劇場公開日 2025年4月11日

「静寂のインテリ復讐劇ーー」アマチュア abuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5静寂のインテリ復讐劇ーー

2025年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

『アマチュア』は、妻を失ったインテリ主人公がその頭脳を駆使して復讐に挑む――しかしその“熱量の低さ”が最大の特徴だ。

殺された妻の存在は物語の出発点だが、彼女が襲われる場面は防犯カメラ映像を通じてしか描かれず、主人公自身も現場の悲劇を直接体験しない。だからこそ観客は「がんばれ!」という感情移入が難しく、復讐劇としてのカタルシスが薄い。

だが、この“熱の低さ”こそが本作の仕掛けでもある。タイトル通り「アマチュア」な復讐――完璧なスパイでも、激情に駆られるでもない、淡々とした知性戦が繰り広げられる。加害者も黒幕も、登場人物全員が抑制された感情で動き、画面全体にクールな緊張感が張り詰められている。

一般的な復讐アクション映画(例:『96時間』)のように「大切な人が今まさに危ない!」というリアルタイムの切迫感はない。そのぶん、「もし自分だったら」と現実的に想像させるリアリティと、既成概念を覆すスパイものとしての新鮮さが際立つ。インテリが淡々と用意した罠が奏功する瞬間は、むしろ静かな驚きと共に心に響く。

総じて、『アマチュア』は“激情ではなく知性”で描く異色の復讐劇。熱量高めのアクションを期待すると肩透かしを食らうが、その控えめな演出が織り成すクールなスリルは、逆に新鮮な味わいを観る者にもたらしてくれる。

abu