「10年の年月は異性の趣味を変えるほどに激動だったのかなとか、思ったり思わなかったり」リライト Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
10年の年月は異性の趣味を変えるほどに激動だったのかなとか、思ったり思わなかったり
2025.6.14 イオンシネマ久御山
2025年の日本映画(127分、G)
原作は法条遙の同名小説
未来人と関わりを持ったクラスメイトたちを描いた青春SFミステリー映画
監督は松井大悟
脚本は上田誠
物語の舞台は、広島の尾道
作家の石田美雪(池田エライザ)は、ある用事のために東京から帰省していた
それは、高校時代に20日間だけ過ごした転校生・園田保彦(阿達慶)との約束で、「10年前の自分が来るから、ある小説を書くように促してほしい」と言うものだった
高校時代の美雪は、図書委員を務め、クラスメイトの読書好きの友恵(橋本愛)と小説談義をする女の子だった
ある年の夏のこと、美雪たちの元に転校生の園田がやってきて、美雪はひょんなことから学校の案内役をすることになった
そこから秘密の時間が増えていき、いつの間にか恋心を覚えた美雪は、彼が帰ってしまうことを惜しんでいた
園田は、美雪が一人きりの時を選んで突然目の前に現れ、自分が未来人であることを明かす
美雪はそのことに疑問を持つこともなく、未来人っぽい行動や反応をする園田に心を許していった
そして、最後の日、園田は「10年後の今日に過去の自分が来るから」と言って、「小説を書くように促してほしい」と言って去っていくのである
物語は、その言葉を信じた美雪がそのために帰省する様子が描かれていて、さらにクラスメイトの酒井(倉悠貴)は、この機会に同窓会をやろうと声をかけていた
東京に出ていた数人も呼び寄せていて、担任の細田先生(尾美としのり)も含めた全員が同窓会に集うことになった
だが、約束の日を過ぎても過去の自分は現れることもなく、さらに次に出版を予定していたデビュー作の描き直し出版に暗雲が立ち込めていた
編集者の佐野(長田庄平)は、キャラは微妙に違うが話の筋はほとんど同じと言う作品が別の出版社から出版予定されていると言う
このまま出してしまえば盗作問題に発展するため、出版社は差し止めを決断するに至っていた
映画は、美雪の元に過去の自分が来ない時点で「タイトル」が出る仕様になっていて、おそらくは3分の1が過ぎた頃だったと思う
そこからは、自分と同じ小説を書いた人物を探すパートになり、複数人が自分と同じように園田との時間を過ごしていたことがわかる
誰もが小説を書くように促されるものの、実際に作家になったのは美雪だけで、それでも彼女の作品は園田が求めているものでは無かった
彼は、その小説が書かれることで未来へと帰ることできるのだが、園田の目論見を看過し、書き換えを行った人物がいた
それを探るのが、第三幕となっていて、そこに向かう前に「酒井と園田が仕掛けたこと」が暴露されていく
酒井は園田が未来に帰るための手助けをしていて、小説を書きそうな人間から順番に園田との関係性を持たせるように仕向けていた
最大33人が同時期にあの学校にいたことになり、それが地震と旧校舎倒壊、花火大会で完結することになっていた
その仕組みは「33股状態」のようなもので、真剣に恋をしていた女子にとってはショックなことだった
それでも、10年前の出来事なのでみんな寛容で、男子も自分の好きな人を取られていたかもしれないのに穏やかな対応を見せていたのは不思議だった
細かなところを突っ込むのは野暮な作品で、あの狭い空間で20日限定とは言え誰とも顔を合わせないように仕組むのは無理があると思う
それでも、その歪さに気づいたのが友恵だけとなっていて、そのあたりは物語上の都合と言う感じに思えた
映画は、そういうところを寛容に思えるかどうかと言う作品なのだが、そもそも結婚相手の章介(篠原篤)と園田が別人種くらいに違うので、そっちの方が気になってしまった
いずれにせよ、設定自体が面白い話で、細かな辻褄合わせを傍に置いておけるくらいには完成度が高い
問題は、クラス全員の女子が恋愛状態になるほどの男子がいるのかと言うところで、一人ぐらいは最後まで友情から出ないと言う人がいても良かったように思う
逆に決め台詞で男子生徒が色めき立つと言う何のためにあるのかわからないシーンを挿入することを思えば、書かせようとしても全く意に介することなく玉砕というのもあったほうがバランスが取れるのだろう
映画は尺の都合で全員は描けないと思うが、バリエーションが多いほどに物語は集約されていくと思うので、ざっくりと「告白シーン」をダイジェストで列挙しても良かったのかな、と感じた
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