劇場公開日 2025年3月7日

「B級シチュエーションスリラーと割り切って楽しむのが吉」フライト・リスク 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5B級シチュエーションスリラーと割り切って楽しむのが吉

2025年3月8日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

単純

興奮

メル・ギブソン監督作だから、マーク・ウォールバーグが出演しているから、と期待値を上げすぎないほうがいい。本編の9割方がアラスカ上空を飛ぶ小型輸送機(セスナ208Bグランドキャラバン)の機内で進行する、ちょっと変わったワンシチュエーションスリラー、しかも予算もそれほどかかっていないB級娯楽作と割り切って観るなら、相応に楽しめるだろう。

パイロットのダリル役でウォールバーグが1番にクレジットされているが、実質的な主人公は女性保安官補ハリス。演じたミシェル・ドッカリー、移送される重要参考人役のトファー・グレイスをあわせた3人のアンサンブル演技も悪くない。メルギブはバイオレンス演出も得意なはずだが、拘束されたダリルをハリスが何度もぶん殴るシーンは実際には当ててないのが見え見えで、やや迫力不足。それでも、コックピットでの取っ組み合いなどは機体が急降下する状況も相まって結構ハラハラさせられた(ところで、ほぼ真っ逆さまに落ちている機体の中で、気を失った人物が機内の後方に数メートル放り出される場面があるけれど、これは物理法則に反している。走行中の新幹線の車内で手に持っている物を放しても、後方に飛んでいかないのと一緒)。

機上のシークエンスは大きなスタジオの中で撮影されている。回転台の上にセスナを設置し、そのまわり270度の範囲を大型LEDパネルでぐるりと取りかこみ、そこに機内から目にするアラスカの山々や雪原といった景色の高精細映像を映し出したという。撮影のために何度もセスナを飛ばすことを考えれば大幅なコストダウンになったはずだし、キャストとクルーを揃えて飛ばしたのに悪天候で撮影できないというリスクとも無縁。ハイテクを活用する撮影技術の普及によって、B級スペクタクルのバリエーションも広がっていくなあ、なんてこともしみじみ感じた。

高森 郁哉