「出航して50年をこえても「THE JOURNEY」は続く」松任谷由実 THE JOURNEY 50TH ANNIVERSARY コンサートツアー movie 5.1ch/4K 呉田軽穂さんの映画レビュー(感想・評価)
出航して50年をこえても「THE JOURNEY」は続く
1979年、私が10歳の時にユーミンのショーを初めて観て以来その世界観が私を支配し続けている。
「ユーミン」という言葉は世間的には松任谷由実さんのニックネームだが、ユーミンファンの間では松任谷正隆•由実夫妻が作る音楽とその世界観、それにかかわるバンド、コーラス、スタッフ、その作品に影響を受ける時代、風景、ファン…全てを指す言葉である。
「あなたにとってユーミンとは?」との問いに私は「冠婚葬祭」と答えることにしている。45年もユーミンの追っかけをやっていると、どんなに熱意を注いでいたファンも受験、入学、卒業、就職、結婚、出産など色々な人生の転機で離れていく。しかしそんなかつてのファンもユーミンのイベントでは帰ってくる。だから「冠婚葬祭」なのである。
これまで数々のユーミンのスペクタクルショーを観てきて、今回の「THE JOURNEY」も全54公演を観ることが出来た。松任谷正隆氏がトークショーであかした通り、ユーミンが愛してやまないProcol Harumの楽曲、"Wreck of the Hesperus"にインスピレーションを受けたこのショー。コロナ禍を経て世界から日々舞い込んでくる戦争や環境破壊のニュース… 50周年記念ツアーだからと言ってヒット曲メドレーになることもなく、「水の中のASIAへ」、2002年の逗子マリーナ、2003年の「SHANGRILA Ⅱ」、2006年の「THE LAST WEDNESDAY」など数々の過去のショーのオマージュでもあるこのショーのストーリーは「未来がより良い世界であるために」という松任谷正隆氏のメッセージとともに完結する。
プロデューサーの団野健氏は、坂本龍一氏デザインの109シネマズプレミアム新宿の「スーパーデッド」の音響でこの作品を上映したいと思ったという。
ドラゴンが吠え、ファイヤーボールがとどろき、ターンテーブルの回転やアクターのステップ音が加えられた音響、4Kによって細かな色彩まで完璧に表現された映像、これは既に発売されたBlu-rayとは全く違う作品と言っていい。
12月13日の公開記念舞台挨拶上映をご覧になったユーミンは上映後涙ぐんでいた。ユーミンはSNSでは「今まで関わってくれたすべてのみーーーーんなに感謝して、周り回って自分に泣けました!!」とコメントしたが、松任谷正隆氏によると「映画を観て単純に感激して泣いたのではなく、一人の人間としての自分と、演出されたステージの自分の乖離に泣けた」のだという。
活動開始50年を過ぎても「時空の旅」という永遠のテーマで創作活動の旅を続けるユーミン。
永遠の天才少女の「THE JOURNEY」はまだまだ続く。