劇場公開日 2025年11月14日

「号泣する準備はすっかりできていた。」平場の月 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 号泣する準備はすっかりできていた。

2025年11月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」は南佳孝の「スタンダード・ナンバー」と同じ曲である。南佳孝が自身として何年たってもいい曲と言われるスタンダードナンバーを作る為に取り組んだ楽曲だ。又両曲は歌詞の方が薬師丸ひろ子バージョンでは女性目線、南佳孝バージョンでは男性目線となっている(どちらも松本隆が作詞)。あのシーンで「愛ってよくわからないけど」の後、薬師丸ひろ子は「傷つく感じが素敵。笑っちゃう涙の止め方も知らない、20年も生きてきたのにね」と歌っていたが、南佳孝では「傷つく感じがいいね。泣くなんて馬鹿だな、肩をすくめながら、本気になりそうな俺なのさ」と歌っている。
深く沁みた映画なので、原作が読みたくなったのですぐに近くの書店で買った。すると、色んな事がわかってくる。須藤は下の名前が葉子なのでハコがあだ名だった。中学の時、階段の下で告白し振られたが何故か青砥が須藤に顔を近づけ頬をあてたシーンはちゃんとあった。青砥が自分の自転車に「乗るか?」と聞いて須藤が「やー、それはあまりに青春だし」のやり取りもあった。
須藤の三歳違いの妹のみっちゃんは夫婦でふじみ野に住んでいる(皆んな埼玉の同じような地域だ)とのことだ。須藤が入院した病室で青砥が会ったときに小太りの主婦とみっちゃんを表現していたので(映画での)中村ゆりでは可愛いすぎるなぁ。とか思った。あまり聞きたくない話だったが、須藤が美容室の子に対しどう貢いでしまい身包み剥がしていったかも詳しく書いてあったし、青砥の前妻(映画では吉瀬美智子)との馴れ初めとよくわからない妻の相談癖の話もあった。平場という表現はヤッソさん(映画ではでんでん)と話してる時に出てた。平場を「おれら、ひらたい地面でもぞもぞ動くザッツ・庶民」と書かれていた。青砥の年収は350万円で須藤の年収も200万円に及ばないの記述もあった。まさに平場の平場だ。服はユニクロ、生活用品は無印良品、ニトリ。日本のどこにでもいる庶民。いつも居酒屋じゃお金続かないんだからヤオコーで惣菜買って、家飲みでいいのだ。
原作のかなりの部分が須藤の闘病の物語である。大腸癌になってしまうのでストーマの取り扱いとその苦労がとても詳しく書いてあった。さらに抗がん剤治療の様子も辛いものがあった。ストーマのお世話にはなりたくないので、大腸の内視鏡検査を私は今年はちゃんとやろうと思う。
須藤の両親との確執が「ひとりで生きていく」と決めた最初の理由だったのだが、それでも2人はちゃんと一緒になればいいと観ている我々は願うが、須藤の人生により培われた「太さ」がそうさせない。プロポーズを拒否され、それでも1年後の温泉旅行の約束をとりつけた青砥だったが、、。呆気ない形で須藤を失ったことを知らされる。
そしてラストは映画オリジナルのシーンである居酒屋で流れた「メイン・テーマ」。号泣する準備はもう、すっかりできていた、。
今や日本が誇る大俳優の堺雅人は流石の演技で全てに好感がもてる。井川遥は直近の「見はらし世代」では短い出演でも強い印象を持ったが、この作品は彼女の為の映画と言えるほど素晴らしい。須藤の「太さ」は彼女にしか演じられないのでは?と思った、。土井監督流石です。「花束」より私はこちらの作品が好きです。

アベちゃん
YOUさんのコメント
2025年11月23日

やっぱり、原作を読むと読まないとで、評価変わってきますよね。

YOU
アベちゃんさんのコメント
2025年11月22日

皆さま、コメントありがとうございました。
それぞれ返信させていただきました。
今後とも宜しくお願い🙇します!

アベちゃん
カールⅢ世さんのコメント
2025年11月20日

南佳孝バージョンは傷つく感じがいいねだったのはよく覚えています。この歳になると、いいねと思ってしまうのに多少なりとも罪悪感があるものの、この映画の奥深さはジワります。文庫版買って帰りました。まだ読んでませんけど。

カールⅢ世
カールⅢ世さんのコメント
2025年11月19日

≫いつも居酒屋じゃお金続かないんだからヤオコーで惣菜買って、家飲みでいいのだ。

なんで、知ってるの。コワ〜

カールⅢ世
Mr.C.B.2さんのコメント
2025年11月19日

共感どうもです。
原作未読だったので違いの解説ありがとうございます。

Mr.C.B.2
トミーさんのコメント
2025年11月19日

共感ありがとうございます。
花束は若い二人の恋愛でしたが、今作は経験を積み、考えも硬直し、体にもガタが来ている50代の恋愛。終わりの視えてる二人にグッと来ました。

トミー
おつろくさんのコメント
2025年11月19日

共感ありがとうございます!

自分は号泣する準備をしないで観に行ったので、鑑賞後はすごくみっともない状態になってしまいました。幸いなことに病院に行ってから映画館に行ったので、マスクをして涙を吸わせたのでバレずに出ていくことが出来ました。映画を観て号泣する人用に、おむつ機能を持たせたマスクを売りだしたら、そこそこ売れるんじゃないかと変な妄想をしていたのは、また別のお話。

おつろく
ひさまるさんのコメント
2025年11月19日

共有ありがとうございました。
この作品は、流れも自然で内容も分かりやすい。そして涙出る作品です。いい作品でした。

ひさまる
あんちゃんさんのコメント
2025年11月19日

共感ありがとうございます。もちろん映画も良かったのですが原作は最近では一番刺さった小説でした。

あんちゃん
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。