木の上の軍隊のレビュー・感想・評価
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惨さ
2年間。2年間という月日があれば、人は変われる。外見も、内面も。高校に入学したばかりの人は、2年経てば卒業する年にもなる。
2年という時間はそれだけ、長い時間。
彼らは2年もの間、終戦を知らずに生き抜いた。
今の時代のようにスマートフォンがあるわけでもなく、暇つぶしのボードゲームがあるわけでもない。彼らは毎日、朝の見回りから身を隠し、一日中警戒しながら息を殺して過ごす、そんな時間を2年間も過ごした。
飢えに苦しみ、虚無感に苦しみ、そんな計り知れない苦しみをスクリーンで目の当たりにした時、改めて戦争というものの惨さを痛感した。
セイジュンや山下は生きるためなら、何でも口にする。虫でも、残飯でも、何でも。私はこの作品を見ながら映画館で購入したポテトフライを食べていたが、思わずその手が止まってしまった。
彼らにとって、好きな食べ物や嫌いな食べ物を選んでいる暇はない。だからこそ、好きな時に、好きなものを選んで食べることができる今自分がいる環境に、改めて感謝せねばならないと感じた。
今までの戦争映画とは違う作品
「帰りたい」のセリフに泣く
戦後80年の今年、米軍の本土上陸を阻止するために犠牲となった沖縄で実施にあった話を描く作品を制作されたことに心からの敬意を表します。
井上ひさしの劇団「こまつ座」の演目として認識していた本作を
沖縄生まれの若い監督さんが実写映画化するということで、注目していました。
クレジットを見ると、「こまつ座」および舞台の『木の上の軍隊』を演出した栗山和也氏が全面協力しておられることからも、原案の魂がしっかりと入った作品なのだろうと確信しておりました。
映画、とても良かったです。素晴らしかった。
舞台では、二人の兵士が2年間過ごしたガジュマルの木の上での会話劇で構成されたのでしょうが、映画では沖縄の海の映像や、回想シーンでの「戦争がなかったらこうであっただろう」平和な日常の描写が差し込まれることで、より戦争の非道さ残酷さが観るものに迫ってきました。
安慶名セイジュンを演じた山田裕貴さん。メイキング映像では「虫が大嫌い」と明かしておられたようなシティーボーイなのに、あの過酷なシーンの連続によく耐えられました。役者さんってすごい。
釣りが好きで、子どもが好きで、病気のお母さんを見捨てられない優しい人で、
こんな時代でなければ貧しいながら良い友人たちと楽しく暮らしていただろう島の好青年が
なぜか巻き込まれてしまった戦争の中を生き抜く地獄のような日々を演じきっておられたと思います。名優堤真一を相手に、真向勝負のお芝居対決でしたね。
大切な人たちも何もかも失ってしまった絶望の中でも、なお「帰りたい」と号泣する姿に、井上ひさしが書き残しておきたいと思ったという「希望」を感じました。人は悲しいほどに愚かで弱いけれど、生きることを諦めない限り前に進むことができる。そんな贈り物をもらったような映画でした。
私たちにとっては80年前の出来事ですが、世界には今この時にも戦争によって故郷を追われ、家族を亡くし「帰りたい」と叫んでいる人たちがいることを忘れないでいたいと思います。
自分も島ももう変わってしまった
日本の戦争映画は自分のメンタルを左右するから、普段は避けている。しかし、山田裕貴さんが好きなので見に行った。推しのお陰で世界の視野がまた少し広がる、ありがたいことだ。
見に行ったもう一つの理由は舞台となった伊江島に行ったことがあるからだ。花の百合を鑑賞する、ゆり祭に参加した。一緒に旅した友人のお母様の希望だった。そこにもまたご縁を感じるが、その時島の地図を眺めて、島の半分が米軍の軍用地なのだとわかり何やらうっすら恐ろしさを感じたのを覚えている。そういう意味では、伊江島はまだ島民の手には戻ってきていない、のかもしれない。Google map でこの小さな島に不似合いな空港の滑走路を確認するだけでも最早背筋が凍る。伊江島で買って未だにお気に入りの伊江ラムも、米軍由来なのか?と思ってしまうと何やら複雑だ。
実話というよりはそれに着想を得た舞台の映画化、ということでどの程度現実なのかはわからない。でも、おそらく禁足地に設定されてしまったが故に米軍以外が立ち入ることがなかったこと、島が軍基地になってしまった為に訓練で発砲音が聞こえ続けていたこと、そして何よりも闘いに人生を捧げる少尉が不用意な行動を抑制してきたからこそ月日が流れてしまったのだろう、もっとも若い軍人だけだったら初期に撃ち殺されていただろうけど。
生き残りがいないようにくまなく遺体に発砲していく様は、異世界でモンスターを殺しまくる漫画のシーンのようだ。今戦争が肯定されていたら、モンスター退治世代の若者は意外と違和感なく殺せてしまうんじゃないかとすら思える。
山田くんは常に山田くんで他の人にはならない、でもいつでもその人そのものになってる感じがする。彼のような、どこか飄々としたまっすぐな若者がきっと当時木の上で過ごしたんだろう、と思える。堤さん演じる上官も、米国缶詰を貪る狂気のシーンとか、さすがだった。
最後の手紙だけちょっと無理があったかも?ってここは事実なのかもしれないけど。なぜ急に?とやや感じた。残った島民もまだ貧しくて食料を漁っていたのだろうか?
最後の最後まで名前を出さず、ラストで名前を連呼してようやく二人が兵士から人間に戻ったシーン、胸を打たれました。でも、「もう変わってしまった自分と島」が元に戻ることは決してない。彼らの余生がどうだったのか、聞いてみたい。
※ちなみに恵比寿で鑑賞したため、道中エビスビール広告の山田裕貴もみながら向かえてなんだかお得でした。
熱演でしたが、悲惨さは微妙。
戦争と純朴
予想以上の力作、世界中のひとに観てもらいたい
予想以上の力作。
緊迫した展開、極限状況の物語は『野火』を思い起こさせました。
そして、山田裕貴の熱演。感銘を受けました。素晴らしい俳優です。もちろん堤真一も。
ただ、何かがストーリーの流れを少し阻害しているように感じた。何故だろう?
安慶名に、上官の子どものイメージが重なる場面など、作為的な表現が若干前に出てきているようなところがいくつかあったから、かな?
うーん、よくわからないけど、何かが物語への没入を少し妨げているような感じがしました。
あと、細かいことを言えば、以下のようなこともちょっと気になりました(物語の中のことに、過度にリアリティーを求めても仕方ないのですが)。
①山下(堤真一)が少尉にしては歳をとりすぎていないか。
②軍隊で「上官」と呼ぶのだろうか。通常は、「山下少尉」や「少尉殿」と呼ぶのではないか。
③「ジャングルの中に白い色はないので、白い包帯を巻いていると敵に狙われやすい」という話を聞いたことがあるのだが……。
まあネガティブなことも書きましたが、それを差し引いても期待以上の作品でした。
是非、学生の皆さんにも観てもらいたい。いや、世界中の人々に鑑賞してもらいたい作品です。
そして、大切なことについて静かに考えてほしいと思います。
追記
僕の父は旧日本陸軍の航空隊に入隊し、外地で10年を過ごしました。
そんなわけで、自分も大東亜戦争における戦地での状況や軍隊生活について研究—でもないな—勉強しております。
上記の①②③の事柄について詳しい方がおられましたら、ご連絡いただけるとありがたいです。
これが日本を守る戦いなら
終戦を知らず木の上に2年隠れてたって話。
夏休みだからか、鬼滅のせいか、朝7時台からの鑑賞。
戦争の愚かさ、悲惨さの描き方はそれなりって感じだけど、主役の一人である山下少尉が、上官の無茶には島の住民に心を寄せるが、部下である安慶名に対しては無茶をいうってとこはよかった。
つまり戦争映画にありがちな「いい人」「わるい人」っていうキャラが存在するのではなく、一人の人間が自分の立場によって良い人にも悪い人にもなってしまうということなんでしょう。
逃げ隠れしているだけだと指摘された山下が「水を探し、食料を見つけて、他の日本人が全滅したとしても俺たちが生きていれば負けではない、これは作戦遂行なんだ」という理屈をのべていたが、これが戦いなんだとしたら、自分や子どもの飯代を必死にかせいで、今日をなんとか生きようとしている現代の我々も戦いを続けているってことになるね。
いくら敵を殺しても勝利には結びつかないが、水を飲んで食べ物を食うってことが勝ちなんだろう。
堤真一さんは、冷静な落ち着いた演技(『SP』あたり)は好きなんだけど、パニック状態の演技(『容疑者X』あたり)は苦手だわ。
「極限状態になった人を演じてる人」に見えてしまうんよね。
まあ、極限状態になった人ってのを現実にみたことないから、あれが正解なのかもだけど。
山田君はすばらしいです。
ガレッジの川田くんはいらなかったかも。
世界に見て欲しい!
結末は分かっているけど
その日の夜、何故か木の上にいる夢を見た
実話ということだが井上やすしさんの原作なので楽しみに鑑賞した
山田裕貴さんの演技はいつ見ても、どんな映画でも引き込まれる。この人は
才能の塊なんだろうと思う。絶対に裏切らない。純粋にファンである。
一方、堤さんの演技は「う~ん」なのだ。二人だけの会話劇になっていけば行くほど
リアリティが無くなっていく。超リアルな演技の山田さんとの演技の差がずっと違和感だった。ラストのセリフを格段に生かすためにも、堤さんの演じる「上官」はあんな演技ではダメだ。
以前、堤さんのインタビューで、役者は好きじゃないとか、先輩(真田広之さんが演技の師匠らしいが)との共演は緊張するからNGだとか、人として浅いひとなのかという思い込みもあるかもしれないが、嫌いな役者さんの一人になってしまった。
あ~、もったいない。映画としてもっと良くなる要素があったかもなのに。
舞台劇だということを後で知る。舞台劇なら良くまとまりそうな気がする。
二度と元には戻れない
80年前も、そして今も世界のどこかで、
二度と元には戻れなくても、
帰る場所がなくなっても、
帰りたかった人たち、
帰ることができなかった人たちへ。
帰ろう。
井上ひさし原案の舞台が原作ということで、主役2人の会話劇かと思っていたら、冒頭の、木の上の軍隊になるまでが思いのほかよかった。ハリウッドの戦争映画のように手や足が吹き飛んだり、脳みそや内臓が飛び散ったりしなくても、今まで普通に喋っていた相手が次の瞬間には生命を失っている、戦争の恐ろしさが充分に伝わってくる。
いつからか日本の戦争映画は最初から最後まで悲愴感に包まれて左右の人たちがそれぞれ喜ぶか怒るかどっちかの映画ばかりになってきたが、今作はリバイバル公開中のアニメの傑作「この世界の片隅に」と同じように、兵隊だけでない戦時中の市井の人たちの日常が描かれている。
山田裕貴の少しとぼけたというか天性の明るさというか不思議な魅力のおかげで、悲しい内容だが悲しくなり過ぎず、いや明るさゆえにより悲しみが増している。
「国宝」の吉沢亮と横浜流星も良かったが、山田裕貴と堤真一の競演も観るべき名演技だと思う。
終戦80年、今年の夏は戦争映画の公開が例年より多いが、もっと早く、夏になる前から公開した方がよいのではないか。欧州では毎年のようにホロコースト関連の映画が作られているようだが、日本でももっとあの時代を描いた作品(さまざまな視点からの)が製作公開されることを願っています。
ただ海に行って、
畑仕事して、
おかあにごはんあげて、
時々お前と遊ぶ。
最高じゃないか。
沖縄の美しい海、空、森。
二度と元には戻れないかもしれない。
それでも
帰ろう。
そして生きよう。
木の上の軍隊
2人の軍隊
上官と兵卒2人だけの潜伏作戦。
銃声と上空を飛び交う飛行機からの情報。
状況が判らず二人は二年間援軍が来ると信じて木の上で潜伏するのだが。
ちょっとまて、確か物語の前半で完成間近の飛行場を爆破する時にある兵隊が もう援軍の飛行機が来ないことを言ってなかったか?
堤真一扮する上官は多分知っていた筈だ。味方も来ないと。
では何故潜伏をとも考えるのだが。
やはり部下を大勢失ってしまったから、このままでは死ねないと言うことか。
伊江島は本島から離れている為、沖縄本島上陸にさいしての補給線として確保されていたと聞く。
当然最初の上陸に際して徹底的に日本軍は殲滅されてしまったはず。
その中を絶望的ではあったが、セイジュンの純朴な性格故に2人で生き続けることが出来たのだろう。
戦争は2人から2年という時間を奪ってしまった。
もう元には戻れない時間を。
ただ上官と部下の関係から、友人とも取れる関係に2人は変化しましたが。
セイジュンは与那嶺、母の幻影を見て自分達の2年は意味があったのか問い続けていました。
ラストに上官が帰ろうとセイジュンに呼びかけます。
戦争からは開放された2人だが、どこに帰るのだろうかと考えてしまう結末。
よろこんで良いのか。。。
山田裕貴は名優の仲間入りをしましたね。
それを喜ぶべき作品かも。
世界と戦える映画
最近の邦画が残念なほど、クオリティーが低く、観る気にならず、これは実話を基にとあったため、少し遅れてしまいましたが、行って参りました。
意外性は全くなかったものの、最近の日本の映画で世界と戦えるレベルのものがほとんどなかったため、また邦画を観てもいいと思えた映画でした。
特によその国では正しく歴史を再現していない映画が多い中、これは忠実に再現していました。昔と比べ今は残虐なところの規制があり、描ける限界を考えると少し仕方がない構成となっていましたが、他の時代物の映画を観た後で観ていただいたら、そのクオリティーが理解できると思います。これは世界と戦えるレベルだと。
全189件中、41~60件目を表示
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