「陪審員の中に事件の容疑者がいたとしたら。。。」陪審員2番 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0陪審員の中に事件の容疑者がいたとしたら。。。

2024年12月23日
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鑑賞方法:VOD

怖い

嵐の夜、1組のカップルがバーで言い合いになり、女性は外に飛び出し、その後、橋の下で惨たらしい姿で発見される。容疑者として浮かび上がったのはバーにいた被害者の恋人で、招集された陪審員の多くは事件の目撃証言や状況証拠から有罪を主張する。しかし、それは正しい評決なのか?

これまでも、人々の大多数が信じる正義というものに疑問符を付けてきたクリント・イーストウッドは、事件の真相を究明するのではなく、あろうことか、異なる容疑者を陪審員の1人に加えることで事の成り行きを複雑にする。知られざる新たな容疑者は保身のために評決をミスリードし、そこに次期検事長の座を狙う敏腕検事や、多忙なために早く裁判を終わらせたい弁護士や、陪審員の中に捜査好きの元刑事を潜ませたりして、この物語の行方を曖昧にしていく。観客からすると、目が離せなくなる。

陪審員制度の問題点を突くことで、真実=正義という構図を一旦壊し、そこから、正義を諦めない人間の可能性へと繋げる語り口は、まさに、イーストウッドならでは。無駄のない演出は年齢を重ねても変わらぬ抑制力の賜物ではないだろうか。

清藤秀人