劇場公開日 2025年11月14日

「月はどんなときも静かに市井の人々の日々の営みを見下ろしている」平場の月 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 月はどんなときも静かに市井の人々の日々の営みを見下ろしている

2025年11月15日
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鑑賞方法:映画館

かねてから日本のエンタメ業界に足りないものは大人のラブストーリーだとずっと感じている。TVドラマの『最後から二番目の恋』あたりが例外かもしれないが…

アイドルが演じる高校生のラブストーリーや、20代から30代にかけての結婚をゴールに設定したようなものは掃いて捨てるほどあるのたが、恐らく日本社会全体として30代後半を過ぎたらもうみんな家庭に収まっているものだというステレオタイプな既成概念に囚われ過ぎているのであろう。その結果、30〜40代以上の恋愛ものは不倫でドロドロみたいなものばかりになっていく。

しかし、現在の日本では4割近くが一人世帯であるという現実があり、配偶者や子どもと一緒に暮らしていること自体、決して当たり前ではなくなっている。

だとすれば、40代や50代あるいはそれ以上の世代の人間が普通に恋愛をしていてもおかしくないはず。とはいえ、そのくらいになれば、人生山あり谷ありで、酸いも甘いも経験しているだけではなく、頭の方もいろいろ思い出せなくなったり、身体的にもあちこちガタがきたりもする。

本作冒頭で自転所に乗りながら堺雅人演じる青砥が口ずさんでいた歌を聴きながら「あれっ、これ何の曲だっけ?」と思っていたら(しばらく考えて、タイトルは出なかったが歌手名までは自力で思い出せた 笑)、劇中でもほとんど同じような場面が出てきて苦笑。ついでに、40代で胃潰瘍、60代で大腸のポリープを内視鏡で取った自分の経験まで重なった。

1980年代にノスタルジーを感じられる世代にとっては間違いなくいろいろ重ね合わせて鑑賞できる作品だ。

本作については、50代の主人公の恋愛話と、彼らの中学時代の初恋物語が入れ子になって構成される。それは単に甘酸っぱさを演出するというだけではなく、彼らのバックグラウンドを描くことで、子ども時代のトラウマがその後の生き方に与える影響まで立体的に見せてくれる。

楽しいこと、幸せなことばかりではなく、辛いこと、大変なことが人生の中で待ち受けていようとも、月はどんなときも静かに市井の人々の日々の営みを見下ろしている。そして、逆に人々はさまざまな思いを馳せながら月を見上げて過ごすのだ。

そして、薬師丸ひろ子の歌声が切ない。『メイン・テーマ』の「20年も生きてきたのにね」という歌詞を久しぶりに耳にしながら、ABBAが "Dancing Queen" という曲をヒットさせていた頃に 「"only 17" とか言ってんじゃねぇよ」と憤っていた13歳の自分を思い出していた。

Tofu
トミーさんのコメント
2025年11月15日

孤独死を話題にするカップル、現実にはありふれてるんだと思いましたが新鮮な感覚でした。しばらく抱き合ってない同士とかも。

トミー
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