リライトのレビュー・感想・評価
全125件中、1~20件目を表示
過去を笑って語ることができるか
美雪は、高3の夏、転校生としてクラスに入り込んだタイムトラベラー・保彦と親密になり、その経験に将来を決定づけられた作家である。10年後、美雪の身に起きるはずの出来事が不発に終わったことを皮切りに、2人が過ごした20日間の真実が明らかにされていく。
『時をかける少女』のオマージュを全面に押し出したプロモーションがされていた本作だが、作品の方向はジュブナイルとは異なっていた。少年少女の未来や可能性が無限であることに立脚した物語が『時をかける少女』だとすれば、本作は、いかにドラマチックな青春を経ても殆どの者がそこそこの大人に収束することを前提にした物語だった。
登場人物達はそこそこの大人の暮らしに納得しているように描かれてはいるが、彼らの中には10年の間に責任感や義務感に疲弊したり、挫折して罪悪感に苦しんだ者もいたのではないだろうか。特に幾人かにとっては、未来を実現させるために苦労や努力を重ねた末に梯子を外された向きがあり、彼らが遠い目をして笑う度に胸が苦しくなった。
騒動に関わる人数の多さが面白味の一つではあるのだが、それがかえって、彼らの10代終盤のヒーロー・ヒロイン願望の焼け木杭、あるいは『何者かにはなれるだろう』という漠然とした自信と、自立へ全振りするしかないエネルギーを雑に搾取したように見えて残念だった。
過去は現在の礎である。本作は、自分の現在をおおむね気に入った上で、過去の苦労もダサさも輝きも笑って語ることができる人や、苦境に勝利した経験のある、大人に向けた世界観なのだろう。
シニカルな視点やウェットな感性がリードする物語の中、同窓会の茂の告白から始まるわちゃわちゃしたパートは脚本の上田氏の作風そのままという印象で、浮いている気がした。保彦と美雪の交流のぎこちなさは『時をかける少女』のオマージュの一つなのかと思ったら、伏線として回収されたのは面白かった。
クリエイターの競演も本作の目玉の一つであるが、シリアスとユーモアのバランスや方向づけが時折突飛になる瞬間に、得意分野が異なるクリエイターどうしの共作の難しさが見えた気がした。
一人から始まる物語が散らばり、オープンエンドに近い部分もあるため散漫な印象は残ったが、事前情報から予想していたものが本編が進むにつれ裏切られる感覚や、夏の表現、タイムリープものの暗黙を壊していく展開は楽しめた。
これは最高のリライト
原作既読。原作は主人公の一人称で語られるのだけど、その語り手の名前がコロコロと変わって、読んでる間に大混乱する難解な小説だった(それが狙いなんだろうけど)。アイデアは面白かったのだけど、読み続けるのが途中から苦痛になってきて、早く終わってくれーと思いながら読んでいた。
その原作を、タイムリープものの名手である上田誠さんがうまく「リライト」してくれた。原作では中学生だった設定を高校生に持って行ったのも正解だし、舞台を原作の静岡から「あの」尾道に移したのも大成功だと思う。特に21世紀になっても相変わらず情緒ある美しい尾道の風景を現代の映像技術で大きなスクリーンで観られたのはよかった。女性4人の居酒屋のシーンや、同窓会の1次会のわちゃわちゃした雰囲気も好きだ。
原作は"史上最悪のタイムパラドクス"と言われているそうだけど、そこを上田さんはうまいこときれいにまとめてくれてて、うならされた。鑑賞中、もっと見ていたい、まだ終わらないでくれー、と思って見ていたし、全てのストーリーをわかった今、もう一度見ていろいろと答え合せをしたくなってしまう。
小ネタとしては、テキ屋のお兄さんが首からヨーロッパ企画のタオルを下げていたり、他にも探せばあるのかな。
もともと書かれた歴史なら書き換えても良いんだろう
今日あるすべてのタイムリープ物語の原点たる「時をかける少女」を下敷きにした青春SFミステリ小説を原作に「サマータイム・マシンブルース」の上田誠が脚本を書きオール尾道ロケで撮ったというのだから面白くならないわけが無く、そもそもNHKの「タイムトラベラー」を観て育った私たちの世代はタイムリープを普通に日常の現象として受け入れる準備ができており、主人公の美雪(池田エライザ)同様300年後から来たという男の言葉をこれっぽちも疑うことは無いのだがストーリーが進むにつれどこから笑って良いものか、そこがツボの少々悩ましい映画なのかも知れない。「史上最悪のパラドックス」というのだが、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返される「パッと光って咲いた」打ち上げ花火の胸キュンデートは未来から来た保彦が読んだ小説の主要部分で相手が誰であろうとこれは避けて通れない、という夏祭りの夜の時間的縛りがあまりにも楽しく綿密な秒刻みのスケジュールに追われる酒井茂(倉悠貴)がドラマを盛り上げ理科室でフラスコが床に落ちるシーンやラベンダーの香りを「お約束」として仕方なく的に盛り込んでいるのも良し。何といってもきれいなタイムループで完結したいと必死な保彦に対して「歴史なんて書き換えちゃえばいいのよ」という〇〇ちゃんの言葉が吹っ切れていて感動しました。
地獄の2時間
悪くはないが、何かモヤモヤが(~_~;)
時をかける少女
人物の魅力
一定数リープもののファンがいるのかな?
時と四季を巡る物語
不思議なことはあったのかもしれない。
物語の脇が甘い。惜しい。
すこぶる良作なタイムリープもの青春仕立てin尾道
いわゆるタイムリープものは、その設定自体に綻び(矛盾だったりご都合主義だったり)が見えてしまうと、途端に物語としての勢いが弱まってしまい、本来はその物語で表現したかったテーマやエンターテイメントまで安っぽくなりがちなので、無意識に心構えをしちゃうんですよね。
そのうえ本作は「尾道を舞台に、未来からやって来た転校生が、その時空間から現出した光景をヒロインに見られるも、ふたりだけの秘密として彼女と過ごす一夏の青春ストーリー、そしてラベンダーの香り」という出だしなので(オマージュかなパロディーかな)と、若干不安に駆られていました。大変申し訳ない。
ところがお約束のタイムパラドックスの縛りを提示しての、基礎となる世界線の物語が綴じる序盤、思いも寄らない展開からのタイトルコールで、ここまでが少々長めのプロローグだったことで、俄然、面白くなってきました。
とにかく脚本が丁寧。それぞれの登場人物たちの行動にはたしかな理由があり、それが中盤から終盤にかけて、塩梅よく開示されていき、今まで観ていた景色が一変していくカタルシスが味わえます。
さらに絵作りも丁寧。特に印象に残ったのは、同窓会二次会の帰りにみんなで船着場(かな?)に着いてから、それぞれの配置に着く流れが、違和感なくハマっていたのが気持ちよかった。
とにかく最後の最後まで丁寧に仕上げられていて、心地良い鑑賞体験ができますよー。
時を駆けない少女
帰りの電車で富田靖子さんと出会った夜
エライザさん始め何人もの売れっ子女優がかなりの薄化粧で女子高生をがんばってるのが見どころだった気が(たぶん違います)。
尾道、タイムリープ、ラベンダー…さらには、尾美としのりさんまで登場!
若かりし頃大林監督の尾道映画に魅了され、
初めて広島に出向いたとき(本当の初広島は修学旅行で広島市内だけだったけど)には
何よりどこより尾道を目指した身として、
内容どうこう関係なくノスタルジーを感じさせてもらいました。
んで、おまけに帰りの電車では、ドア広告に伊右衛門…え、富田靖子さん⁉︎
これは、完全に導かれてる?…と思ったら、これは奈緒さんなのね。
よくよく見ればそうなんだけど、
尾道映画のあとにあの広告写真をパッと見したら富田靖子さんにしか見えませんて!
あ、話がそれた。
タイムリープの種明かし部分は、なかなかにコメディで、
映画館では主におっさんたちが笑い声をあげていました。
他にもいそうと思いながら見てはいたけど、まさかまさかでしたね。
かなり無理はあるけど、タイムリープものにはどうせ無理があるんだから、
思いっきり無理しちゃおうとする姿勢は嫌いじゃなかったです。
(餃子をうまく焼くために時間を行ったりきたりするよりは好きでした)
(おもしろタイムリープものとしては、「リバー、流れないでよ」の方が好きですけど)
みなかったことには、できないよね。
時間ものは過去(未来)から誰かやってくる、主人公が過去(未来)へ行ってしまう、まではいいんですが、過去と現在と未来をいったりきたりや、過去(未来)の自分と会ってしまったりとなると頭がついていけない。
だから、バック・トゥ・ザ・フューチャーの1と3はいいんですが、2はダメなんです(字幕なしで観たせいもあるんですが)。
だからこれ大丈夫かなと思って見始めたら、なんや台詞に加えてナレーションで説明するんかい。
頭使わせろや。(もうここでのれなかった)
少女は時を翔けた。 あかんやろ。
ラベンダーの香りがした。 あかんやろ。
10年後の自分ならなんとかできると思った。
なんでやねん。
300年後の未来人て髪型今といっしょかい。
言葉も普通に通じるんかい。
300年前はちょんまげでござるよ。
薬飲んでって。
無理やろ。
笑えない。
キュンキュンしない。
せつなくもない。
ハラハラもドキドキもワクワクもしない。
楽しくない。
悲しくない。
ただの胸糞映画やった。
タイムリープはもう禁じ手にしてほしいと思っているから、終止符を打つにはちょうどいいかな。
でもまだやるんだろうな。
作ってる人たちの、どうだ面白いだろう、って悦に入っている顔が目に浮かぶ。
池田エライザと橋本愛の女子高生コスプレしたかっただけじゃないか。(そこはよかった)
この映画、観なかったことにはできないよね。
(時かけ、ふてほど、は奇跡のような作品だったんだな)
もっとプロモーションを
見たい観たいと思いながらついつい後回しになり昨日鑑賞(平日昼の回)
ネタバレできない映画なので別側面から。
観客4名、こんなに面白いのになんで?
これが最初の感想。もっとプロモーションや番宣に費用回して欲しかったなぁ。
あと公開日も国宝の翌週、フロントラインと同週にぶつけるのはタイミング的にどうなの?
ホントに面白いのですよ。結末知ってからもう一度最初から復習したくなる仕掛け。
これがタイムリープものの醍醐味です。原作との違いもありますが、原作未読でもまったく問題ない。
脚本の上田さん(ロジック)と監督の松居さん(エモーション)の融合を感じました。
この二人、いいコンビですね。
今からでも間に合う方には是非オススメしたい良作でした。
全125件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。