「最高の引退作」陪審員2番 K.ベイさんの映画レビュー(感想・評価)
最高の引退作
クリントイーストウッド引退作。引退作としては惜しみたくなる傑作だった。
ニコラスホルトが演じる主人公は陪審員に選ばれる。殺人事件の裁判であり被告人が殺人の有罪か無罪かを問う裁判。
被告人は過去に反社会行動をし直前に加害者の女性と喧嘩もしている。しかし確固たる証拠はなく、状況証拠と陪審員の早く事を終わらせたい気持ちからさっさと有罪で終わらせたい者が多い。
そんな中ホルトは事件の本当の容疑者は自分じゃないかと疑う。
もちろんこちらも確固たる証拠はないのだが事件を追えば追うほど自分が加害者だったと確信に近づく。
罪悪感からなんとか被告人を無罪にしようとするも、前任一致でなければ次の陪審員達に委ねられることになり事件の真相を追われることを恐れる。最終的に自分が陪審員の立場で事件を終えることを望み被告人を有罪にする決断をしてしまう。
ホルトの罪悪感と自己保身の狭間をうまく描いた作品であっという間の120分だった。
自分がホルトの立場であったらどういう判断決断をするのか、それらを自分に置き換えながら見ると心苦しく見られる。もちろん悩んでる時点で自分も善良な人間ではないのだろう。
何が正しのかはもちろん分からない。ただ一つ言えることは真実を隠す事なく伝える事が正しいのであって、そこから逃げ隠れ、嘘をついてしまった時点でホルトが正義を語る資格は残念ながら失う。
そんな正しい判断ができない立場の人間でも人を裁く立場になりうる陪審制度の欠陥もまた実感させられ恐怖を覚える。
クリントの作品はこれまで何作も鑑賞し貴重な時間を過ごさせてもらった。引退作というのは寂しい限りだ。それ以上にこんな偉大な監督の引退作を日本では劇場公開スルーというのがあまりにも残念。
しかしながら配信でも傑作に変わりはない。1人でも多くの人に見て感じで欲しい作品だ。
クリントイーストウッドに改めて敬意を表したい。