劇場公開日 2025年6月13日

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「過去は変えられない、でも未来は変えることができる。人生をリライト。」リライト レントさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 過去は変えられない、でも未来は変えることができる。人生をリライト。

2025年6月13日
PCから投稿

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酷な現実を生きる少女はその現実から逃れるためにその現実を書き換えた。過去はけして書き換えることはできない、しかし自分の未来は書き換えることはできる。

映画ファンなら誰もが知る大林宣彦版「時をかける少女」にオマージュを捧げた本作。いわゆる「時かけ」の内容はサラっとアバンタイトルで消化される。そのあとの展開が思いもよらぬものに。

映画を観る醍醐味の一つに挙げられるのが観客が思いもよらぬところにまで連れて行かれるという感覚。物語が観客の想像の一段上どころか二段、三段上を行き、予想だにしない展開を見せるほど観客は現実世界からひき離れて夢の世界へとトリップすることができる。現実世界での日々の悩みや苦しみなどから解放されてリフレッシュすることが出来るのだ。そんな役割を映画が担っているとするならば本作こそ映画鑑賞のまさに真骨頂と言える作品ではないだろうか。

本作を鑑賞中、私は間違いなくトリップして至福の時を過ごすことができた。現実世界から離れてスクリーンにくぎ付けになるという体験はそうそうできるものではない。
映画を鑑賞中でもどこか冷静な自分がいて現実世界での悩みなどが頭をよぎったりしてしまう。しかしそんなことが起きようもないくらい観客をスクリーンにくぎ付けにすることが出来る映画ならそれはどんな映画よりも優れた映画だと言えるのではないだろうか。本作は間違いなく私にとってそんな映画だった。
もちろん誰が見ても完ぺきな映画というものは存在しない。人によると粗が目立つ場合もある。ご都合主義は映画が持つ宿命のようなもの。しかしそんなご都合主義を圧倒的に凌駕してしまうくらいの面白さが本作にはある。

旧校舎が倒壊してから保彦の生死を確認しないまま薬を飲むのはタイミングがおかしい、なんで十年後の未来にタイムスリップする必要があるのか、じゅん君がいくら面倒見がいい子だとしてもあそこまでやるだろうか、33人の保彦をあんな風にうまくさばけるだろうか、などなど本作は粗を探そうと思えばいくらでも見つけることはできる。しかしそんなことは問題ではない。要は観客が鑑賞中どれだけこの映画に没頭してその間の時間を楽しめるかどうかだ。
その点で本作は非常に優れている。鑑賞中観客は映画に夢中になれるのだ。これこそ映画の醍醐味。現実世界での些末な悩みや気がかりから解放されてリフレッシュしたいという観客の望みを最大限満たしてくれる作品と言えるのではないだろうか。

私は個人的には最近の日本映画を舐めていた。テレビドラマの映画化だったり、テレビアニメの映画化、アイドルを起用したラブコメ作品などなど。予算が限られる中でコスパのいい作品ばかりで見るに値しないと思っていた。しかし昨年の侍タイムトリッパーやラストマイルなどすぐれた作品が世に出されている。良い映画を作りたいという現場の思いは今も生き続けてる。
日本映画もまだまだ捨てたもんではない。本作と同日に鑑賞したジャンクワールド、国宝と、けして海外の映画に引けを取らない日本映画の底力を見せつけてもらった。

ハリウッド映画のように無駄に予算かけた映画ではなく、作り手が本当にいい映画を観客に提供しようという意気込みがいまも日本映画界に生きていることが感じられる素晴らしい作品だった。

レント
bionさんのコメント
2025年6月14日

コメントありがとうございます。
尾道にいるかのような没入感でしたね。
絶対記憶に残る作品になりました。

bion
NOBUさんのコメント
2025年6月13日

すすすいません!
 御指摘有難うございます。ではでは。

NOBU
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