「誰かが一緒にいてくれるって本当に大事だ」平場の月 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かが一緒にいてくれるって本当に大事だ
中学時代の初恋の人と再会し関係性を深めていく2人の物語。若かりし頃、映画「マディソン郡の橋」を観て、歳を重ねた男女の恋愛はちょっとキツいなと思ったことを思い出した。でも、自分がおじさんになってみると恋愛することはあり得ると感じるし、映画で同年代のラブシーンを観ても全く異なる印象を持っていることに驚く。歳を重ねないと受け入れられないものってある。
本作に登場する2人(青砥と須藤)の周りに起きることは他人事ではないことばかり。離婚、親の介護、病気の発覚、闘病、若い異性にハマってしまう恐ろしさまで。須藤が部屋を借りる際、このままここで死んでいくんだなと感じ、孤独死した時に迷惑をかけないようベッドにしたというシーンはものすごく考えさせられるものだった。
ただ好きだから付き合うとか、ずっと一緒にいようとするという、若い時のような情熱で突っ走る恋はしづらい年齢ではある。周りのことや先々のこと(直近のことだったりもするが)を考慮しながら慎重に事を進めていく2人の姿が、もどかしいけど切なくてとても共感できるものだった。
でんでん演じる八十島が語る「誰かが一緒にいてくれるって大きい」というセリフは本当に重い。一緒にいたい、一緒にいてほしいと思い合える人がいるのは幸せなことだと思う。だからこそ最後が悲しすぎた。最後まで一緒にいることを拒否してしまった須藤の決断について、観終わった今でも考えると悲しくなる。彼女の「太さ」は芯の強さであるが、人に頼ることができない(または拒否している)脆さや悲しさを内包している気がしてならない。だって、須藤もカレンダーに丸をつけていたんだから。あの約束で頑張れていたのかと想像するとさらに切なくなる。中学時代の初恋だからこそ、いつまでもキレイな自分を見せたいと考えたのかも。そもそも自分のことを青砥にふさわしくないと考えていたことも大きい。でも、そんなことも全部受け止めてもらえよ!と強く思ってしまう。ここらへんは男の発想なのかもしれない。
薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」がキーとなる曲として使われていたが、この使い方もうまい。「笑っちゃう 涙の止め方も知らない 20年も生きてきたのにね」というフレーズがこんなにも刺さるとは。松本隆さんはさすがだ。
素晴らしい映画を観たと伝えたいが、ネタバレなしでこのよさを伝えるのがとても難しいことに気づいた。久々にネタバレ設定にさせてもらう。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
