リライトのレビュー・感想・評価
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過去を笑って語ることができるか
美雪は、高3の夏、転校生としてクラスに入り込んだタイムトラベラー・保彦と親密になり、その経験に将来を決定づけられた作家である。10年後、美雪の身に起きるはずの出来事が不発に終わったことを皮切りに、2人が過ごした20日間の真実が明らかにされていく。
『時をかける少女』のオマージュを全面に押し出したプロモーションがされていた本作だが、作品の方向はジュブナイルとは異なっていた。少年少女の未来や可能性が無限であることに立脚した物語が『時をかける少女』だとすれば、本作は、いかにドラマチックな青春を経ても殆どの者がそこそこの大人に収束することを前提にした物語だった。
登場人物達はそこそこの大人の暮らしに納得しているように描かれてはいるが、彼らの中には10年の間に責任感や義務感に疲弊したり、挫折して罪悪感に苦しんだ者もいたのではないだろうか。特に幾人かにとっては、未来を実現させるために苦労や努力を重ねた末に梯子を外された向きがあり、彼らが遠い目をして笑う度に胸が苦しくなった。
騒動に関わる人数の多さが面白味の一つではあるのだが、それがかえって、彼らの10代終盤のヒーロー・ヒロイン願望の焼け木杭、あるいは『何者かにはなれるだろう』という漠然とした自信と、自立へ全振りするしかないエネルギーを雑に搾取したように見えて残念だった。
過去は現在の礎である。本作は、自分の現在をおおむね気に入った上で、過去の苦労もダサさも輝きも笑って語ることができる人や、苦境に勝利した経験のある、大人に向けた世界観なのだろう。
シニカルな視点やウェットな感性がリードする物語の中、同窓会の茂の告白から始まるわちゃわちゃしたパートは脚本の上田氏の作風そのままという印象で、浮いている気がした。保彦と美雪の交流のぎこちなさは『時をかける少女』のオマージュの一つなのかと思ったら、伏線として回収されたのは面白かった。
クリエイターの競演も本作の目玉の一つであるが、シリアスとユーモアのバランスや方向づけが時折突飛になる瞬間に、得意分野が異なるクリエイターどうしの共作の難しさが見えた気がした。
一人から始まる物語が散らばり、オープンエンドに近い部分もあるため散漫な印象は残ったが、事前情報から予想していたものが本編が進むにつれ裏切られる感覚や、夏の表現、タイムリープものの暗黙を壊していく展開は楽しめた。
壮大な騙し
細かい設定は置いておいて、発想としての一クラス分の”嘘”を思いついた原作に先ずは敬意を表したい
池田イライザの日本人離れした顔立ちの、やっぱりの出自が今回も華を添えている作品である
アイデアの勝ちな出来映えであった
これは最高のリライト
原作既読。原作は主人公の一人称で語られるのだけど、その語り手の名前がコロコロと変わって、読んでる間に大混乱する難解な小説だった(それが狙いなんだろうけど)。アイデアは面白かったのだけど、読み続けるのが途中から苦痛になってきて、早く終わってくれーと思いながら読んでいた。
その原作を、タイムリープものの名手である上田誠さんがうまく「リライト」してくれた。原作では中学生だった設定を高校生に持って行ったのも正解だし、舞台を原作の静岡から「あの」尾道に移したのも大成功だと思う。特に21世紀になっても相変わらず情緒ある美しい尾道の風景を現代の映像技術で大きなスクリーンで観られたのはよかった。女性4人の居酒屋のシーンや、同窓会の1次会のわちゃわちゃした雰囲気も好きだ。
原作は"史上最悪のタイムパラドクス"と言われているそうだけど、そこを上田さんはうまいこときれいにまとめてくれてて、うならされた。鑑賞中、もっと見ていたい、まだ終わらないでくれー、と思って見ていたし、全てのストーリーをわかった今、もう一度見ていろいろと答え合せをしたくなってしまう。
小ネタとしては、テキ屋のお兄さんが首からヨーロッパ企画のタオルを下げていたり、他にも探せばあるのかな。
もともと書かれた歴史なら書き換えても良いんだろう
今日あるすべてのタイムリープ物語の原点たる「時をかける少女」を下敷きにした青春SFミステリ小説を原作に「サマータイム・マシンブルース」の上田誠が脚本を書きオール尾道ロケで撮ったというのだから面白くならないわけが無く、そもそもNHKの「タイムトラベラー」を観て育った私たちの世代はタイムリープを普通に日常の現象として受け入れる準備ができており、主人公の美雪(池田エライザ)同様300年後から来たという男の言葉をこれっぽちも疑うことは無いのだがストーリーが進むにつれどこから笑って良いものか、そこがツボの少々悩ましい映画なのかも知れない。「史上最悪のパラドックス」というのだが、繰り返し繰り返し繰り返し繰り返される「パッと光って咲いた」打ち上げ花火の胸キュンデートは未来から来た保彦が読んだ小説の主要部分で相手が誰であろうとこれは避けて通れない、という夏祭りの夜の時間的縛りがあまりにも楽しく綿密な秒刻みのスケジュールに追われる酒井茂(倉悠貴)がドラマを盛り上げ理科室でフラスコが床に落ちるシーンやラベンダーの香りを「お約束」として仕方なく的に盛り込んでいるのも良し。何といってもきれいなタイムループで完結したいと必死な保彦に対して「歴史なんて書き換えちゃえばいいのよ」という〇〇ちゃんの言葉が吹っ切れていて感動しました。
可もなく不可もなく
パラレルワールド的なものが、ドラマでも映画でも、流行っているように思うのですが⋯
結構、こんがらがるタイプでして⋯
33人目の橋本愛さんが未来を変えちゃったの?
変えちゃった未来としても、それがそうなる運命なの?とか考え出すとこんがらがるので⋯
まっ、別になんとなく皆んな幸せに生きてるようだから良いということで。
ただ、前田旺志郎さんのターンは、結構重い内容なのに描かれ方が軽すぎるのでは⋯。
いつも、観る前にスケジュールに打ち込むんですが、
こちら打ち込むのを忘れていて、
3日後に打ち込もうとして、何を観たかをすっかり忘れていた⋯汗
地獄の2時間
園田〜!
筒井康隆も大林宣彦も新しい世代にリライトされて、形を変えて次世代に受け継がれていくのをリアルで観ることができて、本当に良かったです。そもそも、食事でも芸術でも、文化は先人のアイデアをリライト×リライトされて私達に受け継がれていますから。
園田モテまくりですね。未来人は現代人よりも話が楽しいからですね。現代人は勉強になります。
園田は33人と同じことをして最後にはもううんざりしていたので、同じことをずっとやることは人間は苦手なんだろうな。だから、毎日同じことを繰り返す労働者が病むのも良く分かります。
美雪が可愛くではなくかっこよく描かれていて、好感をもちました。ラスト、美雪は10年前の自分に何と言ったのでしょうか?
私も10年後の自分からアドバイスが欲しいなあ。でもそれは不可能なので自分で未来を創造するしかありません。私達も未来だけはリライトできますよ。明日から。
悪くはないが、何かモヤモヤが(~_~;)
時をかける少女
渾身の一作
マルチバースも伏線回収も好きじゃないけど、やるなら、これくらいやって欲しいね。
良く練られてた。
マルチバースなのかなと思って観てたら、ロープウェイで「お好きなんですね」って言われたり、お祭りで「何回、商売の邪魔すんだよ」って言われたりで、同じことを何回も繰り返してるんだなって分かってくるの。
タイムリープを複数回やるから「一巡目の僕」「二巡目の僕」って感じで同一時間に複数人の僕が存在しちゃうパターンなんだね。
シーンでは、合唱でスピッツ歌うんだけど、クラスでやる合唱じゃねえぞってレベルでうまかった。役者さんは発声がきちんとしてるから、歌うまいんだよね。そこ調整かけずにガチで歌ってる感じだった。
旧校舎が崩れたときに池田エライザが迷わず走って家に戻って薬を飲むんだよね。ここの躊躇ない疾走感が良かった。
中学二年で、好きな人が下敷きになったかも知れないと思ったら、後先考えずにやるよね。
同窓会に行く前の日、池田エライザは旦那と話して、この旦那ちょっとウザい感じも個人的にはしてたんだけど、良いこと言って、エライザが「そっち行っていい?」って言うの良かった。もう14歳じゃないからね。
ストーリーは「なんで?」って転がってる間は面白いね。
ネタバラシが終わって「では動機は」ってなると、やっぱりちょっと弱いの。
大仕掛けに対して、十分な動機を持ってくるの難しいもんね。
ラストは「そりゃ、橋本愛を使うんなら、そうですよね」とは思ったな。
でも綺麗な落とし方で、ループも閉じて、良かったよ。
上田誠も松居大悟も、単独で作品つくると癖が強すぎるんだよね。
上田誠は仕掛けが鼻につくし、松居大悟は思わせぶりが「わかんねえよ」になるの。
でも、この作品は、両者の鼻につくところが消えて、うまくまとまってた。
エンディングがクリープハイプじゃないから癖が弱く思えたってのもあるかもだけど。
うまくまとまったのは、原作の良さもあるかなと思って、読んだのね。
映画脚本の方が、断然いいね。
原作は練ったアイデアを「それで?」「どうなる?」って叙述もうまいこと使いながら見せてるだけで、最後はまとめきれず放り投げて終わってるしね。良く、この原作を、映像化しようと思ったなと思うよ。
それを、綺麗にまとめてきた上田誠はすごい。けっこう根本的なところ変えてるからね。
それでも本作から、ギミックみたいなところを抜いたら何が残るかというと、あんまり残るものないね。
初恋に対する執着みたいなのはあるかな。
未来人なんか来なくたってさ、中学二年の夏休みで、一緒に夏祭りに行く人がいたら、自分が主人公の夏だよね。
それがしかし自分だけでなかったら……と気持ちは分かるけど、10年経ってたら、まあ、許すよ。
さりげなく良い役者さんも出ていて、上田誠・松居大悟の渾身の一作と思ったな。
また組んでやって欲しいと思うけど、良い原作がないと難しいかな。
人物の魅力
一定数リープもののファンがいるのかな?
時と四季を巡る物語
不思議なことはあったのかもしれない。
幸せなのは、雨か? 雪か?
大林宣彦好きなので、尾美としのりさんが出てきた時点でアガるのですが、周到な伏線と幾段階もの種明かしが心地よい快作でした。初見では致命的な破綻もなく大きな不満はないのですが、処々にある説明不足すぎて観客の好意的解釈に頼る部分だけ減点し、95点評価としました。
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1. 序盤で油断させる「時かけ」オマージュ
上田誠・脚色で、尾美としのり(担任)と未来人が尾道に登場したら「時をかける少女」っぽい話なのねと予想する。大林作品を腐したくはないが、「時かけ」はあくまで中高生向けのジュブナイル小説が原作で、ハードSFに馴れた自分には歯ごたえがなかった。「未来人」て呼び名も、ダサすぎへん。なので自分は序盤、映画館に来た事を少し公開する程に、大いに油断させられた。面白いとの評判だったが、SF風味の恋愛映画なんだ...と。まだJK姿が通用しまくっている池田エライザ様の麗しさだけが救いだった。
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2. 二股?三股?疑惑にゆれる中盤
祭りの夜の酒井茂(倉悠貴)の耳打ちが怪しすぎて、彼も未来人なの?と見当違いな疑いは生じた。しかし、複数の級友がヒロインと同じ物語をしたためている事実を突きつけられ、未来人の二股?三股?疑惑が沸き起こり、酒井茂の関与疑惑も強まる。ただこの時点では、未来人の動機(目的)が検討つかない。女たらしなのかもしれないが、別れ際にヒロインを求めたキスへの戸惑いには、プラトニックな関係しかみられない。何なら、その戸惑い方に、未来人がヒロインの子孫なのかもしれないとミスリードさせられた。
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3. 同窓会の種明かし(第1段階)
同窓会前にも真相は小出しされるが、同窓会の終盤に決定的な種が明かされる。元の時代にもどれなくなった未来人は、この時代に来るキッカケとなった小説の著者に、小説と同じ体験をさせてループの完成を試みる。しかし、著者が誰か分からないまま、最終的に34名の級友と20日間デートを繰り返す。同窓会も、困り果てた未来人を助けるために協力した酒井茂が、懺悔の為に開いたものだった。
ループする度に、同じ20日間に未来人が溜まっていく画は(映画館なので控えめに)爆笑した。狭いお祭り会場に、34人の未来人がバッティングせずにデートを行っていていたとう設定が箍が外れすぎていて愉しい。この不可能過ぎるミッションを、リハーサルも無しに本番一発で実現させたのなら、酒井茂が凄腕過ぎる。実人生でもその能力を発揮して訂正して欲しい。
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4. 雨宮友恵の種明かし(第2段階)
最終盤、母校の図書館で雨宮友恵が真相の全貌を語る。友恵を未来人の運命の相手にしたくなかった酒井茂の恋心のせいで、友恵は34回目のループの相手となる。しかも、10年後の自分がタイムリープして来た事で、友恵はJKの時点で34股の事実も、自分が未来人の運命の相手である事も知っていた。ただ、だからこそヒロインの美雪の体験に激しく嫉妬する。人目を避けざる得なかった34回目のデートは、初期のデートに比べると地味すぎた。33回選ばれなかった理由も、自分がクラスで目立たない存在だったせいと思い込んでいた筈。
だから、雨宮友恵の10年は復讐の為の人生だった。未来を変えようと引き止めて、結婚までした未来人の事は本当に好きだったのだろう。ネグレクトした両親にも、馴染めなかったクラスにも頼れなかった友恵にとって、20日間デートした未来人は縋らざる得ない救世主だった。ただその為には、自分が小説を書いて300年後まで遺さなければいけない。他の誰にも先を越されてはならない。夫を誰にも渡せない。高校時代の淡い思い出に誘われてなんとなく執筆業に就いた級友とは覚悟が違う。恐らく、友恵は10年の殆どをその事に費やした筈。
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4. 初恋に青春にも復讐せずにいられる幸せ
初恋相手を夫にし、髪も染め派手な服をまとい、自信満々に同級生を小馬鹿にする友恵は、確かに幸せを掴めたのかもしれない。しかし、彼女は10年間、人生をちゃんと謳歌でたのか? 初恋の相手と添い遂げる事自体は悪くない。ただ、高校生の20日間デートしただけで、相手をどれだけ見極められるか? 実際、33人は未来人の思惑に気付かなかった。彼女が未来人を選んだのは、自分を軽んじた彼や同級生への復讐なのではないか。未来人との結婚も10年後の自分に予告されていた筈。ならば、彼女の人生に選択肢はなかった。寧ろ、出版を誰にも先んじられてはならない重圧もあった筈。しかも、10年を注いだ小説すらも、美雪の経験談をrewriteしたものに過ぎない。
一方、ヒロイン・美雪も、未来人との想い出に囚われて作家を目指し、10年後のタイムリミットにも執着はしていた。ただ、その間に他の作品も上梓し、仕事仲間と結婚した美雪の囚われ具合はかなり軽度。折角の淡い初恋は、できれば偽りだったと汚されたくはなかったろう。ただその逸話自体、数年後には笑い話にできる程度の浅い傷。初恋や青春の復讐に掛けた友恵の10年間に比べ、作家に成長した美雪の人生の方がはるかに羨ましい。
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5. 3人いた運命の人?
細い処で矛盾を感じたのが、結局誰が運命の人かって事。未来人は小説「Endless summer」を読んで現代に来て、自身が小説の主人公だと確信する。だから、小説の著者に同じ経験をさせてループを完成させねばと思う。そこで、1人目の増田亜由美(大関れいか)と小説通りのデートをした時に、「運命が決まっているから、デートも自然と小説通りになる」と感じるが、これって変じゃない? だって、亜由美告げたタイトルも違うし、結局彼女は小説を断念するので、運命の人じゃなさそうな気がする。ならば、運命じゃないから誘導せずとも小説通りになる訳がない。
ただ、辻褄を合わせようと好意的に解釈すれば、亜由美との経験で実際のデート現場を実体験した未来人は、2人目以降相手を誘導できるようになった可能性もある。つまり、亜由美は著者ではなかったが、小説通りのデートを本当の著者に経験さえる為の準備に必須だったという意味で「運命の人1」だったのかもしれない。
次の問題は、本当の著者が2人居る事。「Endless summer」の最終著者は雨宮友恵で間違いないが、34人目でデートできる場が限定されていた友恵は小説に書かれたデートを経験できていない。つまり、ヒロイン・美雪が書いた元ネタがなければ、未来人が読んだ小説は再現できない。って事は、ループの完成に美雪とのデートは必須であり、美雪も「運命の人2」だったと考えるべき筈。 つまり、亜由美と美雪と友恵の3人とも「Endless summer」の完成には必須であり、運命の人は3人いたのかもしれない。
物語の脇が甘い。惜しい。
すこぶる良作なタイムリープもの青春仕立てin尾道
いわゆるタイムリープものは、その設定自体に綻び(矛盾だったりご都合主義だったり)が見えてしまうと、途端に物語としての勢いが弱まってしまい、本来はその物語で表現したかったテーマやエンターテイメントまで安っぽくなりがちなので、無意識に心構えをしちゃうんですよね。
そのうえ本作は「尾道を舞台に、未来からやって来た転校生が、その時空間から現出した光景をヒロインに見られるも、ふたりだけの秘密として彼女と過ごす一夏の青春ストーリー、そしてラベンダーの香り」という出だしなので(オマージュかなパロディーかな)と、若干不安に駆られていました。大変申し訳ない。
ところがお約束のタイムパラドックスの縛りを提示しての、基礎となる世界線の物語が綴じる序盤、思いも寄らない展開からのタイトルコールで、ここまでが少々長めのプロローグだったことで、俄然、面白くなってきました。
とにかく脚本が丁寧。それぞれの登場人物たちの行動にはたしかな理由があり、それが中盤から終盤にかけて、塩梅よく開示されていき、今まで観ていた景色が一変していくカタルシスが味わえます。
さらに絵作りも丁寧。特に印象に残ったのは、同窓会二次会の帰りにみんなで船着場(かな?)に着いてから、それぞれの配置に着く流れが、違和感なくハマっていたのが気持ちよかった。
とにかく最後の最後まで丁寧に仕上げられていて、心地良い鑑賞体験ができますよー。
全196件中、1~20件目を表示
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