「きっと、大人は判ってくれない。」Playground 校庭 Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
きっと、大人は判ってくれない。
3月26日(水)
母の入院や自分の小指骨折等で行けなかった散髪に久しぶりに行く。サッパリした。
「教皇選挙」は時間が合わない。新宿シネマカリテで「Playground 校庭」を。
カメラは終始ノラの表情を捉えていて、カメラの焦点深度が浅く、ノラにしかフォーカスしていない(周辺がボケる)。またはノラの視点でもの見ている。校舎内や校庭では子供たちの声等で音楽はない。
初登校のノラは兄に、父にしがみつく。校門から中には両親でも入れない。先生に手を引かれ心細くて泣きながら校舎に入って行くノラ。校舎に足を踏み入れた瞬間に子供達の声やざわめきがノラを包む。
見知らぬ人ばかりの中で人見知りのノラは名前も言えない。
休み時間の校庭で兄を探すが、兄アベルに冷たくあしらわれてしまう。
靴ひもが結べないノラは結び方を教わったりして、友だちと遊ぶようになる。
体育の授業で水泳や平均台をやるのも苦手なノラには苦痛だ。
小柄なアベルが階段で大柄な同級生3人からイジメられているのを見てしまうノラ。ノラの担任の先生に注意してもらうが、注意された彼らの言い分は「あんたは俺達の担任じやない!」
別の日にアベルはトイレで3人にイジメられてビショ濡れに。目撃したノラが監視員(ベルギーの小学校には休み時間の校庭等に監視員がいる)に言っても他の子供に対応していて来てくれない。やっと来てくれた時にはイジメは終了。ビショ濡れのアベルに監視員は「トイレでふざけないで」
ノラ「どうしてやり返さないの?」
アベル「絶対に黙っていろ」
イジメられっぱなしで反撃しない兄もノラには理解不能だ。
アベルは(多分イジメられて?)オシッコを漏らしてしまう。ノラの隣でお弁当食べるアベルに「臭い」とノラの友だち。
失業中で毎日学校へ送って来る父親(母親は登場しない)。
「失業者って、働かないでお金を待ってるんだよ」小学1年生は家族に聞いたような事を平気で言う。
ある日アベルはイジメっ子の3人組に校庭のゴミ箱に閉じ込められる。それを目にしてもノラは黙っていろと言われたので監視員に言わない。
しかし、その事がバレて3人は親を呼ばれてアベルに謝り、握手するのだが…。
ノラの事を理解してくれていた女性担任も学校を去り、新しい担任はノラに優しくない。
イジメられている兄のせいでノラものけ者にされ、お誕生会に呼んでもらえなくなる。無視されて校庭でキレるノラ。
原題は「世界」。小学校も、校庭も、子供たちが感じる小さな世界。そして子供にとっては全て。
不安、孤独、苦しみ、子供の残酷さ。それは言葉にならずに、わからない感情のまま心に溜まって行く。
ラスト、校庭で自分より弱い者をイジメる側に回った兄を止めるため抱きしめて放さないノラ。そして抱きしめ返すアベル。
クレジットは完全に無音だった。
ノラを演じたマヤ・バンダービークは演技が上手い。外国の子役は本当に凄いわ。
監督ローラ・ワンデルの長編デビュー作だそうだが、次はどんな作品を撮るのかな。
デビュー作は感性がみずみずしくても、子供の感性のようにしぼんでなくなってしまう監督もいるからね。