼントして、喜ぶ須藤。
・しかし退院して人工肛門を取り付けて、なんとも言えない顔の須藤。青砥とスーパーに出かけるが、「臭くない?私トイレに…」と頻繁に匂いを気にする須藤。「別に臭くないけど…」ってなる青砥。
・誕生日、12月20日はどこへ行きたい?温泉旅行とかもいい、個室についてる露天風呂だったらこれ(人工肛門)も気にならないだろ?という青砥に、「退院したてで、今は少しずつ日常を取り戻してて、旅行とか大きなことは考えれない。から、来年に行こう、来年の12月20日に、温泉旅行」という須藤。
・須藤入院中に青砥は須藤妹にあっていて、そこで付き合ってるとか色々で祝福してくれる須藤妹。
・そんな感じで日にちが経ち、もう少しで須藤の誕生日12月20日。「どこでご飯食べに行く?銀座?」という青砥。「そんな銀座なんて。池袋とかでいいよ」という須藤。「じゃあ買い物とか、俺にだってなんか(金を払わせるような祝い事を)させてくれよ。アクセサリーとかはどうだ?」「ネックレスで十分嬉しい、1つでいい、これがいい」「じゃあ、指輪とか…」でプロポーズをする青砥。一緒にいたいんだ、これから先、という青砥に須藤は「それだけは言っちゃいかん。それだけはダメ。もう出てけ、顔も見たくない」という須藤。
・青砥は色々俺のことが本当にどうでもいいのか?とか色々聴いて、そのたびに須藤は「どうでもいい、もう会いたくない。」と顔を合わせない。
・「お前は約束を破るか?」と言われて「(ここ重要なのに忘れた!無言だったか、破らないって言ったか…)」に、青砥が「1年後の温泉旅行、行こう。どこがいいかな、お前の体調が良ければ新幹線に乗って熱海でもいい」と言って、「熱海は、行ったことがない」の言葉を最後に、青砥が家を出ていくシーンに。
・そこから最初に戻って「12月20日に丸をしてある青砥のカレンダーをアップの構図」最初に繋がる。
・ぶー、というスマホの着信がなる。急いでメッセージを開くと、ただの広告。継に映し出されたのは、その須藤と最後に別れてからもずっと送り続けたであろう須藤と青砥のメッセージ。もちろん須藤からの返事はなく、ずーっと青砥がひとりで須藤にメッセージを送っていた。
・メールが来て、あと予約のお日にちまで1週間です、という熱海の宿から。仕事中、今日は飲みに行くぞ~とみんなでこそこそわいわい、昼休み中も熱海のことを調べていたところ、職場のひとから「そういえば須藤さん亡くなったらしいよ」と。
・青砥急いで須藤の家に向かって(多分早退)たまたま窓を開けてる須藤妹と出くわす。「二ヶ月前に亡くなった」「葬式は親族だけにしろと言われてた」「青砥さんにも連絡しようかと思ったんですけど、姉が誰にも言うなって言ったから、悩んでしまって」「青砥さん呼んでこようかって言ったら、合わせる顔がないと言っていた」「『青砥、あれからちゃんと胃カメラと大腸検診行ってるかなあ』が最期の言葉だった」という妹。その間、青砥はまるで信じられないという顔で部屋を見渡す。
・そのあとに須藤と通ってた焼き鳥屋に行き、店主に「久々だな」と言われ、なんとその焼き鳥屋で職場の兄ちゃんの昇進祝い。ちょっと青砥は席を立ち、いつもの須藤と一緒にいた席に座り、薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」が流れ、それを聞いた青砥が泣きはじめ、どんどんと店主が薬師丸ひろ子の音楽のボリュームを上げていき、周りの音がどんどん霞み、場面は青砥の泣き声と音楽だけになり、エンドロール。
また、随所随所で二人が中学の時に想い合うようなシーンが差し込まれる。
須藤は家庭環境が良くなく、直接的ないじめはなかったが「須藤母が他に男作って出ていった」「最近団地を須藤母が徘徊している、男は年下だったから捨てられたんだ」と噂と立てられひそひそされ、須藤は孤立したりなどのシーンも色々挿入された。あと青砥が須藤に告白して、「青砥がダメなんじゃなくて、みんなに対してそういう気持ちにはなれない」「私は一人で行きていくんだ」と中学の須藤は言っていたり。
また、青砥の母が認知症で、途中亡くなってお葬式で元嫁が来たり、須藤も参列していたり。
他にも同級生たちが出てきたりします。みんないい人たちです。
年下の美容師くんが須藤に会いに来てたりといろいろありましたが、だいたい大まかなストーリーはこんな感じ。
泣くとかいうより、心に穴が空いたというより
もっとズッ……とした鉛のようなものを心につけた気分でした。
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