劇場公開日 2025年11月14日

「月に託す「ささやかな願い」。」平場の月 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 月に託す「ささやかな願い」。

2025年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

おとなの恋は分かりにくくて面倒くさい。若い頃であれば、ストレートに気持ちを相手にぶつける所を、なかなか本心が明らかにならない。須藤は「青砥がちょうどいい」と本心を隠して嘯き、青砥は最初から須藤をお前呼ばわりして友達関係を強調しようとする。どの時点でお互いを好きになったのかと思っていると、どうやら再会した最初からというより、中学生時代からずっと好きであったかのようである。
堺雅人演じる青砥が「いい奴」過ぎる。須藤が青砥の事を妹にひそかに「初恋の君」と呼んでいたことで、須藤の本心が分かった気がした。悲惨だった少女時代に手を差し伸べてくれた青砥は彼女にとってずっと憧れの存在であったようだ。再会して最初はそっけない反応を示すが、青砥が以前と変わっていない事にほっとしたと思う。二人が「互助会」的な関係から、なくてはならない関係に進展していく過程がとても良く表現されていたように思う。照れや外聞を捨てて本心で向き合っていく所がとてもいい。中学生時代に、何もできないけど近くにいてくれた彼は、再会してからも大病を患った彼女に寄り添ってくれた。
それだけに、彼女の嘘から二人が別れてしまったのはとても残念である。負担をかけたくないとか、美しい思い出だけを持っていきたいという気持ちは分からなくはないが、青砥の心情を思うと悲しすぎる。見終わった後に、悲しさと美しさが強く印象づけられたということは、その点では作者の意図はうまくいったということかもしれない。
将来に大きな希望はないが、ささやかな夢なら持っていい、そんなリアルなおとなの恋物語でした。

ガバチョ
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