劇場公開日 2025年4月11日

「プロセスが大事」シンシン SING SING とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0プロセスが大事

2025年4月2日
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この作品を観るべきか観ないべきか、それは問題ではない。なぜなら観るべきだからだ。本作はきっと今じゃなくても人生のいずれどこかで必要になるだろう(※刑務所に入るという意味でなく)。
人生は不平等なクソ喜劇みたいだ!往々にして自分の思い通りには行かないし、時には自分以外の全員が自分より人生うまく行っているように見えることもあるだろう。「プロセスが大事」そんなこと言われなくたって頭ではわかるけど、心が追いつかないときが人間にはある。人にはたまに抑えきれなくなって壊れることがあるけど、仲間がいれば持ち直して、また歩き出せるかもしれない。そんな人助けに全力を燃やしては物語るディヴァイン・D役コールマン・ドミンゴの熱演・名演と、ディヴァイン・アルはじめ実際の元収監者たちが織りなす実に見事で自然なアンサンブルによる友情、絆…。今あるものを楽しみ、その時々を全力で生きることを身を以て教えてくれるような生き生きとした作品だ!
自分が一番完璧だった瞬間、あの場所へ…AS HIMSELF。その時々シーン毎に主人公が今"演技"をしているのか"本当"の姿なのか分からないリビールショット的つなぎ・編集の作りなど、演出や本作を包む空気がとても好みだった。顔の寄りが多くても演者の力で、決してダレない。とりわけ本作に限らずああいう皆が円状に座って本人役の人が赤裸々に語るドキュメンタリーチックにリアルなシーンは好きというかいつも見入ってしまうような有無を言わせぬ力強さがあるけど、本作でもやはりあのシーンが本当に良くて心に残った。マイク・マイクと壁を隔てて自分自身のことを語るシーンも印象的。劇中劇となる舞台は、『ビルとテッド』みたいな何でもありタイムトラベル大冒険!
共に何かを作り上げる仲間=生涯の友がいること。例えばNetflix必見の傑作ドキュメンタリー『13th』等で見られるように、黒人をメインに非白人の移民・少数民族を標的とした刑務所ビジネスを告発し、変革を起こすことは何より大事な命題だ。しかし、そこで実際に収監されている当人たちにとってはそれに対する批判や自分の置かれた境遇に対する嘆き・絶望だけでは刑務所の中での長い刑期を到底やっていけないだろう。『ショーシャンクの空に』じゃないけど希望も大事だし、すがりつく心の拠り所も必要だ。だから本作は今このときもそうした状況にある人々に一筋の光をもたらすという意味でも社会的メッセージと社会意義のある表現の力を感じさせてくれる。
劇中劇で主人公が演じる役柄が主人公自身に投影されたり、仲間との離別があったり、最初は衝突していた問題児と絆を育んだりと、要素としては既視感があるものの、そのいずれも大味になることなく真に迫っては嘘偽りないのは、やはり何より実話を基にしているからだろうか。

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とぽとぽ
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