「尾道、タイムリープ、ラベンダー!」リライト おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
尾道、タイムリープ、ラベンダー!
池田エライザさん主演のSF青春ミステリーということで、期待していた本作。公開初日にさっそく鑑賞してきました。
ストーリーは、クラスに転校してきた保彦から、「自分はある小説に憧れて300年後からタイムリープしてきた」と告げられた高校生の美雪は、保彦と親しくなり、彼から10年後にタイムリープできるという薬をもらい、ある出来事をきっかけにその薬を使って10年後の自分に会い、保彦が憧れていた小説は未来の美雪の著書であることを告げられ、過去に戻った美雪は、未来に戻る保彦にこの夏の出来事を小説にすることを約束して見送ってから10年後、いよいよ過去からタイムリープしてくるはずの自分を待つが、いつまでたっても現れず、そこには驚くべき真実が隠されていたというもの。
あらすじをまとめてみても、言葉にすると複雑で自分でも何を言っているのかよくわかりません。本サイトで先にあらすじを読んでいたにもかかわらず、まずそれが理解できずにいたのですが、過去からタイムリープして来るはずの自分が来ない謎を探るという物語の建付けは、映像で観れば十分に理解できると思います。
その謎の裏には予想のはるか上の理由があるのですが、これは読めません!難しい!でもおもしろい!タイムリープして来ない美雪の謎以外にも、雨宮からの小説酷評、執筆を生業とする者の多さ、同級生・室井の変貌と死、茂の意味深な言動など、用意された数々の伏線が収束していくさまはお見事です。あわせて、保彦のために必死にがんばりながらも、切なく悲しい思いを噛みしめ、さらには罪悪感を背負い続けてきた茂の心情が伝わってきて、不憫でなりません。
そして、圧巻なのはラスボス感満載の雨宮友恵!結局、美雪が書いた小説を未来の友恵が図書室で交換して過去の自分に届け、過去の友恵がそれを必死にリライトして別作品としてぶつけてきたということでしょうか。だから、美雪が手にしていた本はボロボロに傷んでいたということでしょうか。それでも、それは確かに自分で書いた幻の一冊であり、「別れのキス」の記述のある、美雪だけの思い出そのものです。それを目にしながらリライトする友恵の心情を思うと切なくなります。
そもそも保彦自身が未来をリライトしたくてタイムリープしてきたのでしょうか。そんな保彦と関わる中で、未来や過去をリライトしようとする者、現在を守るためにリライトを拒む者が描かれ、「もしあなたがリライトできるとしたら?」と問いかけられているような気がします。でも、過去の自分を否定するのはなにか違う気がしますし、自分のリライトが他者のリライトにもつながるかと思うと、そんな無責任なことはやっぱりできませんね。
タイムスリップやタイムリープなどが絡むと話がややこしくなるのは百も承知ですが、本作はそれが幾重にも折り重なるような展開で、話が複雑すぎて理解できた自信はありません。それでも、なんとなくスッキリしているのは不思議です。登場人物のそれぞれの強い思いに共感できたからかもしれません。
それにしても、こんな複雑な話をよくぞ映像化してくれました。尾道、転校生、ラベンダー等、過去の名作へのリスペクトとオマージュをこめた、まさにリライトの志を感じる作品です。
主演は池田エライザさんで、高校生から10年間の変容を感じさせる演技がなかなかよかったです。脇を固めるのは、阿達慶さん、橋本愛さん、久保田紗友さん、倉悠貴さん、前田旺志郎さん、山谷花純さん、大関れいかさん、森田想さん、福永朱梨さん、石田ひかりさん、尾美としのりさんら。ここまできたら、原田知世さんや小林聡美さんや富田靖子さんらも起用してほしかったところです。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。