「本気の競技ダンス映画」10DANCE mさんの映画レビュー(感想・評価)
本気の競技ダンス映画
あまりにも心を打たれた作品だったため、初めてレビューサイトに投稿する。
原作からのファンとして観た映画『10DANCE』は、実写化作品として非常に満足度の高い一本だった。
映画という尺の都合上、物語やキャラクターの描写が削られている部分はあるものの、その分、感情と身体の表現にぐっと焦点が絞られていて、結果的に映画として非常に完成度の高い作品になっていた。
鈴木を演じる竹内涼真は、本作のために鍛え上げた身体とともに、画面越しでも伝わってくるほどの生々しい色気を放つ。
一方の杉木を演じる町田啓太は、聡明さと気品を感じさせる佇まいで、静かな色気を滲ませる。
このレベルに辿り着くまで、どれほど自分を追い込んできたのだろうかと思うと、俳優たちの並々ならぬ努力には、原作ファンとして頭が下がる。
そんな二人がライバルとして、互いのダンスを教え合う仲間として向き合い、ダンスを通して少しずつ心を通わせていく過程は、単なる恋愛という言葉では言い表せない。同性愛を描いた作品というよりも、ダンサーとしての尊敬や嫉妬、葛藤や誇りといった複雑な感情が、最終的にダンスへと昇華されていく物語だ。
クライマックスのダンスシーンは、まるでその場に立ち会っているかのような臨場感があり、息をするのを忘れるほどだった。
音楽も美しく、観終わったあとも余韻が残る。
何度でも観返したくなる映画だと思う。
原作を知らない人には、二人がいつ、どのように惹かれ合ったのか分かりにくいかもしれない。
けれど、その答えはすべてダンスの中にある。
手が触れ合った瞬間、もう想いは通じ合っているのだから。
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