「【今作は沖縄戦で孤独な戦いを続けた二人の兵士の姿を描いた井上ひさし原案の同名舞台の映画化であり、戦争の愚かさや生き抜く大切さを描いた作品。戦後80年を迎えた日本に反戦メッセージを伝える映画でもある、】」木の上の軍隊 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は沖縄戦で孤独な戦いを続けた二人の兵士の姿を描いた井上ひさし原案の同名舞台の映画化であり、戦争の愚かさや生き抜く大切さを描いた作品。戦後80年を迎えた日本に反戦メッセージを伝える映画でもある、】
■1945年。
沖縄の伊江島で日米両軍による激しい攻防が続いていた。敗戦濃厚な中、本土から来た山下少尉(堤真一)と、伊江島生まれの新兵アゲナセイジュン(山田裕貴)は、大きく枝を広げるガジュマルの木の上に身を潜める事になる。
◆感想
・今作は、冒頭で実話と出る。戦争終結を知らずに生き抜いていた兵士と言えば横井庄一さんや、小野田寛郎さんの事を思い出すが(と言っても、年代的に後年知った。)沖縄でも期間は2年だが、同じような人たちが居た事に驚く。
・最初は、厳しさを見せていた山下少尉が、アゲナセイジュンが折角見つけて来た米軍の缶詰に手を付けなかったり、山下とセイジュンとの関係が上官と部下だったのが、時が経つにつれ、セイジュンが栄養失調になった山下に、わざわざ日本の缶詰の中に米軍の缶詰の中身を入れて食べさせたり、島の食べ物やハブについて教えていく過程の中で、関係性が変わって行くのが面白かったな。
・戦争が終わった事も知らずに、ガジュマルの木の上で生活をする中で、山下少尉も笑顔を見せるようになり米軍のゴミ捨て場でアメリカのエロ本を見つけて嬉しそうにしたり(男だったら、気持ちは良ーく分かるぞ!)、山下少尉が上手そうに残飯のスパゲッティを食べる姿も、何か可笑しかったな。
ここは、軍隊の階級の愚かさと、その柵が無くなれば只の人間同士っていう事が言いたかったのではないかなあ。
■今作では、名優堤真一を相手に、アゲナセイジュンを演じた山田裕貴の演技がとても良かったと思う。
米軍の爆弾で死んだ母や妹や戦死した戦友与那嶺(津波竜斗)の幻影に悩まされる彼が、最初は玉砕を唱える山下少尉に”生きましょう””帰りましょう”と訴えかける姿や、後半は自らの想い”生きたい!””帰りたい!”と口にする姿は沁みたな。
そして、アゲナセイジュンは、全ての武器を捨てて海に入って行くのだが、それを必死に追う山下少尉の姿は、最早階級を越えた親友を助ける姿だと思ったなあ。
<今作は、沖縄戦で孤独な戦いを続けた二人の兵士の姿を描いた故、井上ひさし原案の同名舞台の映画化であり、井上さんが終生抱いていた戦争の愚かさや生き抜く大切さを描いた作品である。>
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2月の「かなさんどー」に続いて、伊江島を舞台にする映画を観たのは2本目なのですが、米軍の上陸戦は本島ばかりに注目しがちなのに周りの諸島にも壮絶な戦いがあったことを知って慰霊の気持ちが強くなりました。沖縄が好きで今まで10回以上本島に行っているのですが、首里城が修復されたらまた行って伊江島にも渡ってみたいと思います。