「終わってから始まった物語り」リライト ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
終わってから始まった物語り
「時間」にこだわりがある
「劇団ヨーロッパ企画」主宰者『上田誠』による脚本。
〔サマータイムマシン・ブルース(2005年)〕の{タイムリープ}、
〔リバー、流れないでよ(2023年)〕の〔タイムループ〕と来て、
今回は再び{タイムリープ}。
加えて、設定・舞台・出演者を加味すれば、
〔時をかける少女(1983年)〕や『大林宣彦』へオマージュを捧げているのは明らか
(が、これも、観終わってから考えれば、
鑑賞者を煙に巻くための仕掛けだったわけだが・・・・)。
とは言え過去作の枠には嵌らぬ驚愕の進展が用意され、
何度も椅子から仰け反りそうになる。
個人的には、
同一日時・場所に同一人が複数存在するのは
{タイムリープ}モノでは禁じ手と思っている。
なので〔バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(1989年)〕は
当然評価しない。それ以外にもご都合主義な設定も多々あるし。
で、本作。のっけからそうした外連味を持ち出すことで、
そのシチュエーションがさも当然と思わせ、
あとあとの更なるエスカレーションが
不自然と感じさせない剛腕を発揮する。
おまけに、一冊しかないはずの本も同一場面でやり取りされ、
かなりの矛盾でしょ?と強く思うのだが、
流れの中では疑問に思わせない描写の仕方が上手い。
{タイムリープ}モノとして観ていると、
次第に〔タイムループ〕をも孕み出し、
お得意の二要素を巧みに融合させているのはなかなかの手腕と感じる。
仔細に見て行けばそれ以外にも不整合と思われる設定は幾つも。
本のタイトルについての疑問や
同時に存在した33の個体のその後などだが、
もっとも顕著なのはラストシーンか。
僅か一ヶ月しかいなかった転校生のことは、
十年経ってもクラス全員の記憶からは消えていない。
にもかかわらず「狭い町だから、ちょっと歩けば
直ぐに知り合いに見つかってしまう」はずなのに、
気付かれないのは何故?
{ジュブナイル}かと思わせておいて、
〔とりかへばや〕や〔夢買い〕といった
昔話の要素すら盛り込み、
人間の黒い側面もきっちりと描いて見せる奇抜さ。
冒頭20分で解決を見たはずの物語りが、
その後予期せぬ展開になだれ込むトリッキーな構成。
瑕疵と感じられる多くを差し引いても、
そうした斬新さにどうしようもなく惹かれてしまう。
『少女は〜』に関しては明確なパラドックスですが、それ以外は(恐らく)整合性が取れてたかと。
33人の保彦はひと続きの存在なので、7月21日以降は一人しかいませんし。
原作ではそれ以降は再び転校した扱いだった気がしますが、そういえば映画では触れられてませんね。笑
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