木の上の軍隊のレビュー・感想・評価
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2年掛けて、「お国の為に死ぬ」のではなく「家に帰る」を選んだ
「ビルマの竪琴」と言う作品のラストでも「一緒に帰ろう」と日本へ戻る仲間達が水島上等兵へ訴えていた。戦地に向かうことは、ある意味で「一方通行」だから『帰る』は選択肢に入っていないのだろう。
上官が「帰ろうか」と発した時、やっと彼の顔が柔和になったようだった。
映像としては悲惨さが抑え気味だったように思えるのが残念だが、山田裕貴が凄く輝いていた。
帰る場所がある幸せ
地元では上映していなかったので、なんばで鑑賞。
大阪で平日のお昼間ということもあり、ご高齢のおじいちゃんおばあちゃんがたくさんおられ、こちらでは経験できない客層でびっくりしました!
都会っていいなあ。
そして、ジャンル・知名度的にも、映画好きな慣れた方たちばかりなのでしょう、すごく静かでした。
私の片方の隣はおじいちゃんだったのですが、身動き一つせず、呼吸音もなくあまりに静かだったので、心配になったほどでした。
でも映画が始まり、笑いのツボが私と同じで、同じところで何回も笑い、なんかほっこり安心しました笑
元々の脚本は舞台の脚本のため、ジョークが舞台よりでした。
そのジョークのおかげで、残酷な苦しい内容も、ふっと気持ちが緩められる瞬間があり、見続けられました。
役者さんたちも、ストーリー構成も、舞台よりでしたが、堤さんの演技が流石すぎて上手すぎて、素晴らしく映像で、自然とすっと入ってくる、違和感ないお芝居で上手すぎました!!
山田裕貴さんは、場の空気を軽くするプロですね!
なのに、真剣な真面目な演技は本当に真剣で、ボロボロ泣いてしまいました。
綺麗で純粋で飾らない演技で素晴らしかったです。
今の生活を壊したくない気持ちになる映画でした。
今は平和なんです。
ありがとうございます。
主人公の気合
これが戦争。
戦後80年
80年でこんなにも国は発展し、様相が変わるのかとも思った。
ちょうど沖縄本島に新しいテーマパークもオープンして、「観光客のみなさん!楽しんでいってね!」という感じを受けますが、80年前はこんなに穏やかで、いい意味で何もない場所だったんですね。
さて、映画について。
序盤の地上戦へ向かう場面は、やはりとても辛かったです。
大切な人が目の前でどんどん死ぬ。
そんなことが本当に起きていたのかと信じられないですが、人が爆弾や拳銃で殺される場面なんて想像できません。
木の上で、いつ殺されるかと思いながらの2年間。
殺されたくない、死にたくないと思いながらも、鬼畜米兵たちへの憎しみや怒りは一瞬、自分の命を賭してでも殺してやりたい。と思うものなのだろうなと思いました。
後半、意識が朦朧となり夢を見るシーンは毎回泣けてしまいました。この夢の中で死ねたら幸せだろうとか、一緒に死ねたら幸せだっただろうとすら思ってしまいます。
そして生き残った人たちは一生戦争の中で生きていくことになりますよね。
人を殺し、大切な人を殺された世界で生きることはどれほど辛いだろう。
でも生きたい、死にたくないと思うのは生き物の性でしょうか。
過去の戦争も、今の戦争も、未来の戦争も全て無くなればいいのにな。
ここにいたいよ。
戦争に対する考え方も構え方も違う二人。ガジュマルの木に守られながら、身を潜めながら心を少しずつ通わせていく。もし、何らかの形ですぐに終戦を知ったら、二人はあっさりとお別れをしていただろう。なんとも複雑だ。ながいながい二人だけの戦争が、絆を紡いだのだから。
家に帰ると元気な母と戦友がいた。…おかしい。
そのことに気づく場面がとても切なくて
グッ…、、と声を詰まらせてしまった。
“目を覚ましたくない…ずっとここにいたい……”
自分が彼だったら…と考えたとき、
誰しもが皆、同じことを思うだろう。
「帰ろう」
母も戦友も亡くしてしまった。綺麗だった海も地も、もう元には戻らない。絶望のなか、波の音しか聞こえないひとりぼっちの故郷で自分以外の声が聞こえる。
ひとりじゃない。絶望せずに、生き抜いて。
残った者の葛藤。
演じ切った主役2人に拍手
平一紘監督作品。太平洋戦争末期、沖縄の伊江島で終戦を知らずに2年間過ごした二人の兵隊。その実話をもとにした同名の舞台劇を映画化。
激戦地となった伊江島で、たった二人だけ生き残った上官と部下。ガジュマルの木の上に隠れ、援軍が来て反撃に転じる日をひたすら待つ2年間を描く。
戦争における異常な心理状態、時が経つ中の二人の葛藤、食料に困り痩せてやつれていくさまを堤真一、山田裕貴が好演。ほぼ全編にわたり、主演の二人が演じる中、飽きさせず展開するよく出来た映画作品。
監督はじめ沖縄のスタッフが多数関わることで、熱量のある作品に仕上がっている。実話をベースにした戦争映画としては、適度な重さがあり、エンタテインメントとしても良く出来た作品。
横井庄一、小野田寛郎を知るシニア世代にとっては、興味深さを感じる映画。
期待したほどではなかったかな
原案舞台作品なのですが映画はリアルで胸に刺さる
予告を見ていた時の想像より、思いのほか楽しめた逸品
正直、予告を見ていた段階では映画の作りあがりに少し不安を抱いてました。
・横井さんや小野田さんじゃあるまいし、国内にいて2年も終戦に気付かないなんてあり得るのだろうか?
・木の上のサバイバル生活がクローズアップされて目を覆うようなシーンばかりなんじゃないだろうか?
・大元の舞台劇なら成立しても一本の映画としてリアリティは大丈夫なんだろうか?
これらの心配は杞憂でした。
戦争ものとして一定の悲惨さや重さはあるものの、要所要所にコミカルなシーンが挟まれて、観ていてつらくなりすぎるシーンはありませんでした。それでいて主演二人の好演に加え、脚本や演出の巧みさにより、当時の置かれた環境の過酷さやあの生活から抜け出すことの難しさなどはしっかり描かれていたかと思います。
戦争を描く作品は多いものの、その背景の主張を強く打ち出しすぎず、ある種の軽やかさも持ち合わせる作品は映画として、とても貴重だなと強く感じました。
期限の無い戦い
惨さ
2年間。2年間という月日があれば、人は変われる。外見も、内面も。高校に入学したばかりの人は、2年経てば卒業する年にもなる。
2年という時間はそれだけ、長い時間。
彼らは2年もの間、終戦を知らずに生き抜いた。
今の時代のようにスマートフォンがあるわけでもなく、暇つぶしのボードゲームがあるわけでもない。彼らは毎日、朝の見回りから身を隠し、一日中警戒しながら息を殺して過ごす、そんな時間を2年間も過ごした。
飢えに苦しみ、虚無感に苦しみ、そんな計り知れない苦しみをスクリーンで目の当たりにした時、改めて戦争というものの惨さを痛感した。
セイジュンや山下は生きるためなら、何でも口にする。虫でも、残飯でも、何でも。私はこの作品を見ながら映画館で購入したポテトフライを食べていたが、思わずその手が止まってしまった。
彼らにとって、好きな食べ物や嫌いな食べ物を選んでいる暇はない。だからこそ、好きな時に、好きなものを選んで食べることができる今自分がいる環境に、改めて感謝せねばならないと感じた。
今までの戦争映画とは違う作品
「帰りたい」のセリフに泣く
戦後80年の今年、米軍の本土上陸を阻止するために犠牲となった沖縄で実施にあった話を描く作品を制作されたことに心からの敬意を表します。
井上ひさしの劇団「こまつ座」の演目として認識していた本作を
沖縄生まれの若い監督さんが実写映画化するということで、注目していました。
クレジットを見ると、「こまつ座」および舞台の『木の上の軍隊』を演出した栗山和也氏が全面協力しておられることからも、原案の魂がしっかりと入った作品なのだろうと確信しておりました。
映画、とても良かったです。素晴らしかった。
舞台では、二人の兵士が2年間過ごしたガジュマルの木の上での会話劇で構成されたのでしょうが、映画では沖縄の海の映像や、回想シーンでの「戦争がなかったらこうであっただろう」平和な日常の描写が差し込まれることで、より戦争の非道さ残酷さが観るものに迫ってきました。
安慶名セイジュンを演じた山田裕貴さん。メイキング映像では「虫が大嫌い」と明かしておられたようなシティーボーイなのに、あの過酷なシーンの連続によく耐えられました。役者さんってすごい。
釣りが好きで、子どもが好きで、病気のお母さんを見捨てられない優しい人で、
こんな時代でなければ貧しいながら良い友人たちと楽しく暮らしていただろう島の好青年が
なぜか巻き込まれてしまった戦争の中を生き抜く地獄のような日々を演じきっておられたと思います。名優堤真一を相手に、真向勝負のお芝居対決でしたね。
大切な人たちも何もかも失ってしまった絶望の中でも、なお「帰りたい」と号泣する姿に、井上ひさしが書き残しておきたいと思ったという「希望」を感じました。人は悲しいほどに愚かで弱いけれど、生きることを諦めない限り前に進むことができる。そんな贈り物をもらったような映画でした。
私たちにとっては80年前の出来事ですが、世界には今この時にも戦争によって故郷を追われ、家族を亡くし「帰りたい」と叫んでいる人たちがいることを忘れないでいたいと思います。
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