「何か、切実さが・・・感じられないんだよね」平場の月 クリスちゃん脱線さんの映画レビュー(感想・評価)
何か、切実さが・・・感じられないんだよね
痴呆症の母親に、人工肛門(ストーマ)の彼女。
介護に医療とこの映画の客層に刺さるキャッチーな問題を扱っていながら、描写はあっさり。
淡々と諦念と。それでも終わらない日常は続く。
久々の恋心で日常が色付いたのなら、対称的に母親に暴言を吐かれる・ストーマでの失敗など厳しい現実を何かしら上手く描写してほしかった。
須藤がしばしばトイレで悩んだり、スーパーで匂いを気にするカットは悪くはないがもう少し現実的に腹部の着用カットを挟むなり「逃れられない現実」を示した方が、「それでも一緒にいたい」という青砥の覚悟が伝わったと思う。
正直、この映画を見るまでストーマの事など詳しく調べる事もなかった。
ラッパーの漢さんが装具を付けた動画を過去に見た記憶がある。
原作の描写がどうかは不明だが、映像化にあたってこういう問題の核心をぼやかしてエンタメの背景に安易に使用してしまうのはどうなのだろう。
それこそ須藤の言う「こんなのまるでファンタジーだよ!」って感じがした。
後になって最愛の人の死を知らされるという似たような経験がある身としては、このあっけないオチの展開は共感ができた。
自分は久々にメールした携帯に下手な入力間違いのようなものが返信されて。
後でそれが慣れない携帯を使用して返信した彼女の母からのものだと知った。
・・・と、不満な点はあるがこの地味ーな堺版「パーフェクトデイズ」もキャスティングが上手いので飽きずに見ていられた。
エンディング、脳出血の後遺症で麻痺が残る塩見さんがオーディオのボリュームを上げるアシストが印象的だ。
ふと・・・盲目役の夏帆さんが牛丼を口にして涙を流す「箱入り息子の恋」を思い出した。
*蛇足になるが、月が合成なのはやっぱり萎えるぜ。
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