リライトのレビュー・感想・評価
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誰もが皆主人公
さだまさしの「主人公」って曲の一節「あなたの人生の中では誰もが皆主人公」って歌詞を思い出しました。また、この映画は3つのパートに分けられ、池田エライザ、倉悠貴、橋本愛がそれぞれの主人公で、一番多くのシーンがある未来人保彦を演じた阿達慶は本当の主人公のはずなんだけど、いわば「狂言回し」の役割だったと思います。
で、最初に書いたように30数名のクラスメイトそれぞれが「主人公」なわけで、映像化されていなかった人のお話がどういうお話だったか想像するのも楽しいものです。
法条遥の原作は未読ですが、原作の素晴らしさと、舞台を「尾道」に変えた脚本で映画製作者たちの大林宣彦監督の尾道三部作へのリスペクトを感じ、また私もそうですが大林ファンにとってたまらない作品になっています。
「リライト」とは書き換える事。未来人は32回の「重ね書き」をしてしまい絶望するが、33回目の少女に助けられる。主人公は10年後にすべての真相を知り、自分の人生の「リライト」に歩み始める。
この作品を観てまず最初に感じたことは、「池田エライザの女子高生役はこれが最後かな」という感想です。池田エライザが老けたとかブスになったという意味ではなく、演技の幅が広く実力も高い長澤まさみ様とか柴咲コウの域に達してしまったからという感じです。
未来人が現代に現れるタイムリープ物で場所は尾道、出版予定だった本の表紙画、時々出てくるラベンダーの香り、どこから見ても「時をかける少女(1983年)」のオマージュ作品ですね。筒井康隆の原作は「ジュブナイル」と称されていましたが、同じ作品を今発表したら「ライトノベル」となるでしょう。呼称が変わるという事は、それだけ時代が動いているという事でもあります。受け取り側の感覚がそれだけ変化しているので、主人公も中学生から高校生に変わっているし、主人公がケガを負ったり、家が火事になるようなマイナスイメージのシーンも無いです。
まさか邦画にポリコレの影響が及んでいるとは思えませんが、池田エライザと橋本愛だけでなく、出演者全員が主人公設定なんじゃないかと思わせる謎設定。そして尾美としのりと尾道は許せますが、ラベンダーはどうかと。時かけでは薬品の材料としてラベンダーを求めに来た未来人ですが、ラベンダーの産地は北海道だし、なによりも本作では未来人の動機が希薄過ぎる! 300年前の小説に憧れるのは分かりますが、タイムリープの技術が確立した未来から来たのに、同級生に頼んで超アナログな方法で小説の作者(の素)を探し出すというオッチョコチョイです。
保彦の一連の行動は、バタフライ効果で未来を変な方向に導いたら時空警察がすっ飛んでくる案件ですよ。友恵だって300年後に連れて行って夫婦になったような演出ですから、広島県警に女子高生行方不明事件の捜査本部があるはずです。小説家にしたくない人物には全力で悪口を言っていたのに美雪にはそれを言わなかったり、記憶を消す技術があるならメン・イン・ブラックみたいにフラッシュライトで全員の記憶を消去すれば良いのにやらなかったり、コナンだったら「あれれ~おかしいぞ~?」と言っているでしょう。
あと、細かい指摘で恐縮なんですが、作品に重要なタイトルバックが出てくるタイミングが悪すぎる。美雪が部屋の中にポツンと一人でいるシーンは、観客の心がニュートラルになっている場面なのに、そこにバーンとタイトルが出てくる。これは映画通でなくてもおかしいと思うはずです。私よりはるかに映画に精通している人に笑われてしまうかも知れませんが、タイトルを出すのだとすれば、小説家の美雪が高校生の美雪にささやくシーンか、美雪が夫の章介と一緒に渡船場にいて「リライト」と書かれたノートを閉じるシーンかのどちらかだと思います。
良かった
なかなか見応えのある映画でした👀
最初の方は見た事あるストーリーでしたが
タイトルが出てきたところから始まったなと思いました。未来人と協力してた男の人がとても良かったです。
若かりし頃の山田孝之に似てました。
尾道、タイムリープ、ラベンダー!
池田エライザさん主演のSF青春ミステリーということで、期待していた本作。公開初日にさっそく鑑賞してきました。
ストーリーは、クラスに転校してきた保彦から、「自分はある小説に憧れて300年後からタイムリープしてきた」と告げられた高校生の美雪は、保彦と親しくなり、彼から10年後にタイムリープできるという薬をもらい、ある出来事をきっかけにその薬を使って10年後の自分に会い、保彦が憧れていた小説は未来の美雪の著書であることを告げられ、過去に戻った美雪は、未来に戻る保彦にこの夏の出来事を小説にすることを約束して見送ってから10年後、いよいよ過去からタイムリープしてくるはずの自分を待つが、いつまでたっても現れず、そこには驚くべき真実が隠されていたというもの。
あらすじをまとめてみても、言葉にすると複雑で自分でも何を言っているのかよくわかりません。本サイトで先にあらすじを読んでいたにもかかわらず、まずそれが理解できずにいたのですが、過去からタイムリープして来るはずの自分が来ない謎を探るという物語の建付けは、映像で観れば十分に理解できると思います。
その謎の裏には予想のはるか上の理由があるのですが、これは読めません!難しい!でもおもしろい!タイムリープして来ない美雪の謎以外にも、雨宮からの小説酷評、執筆を生業とする者の多さ、同級生・室井の変貌と死、茂の意味深な言動など、用意された数々の伏線が収束していくさまはお見事です。あわせて、保彦のために必死にがんばりながらも、切なく悲しい思いを噛みしめ、さらには罪悪感を背負い続けてきた茂の心情が伝わってきて、不憫でなりません。
そして、圧巻なのはラスボス感満載の雨宮友恵!結局、美雪が書いた小説を未来の友恵が図書室で交換して過去の自分に届け、過去の友恵がそれを必死にリライトして別作品としてぶつけてきたということでしょうか。だから、美雪が手にしていた本はボロボロに傷んでいたということでしょうか。それでも、それは確かに自分で書いた幻の一冊であり、「別れのキス」の記述のある、美雪だけの思い出そのものです。それを目にしながらリライトする友恵の心情を思うと切なくなります。
そもそも保彦自身が未来をリライトしたくてタイムリープしてきたのでしょうか。そんな保彦と関わる中で、未来や過去をリライトしようとする者、現在を守るためにリライトを拒む者が描かれ、「もしあなたがリライトできるとしたら?」と問いかけられているような気がします。でも、過去の自分を否定するのはなにか違う気がしますし、自分のリライトが他者のリライトにもつながるかと思うと、そんな無責任なことはやっぱりできませんね。
タイムスリップやタイムリープなどが絡むと話がややこしくなるのは百も承知ですが、本作はそれが幾重にも折り重なるような展開で、話が複雑すぎて理解できた自信はありません。それでも、なんとなくスッキリしているのは不思議です。登場人物のそれぞれの強い思いに共感できたからかもしれません。
それにしても、こんな複雑な話をよくぞ映像化してくれました。尾道、転校生、ラベンダー等、過去の名作へのリスペクトとオマージュをこめた、まさにリライトの志を感じる作品です。
主演は池田エライザさんで、高校生から10年間の変容を感じさせる演技がなかなかよかったです。脇を固めるのは、阿達慶さん、橋本愛さん、久保田紗友さん、倉悠貴さん、前田旺志郎さん、山谷花純さん、大関れいかさん、森田想さん、福永朱梨さん、石田ひかりさん、尾美としのりさんら。ここまできたら、原田知世さんや小林聡美さんや富田靖子さんらも起用してほしかったところです。
オチてないような気がする
ネタバレしています。
原作は読んでおりませんが、脚本はしっかり書けているようには思います。数人同時進行までは予想するも、男子も含めて全員だとは思わず。
ただ、美雪の前に10年前の美雪が登場しなかった件については、それがなかったとしても友恵の意図は完遂できていたと思えるので、どうして数日引き延ばしたのか説明がわかりません。また、友恵の夫は保彦ではないかと思って見ていましたが、それだと書店に入ってきた人物は誰なのかがわからず。
また、「リライト」という小説を脱稿したとして、それは出版にまでは至らない(大人の事情で)と思うのですが。
なんだかいろいろともやもやしました。夏への扉とかが自然な形で入ってくるのは良かったです。実は室井が小説を書き上げていて、それを遺族に貰いに行くという展開も予想していました。
最後に、タイムリープというか、タイムループものですよね。多分それも言ってしまうとネタバレになってしまうから避けたのかも知れませんが。
面白かった!秀逸な脚本だけど演出に少し物足りなさも
タイムリープものの定番設定から始まって、それが徐々に崩壊していく中で「何が起った??」という謎解きものの様相を呈していく。その基本のストーリーと語り口は秀逸で、「時かけ」「リバー」「MONDAYS」「ブラッシュアップライフ」などのリスペクトも感じらてニヤけてしまう。個人的には「MONDAYS」のマキタスポーツがツボ。
33人 にはもちろん無理があるのだが、それをいかに演出で観客を納得させられるかが鍵。その意味で少々物足りなかった印象。同時に別な位置でコトが進んいるという絵的な演出をもっと見たかったし、男子生徒とのBL的に見えるはずの様子をもっと突っ込んで見せたら面白くなったのでは。アラが出ないようにするための抑えた演出に感じて、ちょっと残念。でも面白いのは確かなので、多くの人に、特に映画好きに見て欲しい作品。
全生徒(?)が揃って教室を飛び出していくシーンは大爆笑!
タイトルバックは最後のシーンに被せれば良かった
大林宣彦監督の尾道三部作は「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」はいずれ劣らぬSF青春ロマン?の傑作ですね。今作は全編尾道ロケ、「時をかける少女」のオマージュの匂いプンプンするストーリー、尾美としのりさん、石田ひかりさんなど大林監督作品に常連の懐かしい俳優さんもキャスティングしてくださったこともあり、冒頭はボーイミーツガールの純愛青春ものと錯覚しておりました。
しかし、作家になった美雪のもとに高校生の美雪がいつまでたっても現れず結果、タイムループが完成せず・・・彼女の想定外の事態に陥るサスペンス仕立てのお話に豹変いたします。
途中のストーリーは割愛しますが、最後、まあまあ想定内のヴィランが主人公に対峙し、種明かししつつも直接対決はせず物語は幕を閉じるのですが・・・このままだとつまり、全世界規模でおそらく最悪な結末を迎えることになりますよね?
タイムリープという最強の手段、この時代ではオーパーツともいえるものをほぼ自由に使える立場にある拗らせヴィランを過去の自分を使い限られた最小コマンドでいかに無力化するか、それが自身や他者の犠牲もなくできるのか、という新たな課題が発生しました。
このタイミングで「リライト」というタイトルバックを入れればとてもインパクトがあり、かつ最低限の前向きな方向性は示せたんじゃないかな、と思いました。
では。
思春期症候群‼️❓時間は運命を左右しない‼️❓想いは永遠に‼️❓
SFにしては凄い規格外、時をかける少女のオマージュにしては、34人のタイムループ、最初はミステリー、途中でコメディ、最後にカタルシス、橋本愛が史上最高、ネタバレでもレビューでもわからないだろう、この映画の凄さは、アニメの青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない、を観た人なら瞬時にわかるだろう、名作だと。多くを語らずに、すべての人に観て欲しい名作。
やっぱり… 尾道
何をどう書いてもネタバレになるのだが、男女が入れ替わったり、謎の少年が現れたりと、〈不思議なこと〉が起きるメッカの尾道(笑)が舞台。そこで「ラベンダーの香り」がして、おまけに尾美としのりまで登場してきた日にゃ……
とりあえず、大林宣彦監督の尾道三部作へのオマージュ満載な作品なのは間違いがない。
ちなみに、似て非なるSFのストーリー展開として「タイムリープもの」と「タイムループもの」があるが、本作には一本取られた。
そして、観終わった後にポスターを見ると雄弁すぎる……
できるだけ情報を入れずに観に行って楽しむべき、エンタメ作品の佳作。
それにしても、池田エライザも橋本愛もちゃんと高校生に見えるところが凄い!
ちょいと強引過ぎませんかね。
みなさんのレヴューでは前半より後半が盛り上がるとの意見が多いようですが、オイラは前半のほのぼのとした雰囲気の方がその先のどうなるか?のワクワク感で満たされていた。で、謎解きになっていく中盤は、なるほど「イニシエーションラブ」かいな。と思っていたら後半はそれを斜め上から迫って来る展開に驚きを通り越してある意味しらけてしまった。せいぜい4人くらいの女子までやなと思った次第でした。
前半星4つ、後半星2つで、、、ちょっと残念な
結果となりました。
終わらない夏
何度も繰り返す夏の日
浴衣
夏祭り
頭の後ろのお面
観ている途中であの話に似てるなと思いつつ、
まさかの最後の本のタイトル。
声が出そうになった
今この映画を観ている若い人達は、
知らないのか…
時間の因果が………
アニメ「まどかマギカ」の中で時間を操る少女ほむらが、まどかとの時間軸を何度も繰り返すことで、まどかにとてつもない因果を編み込んでしまった。そんな話がありました。
さてさて、1クラス分のタイムリープを繰り返し、どれだけの因果を編み込んだのでしょうか。
茂が同窓会で明かした真実は、笑えたし、茂の頭の良さに感動した。そういう意味では、タイムリープを重ねてできた因果は茂に表れたのかもしれない。正直、茂のつけたノートをちゃんと見てみたくなりました。
物語の中でも言われたけれど、あの狭い神社の中で全員が会わないのは本当に快挙、スゴ技としか言えない。
しかし、最終的には、茂の想い(片想い)は届かなかったのだなと思うと、少し悲しくなりました。
未来に残り、園田くんのタイムリープの動機ともなった小説「エンドレスサマー」は、たしかにタイトルの通り、20日間の夏の思い出が、園田くんに取ってすれば2年近くも続く日々でした。
園田くんがそんな日々を送ることも、運命であり時間を繰り返す因果だったのではないでしょうか。
大林宣彦監督の尾道シリーズをリスペクトしているらしいのですが、それならば、それぞれ(新旧尾道三部作)の作品のオマージュをもっと組み込んでほしかったなと思います。
未来人との夏‼️
ある日突然未来から来た保彦。保彦はある小説に憧れてこの時代に来た。そんな彼の秘密を知った美雪。問題の小説は保彦と美雪の出会いの物語だった・・・‼️今作は純粋なタイムリープものの秀作ですね‼️舞台は尾道で、前半の展開はまるで大林宣彦監督作みたいなみずみずしい魅力に溢れてる‼️大林宣彦監督作の常連だった尾美としのりさんや、「はるか、ノスタルジィ」の石田ひかりさんも出演してらっしゃるし‼️ホントに尾道ってイイところだなぁ‼️夏祭りの夜、地震による旧校舎の崩壊など、様々な思い出の後、保彦は未来へ帰っていくが、10年後の美雪のもとに過去の自分が来なかったシーンあたりから、ミステリーっぽいとは言え、物語のテンポが若干ダレてくる‼️しかしクラスメイトだった茂がすべてを明らかにするカラオケのシーンあたりから、ガゼン面白くなってはきます‼️橋本愛扮する友恵の存在が物語のアクセントになっていて、ヒロインの美雪の主観で観ているとかなりドンデン返しと言うか、ひねった展開になっています‼️「私だけの物語」のはずが実は「33の物語」であり、友恵の掟破りの行動と、それを許容した美雪の決断が、見事に小説「エンドレス・サマー」を完成させ、300年に及ぶタイムリープを完成させる‼️今作は美雪と友恵のWヒロインの物語であり、保彦の顛末を思うと、美雪の悲恋の物語でしたね‼️ホントに尾道にふさわしい切ない物語でした‼️ただ本作の物語を語る上で必要不可欠かつ最重要キャラである茂‼️茂の幼なじみである友恵への想いがストーリーを形作っていることを考えると、茂の想いが成就されて欲しかった‼️
未来から来た彼はラベンダーの香り。
高3の夏に転校してきた園田保彦とクラスメイト美雪と保彦が手にしてる小説本の話。
“300年先の未来2311年からタイムリープして来た未来人”という秘密を共有し彼に恋をする美雪、後に貰ったタイムリープする為のカプセルを7月21日使った日、小説書いてねと別れを告げられ未来へ帰る保彦だったが、時は経ち10年後、…実家に来るはずの過去の自分に“伝えるため”待つ美雪だか来る気配はなく、誘われた同窓会で保彦の真実を知る…。
池田エライザさんは好きで気になってた本作、未来から来た彼との年齢差、何か不釣合、未来人の棒読み、エライザのパイが気になり話が何か入ってこない。
タイムリープ出来るカプセルを貰った時は、いざという時、終盤辺りで使うんだなと察しはつくものの…使うの早っ!しかも序盤、序盤で何か終わりへ近づいてる雰囲気?!と思うもののそこから長いし、もう1度書くが美雪演じたパツパツの服を着るエライザのパイパイが気になるしで自分はやはり男だな~と思った。
未来へ戻れなくループを繰り返す度にハート泥棒されちゃうクラスメイト達と共通の記憶、小説は誰が?を絡ませながらも、何かアンバランス?不釣合?なキャスティングが気になっちゃったかも旦那役も含め。
事の真相には驚かされるが、モヤモヤとしたフラストレーションも残る
尾道、未来から来た転校生、ラベンダーの香り、尾美としのりと来れば、否が応でも大林宣彦の「時をかける少女」を想起してしまう。
序盤の物語も、「時をかける少女」そのもので、大きく違うのは、主人公が、10年後の自分に会いに行き、その10年後に、過去からタイムリープしてくる自分を待つという展開だろう。
ここで、過去の自分が現れなかったことと、主人公の書いた本が、盗作疑惑のために出版できなくなったことから、主人公だけでなく、観ているこちらも混乱するのだが、「どうして?」という疑問と「どうなるの?」という興味で、その後のミステリアスな展開に引き込まれていく。
これは、もしかして、パラレルワールドものなのかもしれないと予想したのだが、クラスメートの33人が、全員同じ経験をしていたというタネ明かしと、主人公が、最重要人物ではなかったという真相には、さすがに驚かされた。
ここに至って、ようやく、これが、「もしも、ケン・ソゴルが、タイムリープではなく、タイムループにはまってしまったら?」という物語だったということが分かるのだが、それは、それで面白いものの、33組もの人々が、狭い校内で、顔を合わせずに20日間を過ごすのは、いくらなんでも無理だろうとも思ってしまう。
何よりも、10年後の主人公は、高校生の自分に、10年間使い古した試作版ではなく、新品の試作版を見せても良かったはずで、どうして主人公だけが、10年後にタイムリープする時期をずらされたのかがよく分からない。
もし、主人公が、真相のすべてを理解した上で、高校生の自分に会う必要があったのだとしたら、小説を出版した友人が「過去を変えてみれば?」と促した内容が重要になるのだが、結局、主人公が高校生の自分に何を告げたのかは分からずじまいで、モヤモヤとしたフラストレーションが残った。
その友人にしても、最後まで自分を選ばなかったのは、転校生ではなく、彼女に思いを寄せていたクラスメートだったというサプライズが明らかになったはずなのに、それが、10年前の自分に小説の試作版を渡す時に、どのように作用したのかが明確に描かれることはなく、消化不良の感が否めない。
「時をかける少女」を大胆に「リライト」した物語として、十分に楽しむことができただけに、観客の想像に任せるみたいな形で、あやふやな状態のままエンディングを迎えてしまったのは残念で、タイムリープの結果としての伏線回収のカタルシスが感じられなかったのも、物足りないとしか言いようがない。
10年の年月は異性の趣味を変えるほどに激動だったのかなとか、思ったり思わなかったり
2025.6.14 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(127分、G)
原作は法条遙の同名小説
未来人と関わりを持ったクラスメイトたちを描いた青春SFミステリー映画
監督は松井大悟
脚本は上田誠
物語の舞台は、広島の尾道
作家の石田美雪(池田エライザ)は、ある用事のために東京から帰省していた
それは、高校時代に20日間だけ過ごした転校生・園田保彦(阿達慶)との約束で、「10年前の自分が来るから、ある小説を書くように促してほしい」と言うものだった
高校時代の美雪は、図書委員を務め、クラスメイトの読書好きの友恵(橋本愛)と小説談義をする女の子だった
ある年の夏のこと、美雪たちの元に転校生の園田がやってきて、美雪はひょんなことから学校の案内役をすることになった
そこから秘密の時間が増えていき、いつの間にか恋心を覚えた美雪は、彼が帰ってしまうことを惜しんでいた
園田は、美雪が一人きりの時を選んで突然目の前に現れ、自分が未来人であることを明かす
美雪はそのことに疑問を持つこともなく、未来人っぽい行動や反応をする園田に心を許していった
そして、最後の日、園田は「10年後の今日に過去の自分が来るから」と言って、「小説を書くように促してほしい」と言って去っていくのである
物語は、その言葉を信じた美雪がそのために帰省する様子が描かれていて、さらにクラスメイトの酒井(倉悠貴)は、この機会に同窓会をやろうと声をかけていた
東京に出ていた数人も呼び寄せていて、担任の細田先生(尾美としのり)も含めた全員が同窓会に集うことになった
だが、約束の日を過ぎても過去の自分は現れることもなく、さらに次に出版を予定していたデビュー作の描き直し出版に暗雲が立ち込めていた
編集者の佐野(長田庄平)は、キャラは微妙に違うが話の筋はほとんど同じと言う作品が別の出版社から出版予定されていると言う
このまま出してしまえば盗作問題に発展するため、出版社は差し止めを決断するに至っていた
映画は、美雪の元に過去の自分が来ない時点で「タイトル」が出る仕様になっていて、おそらくは3分の1が過ぎた頃だったと思う
そこからは、自分と同じ小説を書いた人物を探すパートになり、複数人が自分と同じように園田との時間を過ごしていたことがわかる
誰もが小説を書くように促されるものの、実際に作家になったのは美雪だけで、それでも彼女の作品は園田が求めているものでは無かった
彼は、その小説が書かれることで未来へと帰ることできるのだが、園田の目論見を看過し、書き換えを行った人物がいた
それを探るのが、第三幕となっていて、そこに向かう前に「酒井と園田が仕掛けたこと」が暴露されていく
酒井は園田が未来に帰るための手助けをしていて、小説を書きそうな人間から順番に園田との関係性を持たせるように仕向けていた
最大33人が同時期にあの学校にいたことになり、それが地震と旧校舎倒壊、花火大会で完結することになっていた
その仕組みは「33股状態」のようなもので、真剣に恋をしていた女子にとってはショックなことだった
それでも、10年前の出来事なのでみんな寛容で、男子も自分の好きな人を取られていたかもしれないのに穏やかな対応を見せていたのは不思議だった
細かなところを突っ込むのは野暮な作品で、あの狭い空間で20日限定とは言え誰とも顔を合わせないように仕組むのは無理があると思う
それでも、その歪さに気づいたのが友恵だけとなっていて、そのあたりは物語上の都合と言う感じに思えた
映画は、そういうところを寛容に思えるかどうかと言う作品なのだが、そもそも結婚相手の章介(篠原篤)と園田が別人種くらいに違うので、そっちの方が気になってしまった
いずれにせよ、設定自体が面白い話で、細かな辻褄合わせを傍に置いておけるくらいには完成度が高い
問題は、クラス全員の女子が恋愛状態になるほどの男子がいるのかと言うところで、一人ぐらいは最後まで友情から出ないと言う人がいても良かったように思う
逆に決め台詞で男子生徒が色めき立つと言う何のためにあるのかわからないシーンを挿入することを思えば、書かせようとしても全く意に介することなく玉砕というのもあったほうがバランスが取れるのだろう
映画は尺の都合で全員は描けないと思うが、バリエーションが多いほどに物語は集約されていくと思うので、ざっくりと「告白シーン」をダイジェストで列挙しても良かったのかな、と感じた
原作はダーク・スリラーだが、映画はジュブナイル。
原作既読。
ひと言で言えば、面白かった。
心配した予告での保彦役の演技は、演出だった。
* * *
ただ、作品の毛色は原作とだいぶ違っていて、
原作がダーク・スリラーSFなのに対し、
映画はジュブナイルだった。
それは意図的なもので、
しかも脚本の上田さんと松居監督が、
同じ「時をかける少女」でも筒井康隆より大林宣彦を強く意識していることは、
原作文庫巻末のインタビューから窺える。
>(上田さん)原作はリライトによって世界線が変わっていきますが、映画では「世界線は一つ」としました。
>(上田さん)大林宣彦監督の『時をかける少女』を踏まえて、尾道で映画を撮ろうと松居さんから出た案なのですけど。あの名作に対して、まさにリライトを仕掛ける事になるので、映画版では後味の悪さを残して終わるのは嫌だなと。
>(松居さん)やっぱり映画だから役者が演じるとなった時に、どんなに痛みを伴っても、愛せない人を作りたくなくて。
そして映画は、目論見どおりの作品に仕上がっていて、
それは脚本家と監督の腕のなせるわざだろう。
* * *
でも、
原作より物足りなくなっちゃった部分もあって、
その一つは、
「世界線」が一つになっちゃって、分かりやすくなりすぎたこと。
「なんじゃこりゃあ」という面白さがなくなってしまった。
とはいえ映画は、
本と違って「その場でもう一度」というわけにはいかないから、
分かりやすくしないといけないんだろう。
もう一つ。
これは「厳禁」のネタバレなしには語れませぬ。
* * *
友恵が美雪の薬を「調合」して
タイムリープの到着日時を遅くして
「美雪もリライトできるんじゃない?」
と言った台詞の意味が、
どう考えても分からない。
友恵にとって、何もいいことはないのだから。
そして美雪もまた、さらなるリライトはしないことを選んだ。
「愛せない人を作りたくなくて」という監督の言葉からすると、
友恵も美雪も悪役にしたくない、
という配慮しか思いつかない。
だとしたら、つまらんなぁ。
* * *
原作では、
友恵がリライトしてしまったから、
クラスの誰も10年後にリープして来ないんである。
映画では、
友恵がリライトしたというより、
友恵がその小説を書くのが本線で、
美雪が「リライトしかけた」、
それを友恵が「さらにリライトして本線に戻した」
という話になっていて、これが
「世界線が一つ」ということなんだろう。
収まりはいいけど、
ゾクゾク感・クラクラ感は、原作の方が上だった。
それでも実は、
友恵は保彦を「手に入れている」
という点は、映画も原作と同じだ(ろう)けど。
気持ちの良いほどまんまとやられた!タイムリープジャンルにまたまた新たな傑作誕生!
大林宣彦監督の不朽の名作『時をかける少女』(1983)を想起させるキービジュアルや『ラベンダーの香り…』などの口上、『新・尾道三部作』のミューズであった石田ひかり氏や監督自身の分身、アントワーヌ・ドワルネともいえる尾美としのり氏の配役、そして風光明媚なオール尾道ロケ。
誰もがあの名作の令和のリメイク版、未来人との甘酸っぱい青春SFラブストーリーとイメージしながら劇場に足を運ぶと思いますが、実際はさにあらず。
20年前にSFタイムリープの傑作『サマータイムマシン・ブルース』(2005)を発表、その後も『四畳半タイムマシンブルース』、タイムリープの2分のズレを描いた『ドロステのはてで僕ら』(2020)、さらに2分間の繰り返しを描いた『リバー、流れないでよ』(2023)など常にタイムリープジャンルに新境地を開いたヨーロッパ企画・上田誠氏だけあって、単なるタイムリープラブストーリーで終わるはずはないと思っていましたが、まんまとミスリード、後半以降の想像の斜め上を行く驚きの展開に爆笑と拍手喝采、男の友情譚、青春群像劇としても出色です。
ロケ地・尾道も小津安二郎監督『東京物語』(1953)の石造五輪塔、もちろん大林監督『転校生』(1982)や『時をかける少女』の商店街、坂道やお寺、さらに『さびしんぼう』(1985)の桟橋など心にくいロケーションでばかり、改めて尾道の良さを実感しますね。
早く誰かにネタバレしたい作品、ネタバレを聴く前にぜひお早目の鑑賞をおススメします。
全45件中、21~40件目を表示
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