「ニーバンガズィマール」木の上の軍隊 ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)
ニーバンガズィマール
井上ひさし先生の作品は、"おとったん"と作文の書き方の本位しか読んだ事がなく、本作の原作も未読。
そしてあの沖縄戦から生き延びて、終戦を知らず2年もの間、木の上で戦っていた2人の日本人がいた事も知りませんでした。
"おとったん"同様に主に堤さん山田君の2人芝居。
後半は特に舞台劇の様でした。
この辺りの演出は好みが分かれそうですが、舞台劇は好きなので、個人的にはしっかりと戦争の恐ろしさは伝わってきました。
「沖縄戦の縮図」と言われる凄惨な戦いが行われた沖縄本島北部の伊江島。
1945年4月アメリカ軍上陸。
島民も戦闘に駆り出された6日間の地上戦で、島民のほぼ半数の1500人、日本軍2000人が犠牲になった。
そして8月に広島・長崎に原爆が投下。
15日終戦ーーー
戦後の日本という時間軸に取り残された2人の孤独な戦い。
2年もの長い年月を経て
1947時3月 2人は木から降りる。
軍は国・国民を護る事が役目のはずなのに、日本軍は全てにおいて軍事を優先させ、民間人保護は考慮の外。
島民も一緒に戦えなんて、負けるに決まってる戦争で降伏は許されない。
日本軍に殺された様なものだ。
もし降伏できる状況だったら、国際法で保障された保護を受ける事が出来た島民は多かったはずで、こんなにも多くの犠牲者を出さずに済んだはずだ。
(戦争なので、ある程度の事はあったにせよ)
皮肉にも日本軍と一緒にいた島民が地獄を見た事になったと言っても言い過ぎではないと思う。
どっぷりと帝国軍人の山下と、沖縄の純粋な青年セイジュンとの対比が、まるで日本と沖縄の関係性をそのまま表現しているかの様で、終始怒りの感情が渦巻いた。
どこかとぼけたセイジュンと山下のやりとりは時に滑稽で、言葉を選ばずに言うと、笑えたりもする。
だけど逆にそれがこの状況の異常さを物語っていて身の毛がよだつ思いがした。
帰りましょう
帰りたい
長い間お疲れ様でした
よく戻ってくれました
お帰りなさい
余談。。
本作について調べていたら実在のモデルさんは、宮崎県出身の山口さん(当時28歳)と沖縄県うるま市出身の佐次田さん(当時36歳)のお2人であった事を知りました。
歳の差に驚きました。
(セイジュンの方が年上という事になりますよね。)
本作の山下とセイジュンの関係性とはかなり違ったのではないかと想像しました。
実際は山口さんは何発も銃弾を受け木から落下した事もあったり、破傷風になり佐次田さんが必死に看病したとの事。
本作の堤さん山田君のお2人も素晴らしかったですが、この歳の差で、立場の違いでの視点からの物語も見てみたくなりました。
戦争反対。
今年も8月を迎えます。
帰りましょう
帰りたい
ゆきさんのコメント読んでいて、このシーンを思い出してウルッときました。2年も一緒に生活していて、軍人はセイジュンの名前すら知らなかったのは、おっしゃる通り日本と沖縄の関係を表していると思いました。
余談の二人の年齢差が映画とは逆にビックリでした。ドラマのキャラ設定もずいぶん変わってしまいますね!
コメントありがとうございます。
戦争そのものと、戦争をさらに悲惨なものにした軍国思想と全体主義が狂気で恐ろしいです。
戦争での教訓はあるのに、昭和天皇崩御の際には合理性がない過剰な自粛の同調圧力があったりして、日本人変わってないかもと思ってしまいました。でも、令和を生きる人たちは昭和の日本人とは大分違ってきていると思います、いや思いたいです。
太平洋戦争に関しては、日本の偉い人たちが合理的判断していたら避けられたようです。戦争は絶対反対ですが、武器の所持云々よりもどうすれば避けられるのかをみんなが真剣に考えることが、有効な戦争抑止になるんじゃないかと思いました。
なんかいろいろと場外乱闘的に考えさせられた映画でした。
ご丁寧に ご返信ありがとうございました😊
山田さんのファン 若い人に見てほしいですね。
やはり 思想に関係なく 自分や周囲の人間が と考えたら 戦争は反対 一択ですね。失礼します。
井上ひさしさんの短編に「ナイン」というのがありますが、なかなかいいですよ。本は手に入らないかもしれませんが、図書館には結構あると思います。短くてすぐ読めるので、ぜひ!
ゆきさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
戦争を伝えていく作品が作られ続けていくことは大切ですね。
今作や、「雪風」予告の竹野内豊さんの「普通がいいな」の台詞に、あらためて今の暮らし、ありがたい国にありがたい時代に生きていることに感謝しなければならないと思います。