「敵もまた、ガミラスの命運を背負っていた…」「宇宙戦艦ヤマト」放送50周年記念セレクション上映 プログラム2 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0敵もまた、ガミラスの命運を背負っていた…

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

今回は、アナライザーの失恋編(第16話)と真田工場長の過去編(第18話)のサイドストーリー的な2編に、ドメル司令の特攻編(第22話)という本筋の中でもガミラス本土決戦前ではガチガチのメインイベントがセレクトされている。

オープニングの主題歌のアレンジが第5話以降変わっているのは、視聴率が伸びない一因としてアカペラで始まる主題歌が「重苦しい」とされたからだ。
「さらば地球よ〜♪」の部分は悲愴な覚悟で出陣する乗組員たちの心境を表しているから、西崎義展プロデューサーから「もっと低く、もっと低く」と要求されたと作曲の宮川泰は語っている。転じて、「地球を離れイスカンダルへ〜♪」からは行進する乗組員たちをイメージした勇ましさが表現されている。
子ども受けするように宮川泰がアレンジし直した結果、あの見事なイントロが生み出された。
また、第11話からガミラス人の肌の色が青系に変わったのも、子供たちに敵異星人の区別がつきやすいように改善されたのだった。

当初から監修に名を連ねていた山本暎一(※)が、いくつかのエピソードでは企画・原案にも西崎義展と並んでクレジットされている。その山本暎一が初めて脚本も担当した第16話。ロボットのアナライザーが森雪に結婚を申し込むという奇想天外な物語に、ガミラスに奴隷化された蜂星人たちの痛ましい物語が重なる一編だ。
「神様にもらった命も、人間にもらった命も、命の尊さに変わりはないはず」
アナライザーに対して結構ひどい態度だった森雪が、このアナライザーの言葉で我に返る。
しかし、どうあっても悲しいかなアナライザーの恋が成就することはない。
※山本暎一は、地球を脱出して宇宙に移住先を求める物語を作りたいという西崎義展の誘いを受けて、初期から構想を練った人で、藤川桂介・豊田有恒にストーリー案を依頼したのも山本暎一だ。松本零士がプロジェクトに参画するのと入れ替わるように山本暎一は別プロジェクトに移ったが、そうでなければ監督を務めるはずだった。人間ドラマを重視したプロットを作っていたらしいので、それに沿ったエピソードには企画・原案としてクレジットされているのではないだろうか。

第18話で明かされる真田工場長の秘密は壮絶だ。
ただ、機械が人の命を奪うことがあってはならないと言うものの、姉の命を奪った事故は小学生のくせにロケットカーを運転させろと駄々をこねた真田少年が起こしたものではなかったか…😥
科学は人間を幸せにするためのものだと訴えるこの一編を、ロボットの命も尊い命だと訴える第16話と併せてチョイスしたことに意義はある。
それにしても、「科学は俺にとって屈服させるべき敵なのだ」と言う真田さんの屈折ぶりは怖いほどだ。

閑話休題、第20話から登場した太陽系方面作戦司令長官ドメル将軍が玉砕する第22話は名編だ。
冥王星前線基地司令シュルツは、万策尽きて第9話で艦隊ごとヤマトに体当たりを敢行して果てる。
「栄光か死か、二つに一つしかない」
「二度とガミラスには戻れないのだ」
「これがガミラス軍人の運命だ」
「我らの前に勇士なく、我らの後に勇士なしだ」
シュルツ艦隊の最期も壮絶だった。
しかし、ドメル将軍だけがガミラス軍の中で英雄的に感じるのは、沖田艦長とドメル将軍が互いを認め合うような描写があるからだ。
ドメルは最後にヤマトに通信し、沖田艦長に敬意を表する。そのうえで最終手段をとる。
「あなたと同じように、私の戦いにもガミラスの命運をかけているのだ」
「ガミラス星ならびに偉大なる地球に栄光あれ」
ドメルも、デスラーに退路を断たれた点はシュルツと同じだった。
しかし、シュルツ艦隊の特攻が空振りに終わるのに対して、ドメルの自爆はヤマトに甚大な被害を与える。
そして、一戦を終えたヤマト艦上での宇宙葬が描かれ、多くの乗組員の命が失われたことをまざまざと示している。

本作もまた、ヤマトフリーク庵野秀明のチョイスに敬意を表し、この企画自体に☆フルマーク。

森雪のボディコンシャスなユニフォームは、圧倒的に男の乗組員が多い艦内では危険すぎないかと私は思ったものだ。
古代進やアナライザー以外にも内心落ち着かない者はいたはずだ…(笑)

kazz