「事の真相には驚かされるが、モヤモヤとしたフラストレーションも残る」リライト tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
事の真相には驚かされるが、モヤモヤとしたフラストレーションも残る
尾道、未来から来た転校生、ラベンダーの香り、尾美としのりと来れば、否が応でも大林宣彦の「時をかける少女」を想起してしまう。
序盤の物語も、「時をかける少女」そのもので、大きく違うのは、主人公が、10年後の自分に会いに行き、その10年後に、過去からタイムリープしてくる自分を待つという展開だろう。
ここで、過去の自分が現れなかったことと、主人公の書いた本が、盗作疑惑のために出版できなくなったことから、主人公だけでなく、観ているこちらも混乱するのだが、「どうして?」という疑問と「どうなるの?」という興味で、その後のミステリアスな展開に引き込まれていく。
これは、もしかして、パラレルワールドものなのかもしれないと予想したのだが、クラスメートの33人が、全員同じ経験をしていたというタネ明かしと、主人公が、最重要人物ではなかったという真相には、さすがに驚かされた。
ここに至って、ようやく、これが、「もしも、ケン・ソゴルが、タイムリープではなく、タイムループにはまってしまったら?」という物語だったということが分かるのだが、それは、それで面白いものの、33組もの人々が、狭い校内で、顔を合わせずに20日間を過ごすのは、いくらなんでも無理だろうとも思ってしまう。
何よりも、10年後の主人公は、高校生の自分に、10年間使い古した試作版ではなく、新品の試作版を見せても良かったはずで、どうして主人公だけが、10年後にタイムリープする時期をずらされたのかがよく分からない。
もし、主人公が、真相のすべてを理解した上で、高校生の自分に会う必要があったのだとしたら、小説を出版した友人が「過去を変えてみれば?」と促した内容が重要になるのだが、結局、主人公が高校生の自分に何を告げたのかは分からずじまいで、モヤモヤとしたフラストレーションが残った。
その友人にしても、最後まで自分を選ばなかったのは、転校生ではなく、彼女に思いを寄せていたクラスメートだったというサプライズが明らかになったはずなのに、それが、10年前の自分に小説の試作版を渡す時に、どのように作用したのかが明確に描かれることはなく、消化不良の感が否めない。
「時をかける少女」を大胆に「リライト」した物語として、十分に楽しむことができただけに、観客の想像に任せるみたいな形で、あやふやな状態のままエンディングを迎えてしまったのは残念で、タイムリープの結果としての伏線回収のカタルシスが感じられなかったのも、物足りないとしか言いようがない。
10年後にタイムリープする薬は、33回、同じ20日間を過ごしている間に、その都度、調合したのですかね?
未来に帰ろうとしたら、20日前に戻ってしまうので、最後は、現代に留まって、小説が出版されるのを見届けたということなのでしょうか?
いずれにしても、「なるほど、そういうことか!」と納得できるような説明が欲しかったですね。
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