ミゼリコルディアのレビュー・感想・評価
全5件を表示
現代のテオレマか?
ジェレミー(フェリックス・キシル)は殺人を犯しながら表情も崩さず、しかも村のさまざまな人々に愛される。かと思えば、警察の執拗な追及に動揺し、かつて世話になった元パン屋の夫人や、彼に偏執的関心を示す神父に助けられながら、多様な愛を示しながらなんとも言えない結末に至る…という物語。
個人的にはパゾリーニやブニュエルに似た映画的感興を久しぶりに味わった作品だが、観た当初は、その性的有り様に驚きを覚え、共に鑑賞したパートナーほど素直に受け入れがたい抵抗感すら感じてしまった。
しかし時間が経つにつれ、前述した映画的感興が味わい深く心に残り、忘れ難い映画となった。千葉雅也氏の小説にも通じる感覚かもしれない。
ジャック・ドゥヴェレー演じる主人公に偏執的関心を示す神父とジェレミーによる告悔のシーンは本作の白眉と言える。告白するもの聞くものの立場が逆転したこのシークエンスで、ジェレミーは初めて神父の本質的な愛を知り、彼の救いに身を委ねることになる。
物語のはじまりから、何を考えているかよくわからず(その意味では殺されるヴァンサンの方がはるかに人間的だ)ある種、人間性を欠いたまま村の人々への説明不可能な愛の交歓を成すジェレミー。彼の撒く謎の愛の種子は、美しい森(撮影の勝利か!?)で象徴的に描かれるキノコのように村に拡がり、最終的には自らが神父や夫人、その他の人々からの愛に絡め取られていく。
不思議な愛の軌跡を映すこの作品のおかげで、他のギロティ映画も観たくなった。
タイトルなし(ネタバレ)
アラン・ギロディ監督の作品を観るのは、本作がはじめて。
かつて師事していたパン屋主人の葬儀に参加するため帰郷したジェレミー(フェリックス・キシル)。
パン屋主人の未亡人マルティーヌ(カトリーヌ・フロ)のもとに滞在することになったが、マルティーヌの息子ヴァンサン(ジャン=バティスト・デュラ)は気に食わない。
ジェレミーとヴァンサンは旧友同士なのだが・・・
ふたりに共通の友人や神父などと交流するうち、ジェレミーとヴァンサンは争い、ジェレミーがヴァンサンを殺してしまい、ことはヴァンサン失踪事件として捜査されることになる・・・
といった物語で、一応は田舎が舞台のサスペンスなのだが、一筋縄ではいかない感じ。
ジャンル映画に収まらない映画で、「握った掌から妙に滑り落ちていく」というか、そんな手応え。
一般受けはしなさそうだが、嫌いじゃないタイプの映画。
この、どのジャンルにも収まらない(予想どおりには進んでいかない)ところは、マイケル・ウィンターボトムに似ている感じがなくもない。
まぁちょっと気になったのは、皆から愛される主人公のジェレミーだけど、そんなに愛されるタイプかなぁ。
師匠であるパン屋主人の息子夫婦には胡散臭いヤツと思われているが、そこいらあたりが妥当のようにも思える。
なお「ミゼリコルディア」の意味としては
・哀れみ、 憐憫、同情
・[間投詞として] 許してくれ! 何てことだ!
本作では「何という出来事(または、憐れみの有無について)」という感じかしらん。
Panis
いや〜変態な作品でした。
キノコと欲が作品のほとんどを占めているような感じの手応えで、色々な愛が交錯するのが特徴的な作品で、ガッツリ笑いましたし、時々頭の中で"?"マークが出まくったりと未知なる映画でした。
亡くなったパン屋店主の葬式に行ったジェレミーが長い事その家にいる事から始まる違和感が徐々に大きくなっていく作品で、ジェレミー以外の面々が不安がったり怒ったりするのはさも当然なんですが、当のジェレミーが何を考えているのかが表情や言動からではさっぱり分からないというのもどの方向に進んでいくのかというワクワク感があってずっと楽しめました。
成人男性の取っ組み合いの様子が喧嘩慣れしていない感じなのが良い味を醸し出していましたし、その後何度も突撃してはジェレミーを問い詰めるのにあの手この手で潜り抜けるジェレミーが憎たらしくもあり、可笑しくもあり。
ヌルッと登場した神父が今作を掌握していく流れもとても面白かったです。
キノコ狩りからの後半のシーンでの堂々たる様は圧巻で、この人だけは何を考えているかがまだ表情や身体に出ていたのでより覚えやすい登場人物になっていたなと思いました。
神父の愛がなす結末はハッピーとも取れるし、バッドとも取れる、自由な解釈のできる姿だったのも良かったです。
ラストシーンで有言実行をかますのも良いですし、くっつこうとしたのを妥協して手を握るに抑えたとはいえ成人男性よ…となったのも後味が不思議でしたが良かったです。
師匠の奥さんに母性を重ねるならまだしも、性の対象として見るってジェレミーさん守備範囲広いな〜とぼんやりフフッとなりました。
R18+というのを最大限利用して男性のお○んぽをドーンとお見せするので、その絵面にワッハッハと笑ってしまいましたが、他人のおち○ぽをこう大スクリーンで眺めることなんてそうそう無いので良い体験ができたなと思いました。
徹底的に性行為のシーンはカットしているのも印象的ですが、誘惑するシーンなんかはしっかりエロティックでした。
監督の他の作品も見てみたいんですが、間隔空けないと情緒がちょっぴり不安定になりそうなので日を開けてまた観たいなと思いました。
鑑賞日 3/24
鑑賞時間 11:00〜12:55
座席 H-1
車の運転があっても酒は飲むし、男が男に欲情しても良い。
罪に前のめりな神父が面白い。いまの償いのあり方にそもそも諦めが感じられる主人公と神父の会話。山の上のシーン好き。当たり前、をことごとく信用してない作品で個人的に凄く助かる。頭でっかちに善悪、犯罪の完全成立みたいな話だったら興味失ってた。
落ち葉がまれに落ちるカットがあって、山のロケーションも合わせて自然のしみったれた美しさを感じる。秋の色合い。
全5件を表示