「主人公は無実の罪」シンシン SING SING キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公は無実の罪
刑務所の囚人たちに対する更正プログラムとして行われている、彼ら自身による「演劇」。
これにまつわる、囚人たちの友情や葛藤。
それも、この出演者の多くは実際にこのプログラムに参加した「元囚人」とのこと。
アカデミー賞にも複数部門でノミネートされるなど話題も多く、公開館数は少ないものの、朝7時30分の上映回だが、そこそこ人は入っていた。
端的に感想を言うと、「あんまりピンと来ない」。
あくまでこの演劇は、かなり重い罪によって罰を受けた彼らの「更正」のためのプログラム。
その彼らが、演劇という場で仲間との交流の中で自分や自分の過ちを見つめ直す…という話ならまだ飲み込めたんだけど。
こういう言い方は良くないのかも知れないけど、詰まるところ、やっぱりこれは彼らの「レクリエーション」にしか見えない。
「塀の中にいても、演劇の中では頭は外に自由に出られるんだ」なんて、申し訳ないけど私に言わせれば「ちゃんと真面目に罰を受けろよ」と思ってしまう。
その意味では、主人公は無実の罪で収監されてしまっているワケで、罰を受ける必要は本来ならないはず。
じゃ、その彼が自ら「更正」プログラムに参加するのはどーなの。
もちろん現実にそういう人がいてもいいし、それを否定はしない。ただ、あくまで「映画」という中においては主人公の立ち位置だけが中途半端な気がしてしまう。
作中で起こるエピソードも、なんだか取り留めもないというか、唐突というか。
誰が誰のどの部分が気に入らなくて怒ってんのかわかんないし、肝心の演劇も、正直ナニやってんのかよくわかんなかった。
結局最後まで彼らが何をしたくて、今はそれを何が阻害してるのか。この作品をとおして誰に対してどんな願いや思いを持っているのか。
残念ながら私には伝わって来なかった。
もちろん好きなシーンもあるよ。
演出家のブラントが、彼らに「自分が完璧だった瞬間の場所や気温などを想像してくれ」ってそれぞれ想像した内容を語るシーンとか。
自分ならどう答えたかな、とか考えたら自分のエピソードで昔のこと思い出してグッと来ちゃった(笑)。
おそらく、こういうカンファレンスみたいなものを通して自己を見つめ直すっていう「更正」を促すんだろうけど。
そもそも、主人公以外の彼らは(その人間性はともかく)「可哀想な人たち」ではない。自分の犯した罪によって裁かれた罰としてここにいるんだから。
もちろん彼らの生活環境とか、仲間とかが、彼らをここに追い込んだことも社会的な問題として存在はするんだろうけど、別にそういうことを言いたい映画ではない様だし。
この主人公と、他の収監された人々とでは、世界の見え方もこの刑務所への思いも、やはり全然違うと思うし、「外へ出る」ということの意味も違う。
ただ、高く評価されてる方が多いみたいなので、おそらくちゃんと観る人が観ればちゃんと傑作として映るんだろうから、この後、あらためて有識者の方々がどう受け止めておられるのかを学んで、(イヤミとか開き直りではなく)私の不見識を反省したいと思います。
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