「上空1万フィートでの狐と狸の化かし合い」フライト・リスク レントさんの映画レビュー(感想・評価)
上空1万フィートでの狐と狸の化かし合い
マフィアの会計担当者を証人として裁判に出頭させるための護送途中でパイロットに扮した殺し屋に襲われる女性捜査官。操縦できるのは殺し屋のみ、証人も信用ならないという状況下での緊迫したサバイバル劇。
身内には内通者がいて疑心暗鬼に囚われる主人公、誰も頼れるものがいない中で飛行機を操縦しなければならない。証人の男にも頼れない、殺し屋は常に攻撃の機会をうかがっている。極限状態の中で果たして生き延びることができるか。
それなりにお膳立ては揃っていてさぞかしスリリングな展開が期待できるかと思いきや、すべてが段取り通りに事が進み、さほど感情の起伏も生じさせないままで物語はラストの予定調和へと進んでいく。
逆によくここまで面白く無く作れたものだと感心させられた。これは脚本に問題があるのかもしれない。
そしてかつてそのたぐいまれな演出力で名声をはせたメルギブソン監督の演出力も皆無。監督はアラン・スミシーでよかったかも。それくらい誰が演出してもどうしようもない作品。
かつて作品の内容は別にして、その圧倒的な演出力から名監督の名をほしいままにしてきたメルギブソン。不祥事を立て続けに起こしてハリウッドから干され、復帰はしたもののかつての栄華は取り戻すことはできず。
本作も製作にまで加わってはいるが、特に真新しさもない凡庸なサスペンス。
マーク・ウォルバーグは禿げ茶瓶のメイクしてまで挑んだ役作りが果たして本作に必要だったのかはなはだ疑問。彼のキャリアに何らいいものを残したとも思えない。
ほんと小粒な作品で劇場鑑賞を見送り配信で見て正解だった。