「エンドクレジットをよく見ると、ラストシーンにもう一人の敵がいたことがわかる」フライト・リスク Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
エンドクレジットをよく見ると、ラストシーンにもう一人の敵がいたことがわかる
2025.3.10 字幕 MOVIX京都
2023年のアメリカ映画(91分、G)
裁判の証言をチャーター機で移送する保安官補を描いたワンシチュエーションスリラー
監督はメル・ギブソン
脚本はジャレッド・ローゼンバーグ
原題は『Flight Risk』で、「苦肉の策」という意味
物語の舞台は、アラスカの辺境の地
イグルーモーテルに身を隠していたウィンストン(トファー・グレイス)は、かつてマフィアの金庫番として働いていたが、今やその犯罪を知る証人となっていた
連邦保安官補のマデリン・ハリス(ミシェル・ドッカリー)は、彼を見つけ出してニューヨークに移送する任務を負っていた
上司のキャロライン・ヴァン・サント(声:レア・レミニ)と連携を取りながら移送を試みることになり、そのパイロットには現地人のダリル・ブース(マーク・ウォルバーグ)が選ばれていた
後部座席にウィンストンを拘束したマデリンは、助手席に乗ってフライトに臨むことになる
ガタガタと揺れる機体に不安を感じながらも90分我慢することになったのだが、出発した途端に計器の故障や、バードストライクなどに見舞われてしまう
ダリルは管制官と話すためにヘッドセットをつけ、マデリンも彼と会話するためにそれをつけた
これにより、ウィンストンは会話に入れなくなるのだが、その際に彼は運転席の下からあるものを見つけてしまう
それはダリル・ブースと書かれたIDで、そこに映っていた人物は別人だったのである
映画は、この閉鎖空間におけるワンシチュエーションとなっていて、パイロットになりすましている男(ややこしいので以下もダリル表記)を交わして、どうやってアンカレジに向かうかを描いていた
アラスカ辺境(おそらく北部)からアラスカ南部のアンカレジまで山を越えるというルートで、アンカレジからニューヨークに行くというルートになっていた
あまりにも遠いので、アンカレジでの出来事は誤差の範囲に思えるが、そこは目を瞑る設定なのかもしれない
物語は、ダリルの正体がわかってからの活劇を描き、徐々にマデリンの過去が露わになるという展開を迎える
彼女は復帰直後で、マデリンの上司に当たるキャロライン・ヴァン・サント(レア・レミニ)が彼女を復帰させて、このミッションに参加させていた
ダリルがマデリンたちの目的を知っていることや、マデリンの過去の仕事内容を知っていることから、当初はキャロラインが内通者だと疑っていた
だが、ウィンストンがある場所に送金をしていて、その住所地がわかったことで、所長のコールリッジ(パール・ベン=ヴィクター)が黒幕であると推理するようになる
そして、所長がダリルを送り込んでいたと思われるのだが、実はその後も刺客が複数登場していた
ラストのアンカレジにて、ミルコ(ミルコ・カディコヴ)という男が警官になりすましてウィンストンの救急車に侵入するのだが、マデリンはその男に気づいてウィンストンを助けることに成功していた
だが、この直前のシーンでは、管制塔で指示を出していたハッサン(マーズ・アリ)と思われる人物(モニブ・アブハト)をマデリンは視認していた
マデリンは自分を助けてくれたハッサンを見つけて安堵していたが、彼女がウィンストンを助けた後には姿を消していた
ミルコを始末した後に、救急車の中を覗き込む数名のスタッフたちがマデリンの視界に映るのだが、そこには彼の姿はなかった
彼がハッサンであるならば、彼女の無事を確かめために彼女の元に来たはずで、そうでないのならば、マデリンが見た男は「ハッサンとの会話を知り、ハッサンになりすまそうとした人物」であるように思える
ハッサン自身がアンカレジにいたのかどうかも描かれず、マデリンが到着したと同時にあの場面に現れるのは不自然で、それを考えると会話の中身を知る人物が偽装していると考えるのが自然なのだろう
男の目的はウィンストンから距離を置かせることだったが、マデリンはその罠には引っかからずにミルコの犯行を止めることに成功していた、ということになる
この一連の設定は個人的な憶測に過ぎないのだが、わざわざ声と登場人物を別の俳優にさせる意味を考えるとこれしかないように思う
コールリッジが画策したことかはわからないが、現地に着くことができてしまったら暗殺を送り込もうとしていたというのはあり得る話なので、深く考えなくても辻褄は合うと思う
だが、映画内では明確に別人とは描いていないので、単なる想像となってしまうのはどうなのかな、と思った
いずれにせよ、そこまで凝った話ではなかったのだが、ラストの「ハッサンは二人一役もしくは別人」がわかるクレジットはわざとなのだと思う
キャロラインとヴァン・サントは同一人物なのだが、劇中でマデリンがどちらの呼び方もするのがとてもややこしい
当初は「元同僚から上司になったのでヴァン・サント呼び」になっていて、後半の切羽詰まったところでは「同僚時代の呼び名キャロライン」に変わっていた
電話の相手の女性が「ジャニーン(おそらく電話交換)」を含めた三人がいるようにミスリードさせる目的があったのかはわからないが、観客側にすんなりと考えさせない余地を作っているのだなあと思った
フロリダ経由でニューヨークというのも不思議な話だが、色々とおかしなことを満遍なく散りばめているので、ハッサン二人説みたいなものもあったりするのかもしれません