「三人目の悪魔がいるとしたら、色々と教えちゃったあの人だと思います」デビルズ・ゲーム Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
三人目の悪魔がいるとしたら、色々と教えちゃったあの人だと思います
2025.3.13 字幕 MOVIX京都
2022年の韓国映画(106分、R15+)
連続殺人鬼に体を奪われた刑事を描いたボディチェンジサイコスリラー
監督&脚本はキム・ジェフン
原題は『악마들』、英題は『Devils』で、ともに「悪魔たち」という意味
物語の舞台は、韓国のソウル
ソウル警察広域捜査隊はすでに8件は発生している連続殺人事件の犯人を追っていた
チーム長(チェ・グイファ)を中心としたチームには、チェ・ジェファン(オ・デファン)がいて、彼は相棒のスンヒョンと(キム・テギョム)とともに捜査にあたっていた
ある日のこと、情報を元に寂れたマンションに向かった二人だったが、二人で動くという原則を無視したスンヒョンが単独で中に入ってしまう
犯人グループに見つかったスンヒョンは刺されて死亡し、犯人グループをみすみす逃してしまうことになった
その後、ジェファンの相棒にはミンソン(チャン・ジェホ)が付くことになり、再び、情報提供を受け、提供者が指名した場所へと向かう
通報したのは共犯者の一人・ヨハン(ユン・ビョンヒ)であり、そこには主犯格のジニョク(チャン・ドンユン)がいた
ジェファンは逃げる犯人を追って山中を駆け巡り、押さえ込もうとしたはずみで二人とも崖下へと転落してしまう
広域な捜索活動が行われるものの、1ヶ月経っても音沙汰はなく、その間にも殺人事件は起こり続けるのである
物語は、捜索が打ち切られた直後に、ソウル市警察の玄関先で車両事故が起こるところから動き出す
その車にはジェファンとジニョクが乗っていて、それぞれは病院へと運ばれた
そして、ジェファンが目覚めた時、なぜか自分に手錠がかけられていて、見た目がジニョクになっていた
一方のジニョクもジェファンの姿になっていて、二人は何らかのきっかけによって、体が入れ替わってしまっていた
ジェファンは自分が刑事だと訴えても相手にされず、バディを組んでいたミンソンにだけ「1ヶ月間の出来事を話す」と言い出す
チーム長はそれを許可し、ジェファンは自分とジニョクの体が入れ替わっていることを告げ、自分しか知り得ない情報をミンソンに伝えた
それでも信じがたく、そこでジェファンは共犯者をミンソンに捕まえさせることで、自分自身を認めさせようとするのである
映画は、このボディチェンジがどうやって起こったかを描く後半があり、そこでは三種類の薬剤を混ぜ合わせたものを使用して洗脳する、と示されていた
その手助けをしたのが監察医である法医学者のギナム(キム・ウォンへ)であり、ジェファンはジニョクに自分が刑事であると洗脳させることになった
この目論見が成功する前半があり、後半ではその計画の破綻が見えてくる
ジニョクの姿で共犯者の元に行っても、それぞれが「別人」だと感じているところがあり、それによって無益な犠牲が生まれてしまう
そうした先にあるのが、洗脳が強制的に解かれてしまうというハプニングになっていた
本作の見どころは、「ボディチェンジあるある」を逆手に取った構成で、それを感じさせない演者の演技力であると思う
体がぶつかって入れ替わったようにも思えるし、特に裏がありそうな刑事と純朴な正義感を演じ分けているのはすごいと思う
犯人側も気弱で戸惑いを見せる青年と、猟奇的な殺人鬼を演じ分けているのだが、刑事側は洗脳がないのに演じ分け、さらに1ヶ月だけ記憶がないというのを周囲に示して日常に戻りつつも、裏の顔ははっきりと効果的に見せていく
この両者がいてこその企画であると思うが、鑑賞後感はどんよりとしたものになるので、激しい暴力表現も含めて、観る人を選ぶ映画なのかも知れない
いずれにせよ、薬を使って洗脳をするというもので、知り合いの医者に聞いたところ、登場する薬剤は架空ではあるものの「元ネタがわかるぐらい」になっているとのこと
実際に元の薬剤をあの比率で混ぜてもあんなことにはならないそうだが、真似をする人がいても困るのでこれ以上は書かないこととする
精神錯乱状態を体罰、薬剤などで起こしたところで、自我に別の記憶を刷り込むということになるのだが、これまた「鏡に向かって○○だと言い続ける実験」にも近づいてしまうので、できなくもないのかなと感じた