「最後の10分までは★4.5の作品」近畿地方のある場所について こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の10分までは★4.5の作品
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日本ホラー映画としては数少ない本格的モキュメンタリー手法を劇場用長編で成立させた意欲作であり、残り10分までは90点だったのに、最後の10分で30点になってしまった非常に残念な作品でした。
モキュメンタリーとは、mock(模擬)+documentary(ドキュメンタリー)を組み合わせた造語で、架空の出来事を、あたかも現実のドキュメンタリーのように見せる映像手法 です。
序盤から中盤にかけての取材映像の質感や掲示板書き込み、資料映像を駆使した構成は現実と虚構の境界を巧みに攪乱し、舞台を近畿地方とすることで日本の歴史的記憶や民俗的恐れを背景に、地名を明示しない匿名性が観客の没入感を強化している一方、ラスト10分で得体の知れない恐怖を具体的ビジュアルとして過度に提示しモキュメンタリーのリアリティを損なった結果、ホラーの本質である「想像力の余白」を自ら閉ざしてしまいました。
これは最後まで怪異の正体を明示せず観客の解釈に委ねた1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が都市伝説的な広がりを獲得した例と対照的であり、見せない一貫性を貫けば上映後も恐怖が持続し得た可能性が高い作品であっただけに非常に残念です。
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