「小五郎が可哀想」名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック) サノさんの映画レビュー(感想・評価)
小五郎が可哀想
『ゼロの執行人』以降、毎年コナン映画を観に行っているファンです。今回の作品についてですが、ここ最近の中では正直、もっとも物足りなさを感じてしまいました。その理由を以下に述べさせていただきます。長文になりますことをご了承ください。
【鬼滅の刃との類似点について】
・序盤の雪のシーンが、『鬼滅の刃 無限列車編』の雰囲気に非常によく似ていると感じました。描写の仕方や演出の流れに、既視感を覚えました。
・諸伏高明が水中に落ちた後、夢の中で弟と再会する場面がありますが、会話を交わすうちにそれが現実ではないことに気づき、自ら銃を撃って場所を知らせるという展開には、『鬼滅の刃』における「悪夢から目覚めるために首を切る」シーンを連想しました。
【毛利小五郎の扱いについて】
・今回は毛利小五郎がメインとして描かれるのかと期待していましたが、実際に彼が推理をする場面はほとんどありませんでした。
・独自の見解を披露することもなく、新一からのメールをただ受け取り、その内容をなぞるように推理を進めているだけに見えました。同期が殺害されるという重大な事件に強い思い入れがあるように描かれていたにもかかわらず、自らの意思で真相に迫る描写がほとんど見られなかったのは残念です。
・かつてのコナン映画では、小五郎が自分なりの仮説を立ててミスリードを演出し、そこにコナンが修正を加えることで物語が進行していくという構造が多く見られました。今回もそのような役割があれば、小五郎らしさが際立ち、より魅力的だったのではないかと思います。結果的に、主役のように見せかけて、やはり“操り人形”としての扱いに終わってしまったのが残念でした。
【雪崩事故の描かれ方】
・今回初めて取り上げられた「雪崩事故」ですが、描写がやや薄く、映画という大きな枠組みで扱うには説得力に欠ける印象を受けました。正直なところ、テレビスペシャルでも十分成立した内容だったのではないかと思います。もしスペシャルとして放送されていたら高く評価できたかもしれませんが、映画作品としては期待外れでした。
【犯人とその動機について】
・事件の背景として、犯人の婚約者が窃盗事件の際に棚から落ちてきた包丁で足を負傷し、その影響で強化選手から外され、自ら命を絶ってしまったという経緯が描かれていました。
・ただし、その包丁が落ちた原因については、犯人が意図的に何かしたわけではなく、偶然による事故として描かれていたように感じます。それにもかかわらず、それを“窃盗犯のせい”として強く憎むのは、やや筋が通っていないようにも思えました。
・もちろん、喪失の悲しみや怒りは理解できますが、婚約者自身の精神的な負担や、それを支えきれなかった周囲の存在について、犯人がどこまで向き合っていたのかがあまり見えてこなかった点が気になりました。
・また、これほどの人物が警察内部に長く潜伏していたという展開には、少し恐ろしさを感じました。正直、「こんな人物でも公安になれてしまうのか…」という疑問を抱いてしまったのも事実です。
【長野県の魅力の描写について】
・コナン映画といえば、その舞台となる土地の魅力を映像を通じて紹介してくれる楽しさも一つの魅力だと思っています。しかし、今回はほとんどが雪景色一色で、場所の特色があまり伝わってこなかったように感じました。
・舞台が長野県であることに必然性をあまり感じられず、ただ「長野県警が登場するから長野」という設定のようにも思えてしまいました。長野県には素晴らしい場所がたくさんあると思いますので、もう少し地域の魅力を盛り込んでもらいたかったです。
【良かった点】
・安室透役の新しい声優さんについては、非常に自然で違和感もなく、とても良い配役だと感じました。今回初めて新しい声を聞きましたが、キャラクターにぴったりで素晴らしかったです。
全体として、コナン映画にはファンタジー的な要素や終盤の大胆な展開が恒例となっており、そういった“破天荒さ”も毎回楽しみにしています。実はその突き抜けた展開を笑いながら観るのも、劇場に足を運ぶ理由の一つです。そのため、終盤の非現実的な演出については何も言うことはありません。
今回もさまざまな意見が出ており、それぞれの感じ方を共有できるのもコナン映画の魅力だと思っています。今年も楽しい時間を過ごせたことには感謝していますし、今後の映画も引き続き観に行く予定です。
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