「タイトルなし(ネタバレ)」陪審員2番 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
ある殺人事件の陪審員に選ばれたジャスティン・ケンプ(ニコラス・ホルト)。
初公判の日、事件のあらましを説明された際に、いやな思いが湧き上がってくる。
それは、事件が起きた同じ雨の夜、車を運転中、事件現場で何かを轢いてしまったこと。
確認したが何もなく、鹿が頻出する場所であることから、ぶつかった鹿がそのまま逃げたと思ってそのまま立ち去ったこと。
よもやあれが被害者女性だったのか・・・
といったところからはじまる物語で、2時間サスペンスだと「アホくさ・・・」と馬鹿にするような設定。
が、映画はそういうふうにならない。
というか、事件の真相は明確には描かれていない。
(まぁ、彼が轢いたと思うひとが大半かもしれないが、やっぱり鹿かもしれない)
主題は、クリント・イーストウッドがマルパソ設立当初からこだわってきたこと。
「ひとは人を裁けるのか。そして、裁きに正義があるのか」
(マルパソ第1作が『奴らを高く吊るせ』)
なので、裁きも正義も(事件の真相も)観る側に委ねられる。
演出的には丁寧で、事件そのものの描写は「目撃する者」と「事件当事者」とでは異なるため、同じシーンでも微妙に異なって撮られていますね。
近年のイーストウッド監督作品でも上位に位置する作品と感じました。
以下、余談。
わたしが主人公だったら、事件のあらまし聞いた時点で、事件の発端となったバーに居たんだから、「関係者です」と名乗り出ちゃうなぁ。
轢いたのは、やっぱり鹿で、事件には関係ない、と思い続けるかなぁ。
なにせ、ひき逃げ説が浮上するのは、評決審議の中。
公判では、ひき逃げ説は出ていないので、深く考えなければ、やっぱり鹿だなぁ、と。
まぁ、卑怯といえば卑怯だが、本作の主人公の心情よりは安心できるからね。