「ジュブナイルの皮を被ったSFミステリーの力作」リライト ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュブナイルの皮を被ったSFミステリーの力作
非常に楽しめました。
物語の導入は、主人公である女子高校生・美雪と謎の転校生・保彦の、ひと夏の思い出。美雪は保彦との約束を叶えるために作家になり、約束の本を完成して、出版間近にまで漕ぎ着けます。
ここで物語が変節し、美雪の本の出版に障害が起こります。
内容が似た本の作者は誰なのか、なぜ内容が似ているのか。ミステリーの幕開け。
高校のクラス会で、衝撃的なネタバレ。このあたりは謎あかしのサスペンスのようでした。
保彦は自分の時代に帰還するために、クラスメート全員と思い出作りをしていたとは。男子同士でも夏祭りに行って花火を見るなんて、薔薇ですか。
思い出作りの裏で、ミッション達成の協力者・茂の苦労がコミカルに表現されています。
そして最後は、美雪と、クラスメートの友恵の対決。美雪はこの物語を、自分のものにリライトしなかったのですね。
物語が進むに連れて、ストーリーが大きく転換して驚きがあり、楽しめました。
冒頭を大林宣彦作品のオマージュのように見せたのは、映画制作者側の仕掛けで、観客に落差を味合わせたかったように思えました。
物語の仕掛けで考えたこと。
(1)保彦が帰還するためのキーワードは「エンドレスサマー」だから、美雪が過去から来た自分に、小説のタイトルがそれだと伝えれば、保彦は帰還することが出来、物語をリライトできたはず。
(2)もうひとつ、美雪と友恵が対峙したとき互いの本を交換しましたが、このとき美雪が本を渡さなかったら、友恵は自分の本を書くことが出来なかったでしょう。むしろ美雪は因果律を閉じて世界を保つために、友恵に本を渡した、ということですね。
(3)友恵が過去にタイムリープしたとき、美雪のタイムリープ薬をすり替えて、現在に到着する日を遅らせたのは何故か。友恵は美雪の本を奪って小説を書いたことに負い目があり、美雪に逆転のチャンスを与えたのだと思いました。(1)で書いたとおりキーワードが保彦に伝われば、因果律が閉じて友恵のターンが来なくなるため。あるいは友恵は、美雪に挑戦したのでしょうか。
友恵が美雪から奪って書いた「エンドレスサマー」が保彦にとっての過去であり、この世界の正史なのでしょう。美雪は世界を壊さないために、自分の本を諦めた、という結末なのだと思いました。
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