「なんというか凡庸な出来」名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック) 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
なんというか凡庸な出来
コナン映画全体で見ると中位から下位辺りかな~という。昨年に引き続き28作目も初日鑑賞。これで28年連続劇場で鑑賞していることになる。雪山を舞台にした映画と言えばすぐに「沈黙の15分」が出て来るのだが、アクションの面白さで言えばスノボを駆使していたあちらの方に軍配が上がる。
今作のダメなところとして、せっかく大和敢助や諸伏高明を出したのに、ミステリー要素も薄く、アリバイやトリックなど一切無いというのは大問題だろう。二人の推理力が魅力なのだが、敢助は終始命を狙われ続け、高明も命を落とし掛ける。解決は新一のメールを見た小五郎が、って何だこれは?これだけ小五郎に関連付けた事件なのに、何故そうなる。そこは小五郎に譲ろうよ。証拠の手袋をそのまま身に着けているというのも、さすがに酷い。手袋があれだけ破れたらそこは気づくだろと。あと無駄に多い暗転。そこ必要か?という場所が多々ある。
肝心のストーリーに入る。八ヶ岳連峰未宝岳雪崩事故から話は始まるのだが、10ヶ月前というのを観て「え?」と思ってしまう。敢助が隻眼になったのって、そんな最近の話だったのかよ。刑事時代の同僚である鮫谷と会うことになった小五郎だが、会う直前に鮫谷が射殺されてしまう。犯人と追いかけっこするお決まりのスケボーアクションが始まるのだが、今回特に入れる必要は無かったんじゃないかなって。正直園子のシーンも、あれを入れるくらいなら、鮫谷と小五郎の刑事時代のエピソードを入れるとかした方が良かっただろうに。そうしたらもっと小五郎の気持ちに入り込めるのだが、その辺りが無いせいで事件に入れ込む小五郎への感情移入がし難い。
佐藤と高木をアベックと紹介する小五郎。現代のアラフォーはアベックなんて使わない。まぁコナンが始まった1994年から考えると、38歳の小五郎は1956年生まれということになるので、使いそうではあるが。サザエさん時空じゃ無かったら来年70歳である。今作から大人の事情で降谷の声が変わったが特に違和感はなかった。アニメの時はさすがに違和感を感じたのだが、この辺りはさすがベテランの草尾毅氏である。
今回の阿笠博士のクイズだが、28作目にして初めて答えが分かった。まぁ今回はダジャレではなく、犯人をホシと呼ぶことを知っているかという知識系だったが。二度目の襲撃では凍った川に落ちた高明を救うために小五郎が飛び込むのだが、その後なんともなくピンピンしている。さすがにそこは寒がるシーンが要るだろ。そして人工雪崩発生用の音響装置を利用して雪崩を起こして一気に始末して来ようとするのだが、最初からこれをやらない理由は一体。この辺りは瞳の中の暗殺者と通じるものがある。
雪崩は対の装置を起動させたことでギリギリ止めることに成功するのだが、当たり前のようにガスボンベを蹴るコナン。誰かツッコミを入れろ。この際に敢助の銃を使って小五郎が狙撃するのだが、終盤も風見の銃を使って狙撃する。いや、どっちかでいいだろ。小五郎の射撃の腕は凄いし、そこを見せたいのは分かるのだが、2回はしつこくない?
今作の犯人の動機は司法取引で罪が軽くなるのは許せないというもの。しかし正直に言えば、舟久保英三が言っていたように罪が軽過ぎるのが問題じゃないのかなと。強盗致傷罪は無期懲役または6年以上の懲役。司法取引していない御厨でも懲役7年程度。司法取引した鷲頭に至っては執行猶予。そりゃ怪我を苦にした自殺とはいえ、被害者家族はやり切れんだろ。
終盤になり日本政府を脅迫しているという壮大なことが分かるのだが、正直この情報はもっと早い方が良かった。それならば日本政府を脅迫?どうやって、何のために?という要素があるのだが、謎解きがすぐに始まってしまっては考える暇もない。そのまま犯人が捕まる訳もなく犯人逃亡からのアクションシーンが入るが、これも正直逃げる犯人を追い掛けるだけであり微妙だ。捕まった犯人は自身が嫌悪する司法取引を降谷から持ち掛けられ、しかも拒否出来ないような状況にされてしまうという、なかなか皮肉の効いた終わり方をする。正直ここだけは非常に評価できるところだった。
最後は「ただの同僚じゃないって言ったら?」「は?」で終了。お前、アラフォーやろ。さすがに鈍感過ぎんか?正直昨年よりはマシだったが、今作ももう少しよく出来る場所あっただろと思えてしまう。来年は神奈川県警にスポットが当てられるようだが、警察学校組も絡むのでは?と予想されている。ハロウィンの花嫁くらいの面白さは期待したいところだ。
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