劇場公開日 2025年11月14日

「いくつになっても恋したっていいじゃない」平場の月 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 いくつになっても恋したっていいじゃない

2025年11月16日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

■ 作品情報
第32回山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみの同名恋愛小説の映画化作品。監督は土井裕泰。主要キャストは堺雅人、井川遥、中村ゆり、でんでん、安藤玉恵、塩見三省。脚本は向井康介。

■ ストーリー
妻と別れて地元に戻り、印刷会社で働く青砥健将は、ある日、中学時代の初恋相手の同級生・須藤葉子と再会する。須藤は夫と死別し、地元でパートをして生計を立てていた。再会をきっかけに、互いに惹かれ合うようになった二人は、空白の時間を埋めるように親交を深めていく。しかし、須藤が経験してきた波乱に満ちた人生や、それぞれの現在の立場が、二人の関係に複雑な影を落とす。互いに過去を語り合い、再び芽生えた感情を抱きながらも、現実の厳しさに直面し、大人の不器用な恋愛における葛藤が描かれていく。

■ 感想
大人になってからの恋の機微を繊細に、そして深く描いた本作に心揺さぶられます。大人の落ち着いた恋愛の中に、中学時代の初恋の初々しさが確かに息づいているのを感じ、誰もが遠い記憶に思いを馳せることと思います。

はたから見れば、人生の酸いも甘いも知った中年男女。しかし、記憶の中の初恋相手の姿は、いつまでも色褪せることなく鮮明に残っているものです。再会した二人が、現在の姿に昔の面影を探し、たちまち輝きを取り戻していく様は、胸を締め付けられるようです。もっとも、アラフィフであの美しさを保つ井川遥さんは反則級ですが、誰しも自分の初恋相手は、記憶の中ではこれぐらい魅力的に映るのではないかと深く共感します。

しかし、人生経験を積んだ大人だからこそ、あの頃のように何も考えずに恋に盲目になることはできません。健康や将来、世間体など、さまざまな現実的な要因が頭を巡り、それが相手に負担をかけるのではないかと、アクセルよりもブレーキを強く踏んでしまう。その葛藤は痛いほどよく理解できます。それでも、人はいくつになっても何も諦めなくていいのではないかと思え、二人の姿を眩しく見つめていました。ほろ苦くも切ない、本気の大人の恋の物語を堪能させてもらったような気がします。

そんな大人の本気の恋に説得力をもたせているのは、主演の堺雅人さん、井川遥さんを始めとした俳優陣のすばらしい演技です。その佇まいから台詞回しまで全てが自然で、まるで本当に彼らの日常を覗き見ているかのように、作品世界に深く没入することができます。個人的には、居酒屋店主の塩見三省さんの存在感が非常に印象的で、あの店で旧友とゆっくり酒を酌み交わしてみたいと感じます。

おじゃる
おつろくさんのコメント
2025年11月17日

共感ありがとうございます!

この作品は堺雅人と井川遥だけでなく、居酒屋の大将の塩見三省まで全員が本当の意味で「良い人」たちばかりで、そのシーンが観られただけで凄く得した気分になれました。

原作未読なんですが、順番が逆でも後追いで読んでみたくなりました。

おつろく
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