劇場公開日 2025年4月11日

「CIAの食堂!」アマチュア 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5CIAの食堂!

2025年4月22日
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CIAの食堂!

スパイ映画の常套手段を大胆に回避した意欲作だ。

派手なカーチェイスや銃撃戦を最低限に抑え、
火力に頼らないストーリーテリングに挑む姿勢は、
現代のエンターテインメント映画が求める「無敵のヒーロー不在」の流れを体現している。

この選択は、
ジャンルの枠を超えようとする野心を際立たせるが、
同時に、物語の焦点の曖昧さや推進力の不足が、完全な成功を阻む。

印象的なのは、

CIAの施設内に、
食堂があるのか!

セキュリティは?

しかも、テーブルの上には、
マスタード、ケチャップ等々、

厳しい訓練を積んだ猛者たちは、
それらを口にするのだろうか。

こうした細かなディテールを始めとして、
シナリオ全体としても同様の細やかさが欠け、
焦点が定まりにくい。

アクションを意図的に抑えたのは、
スパイの「リアルな日常」を描く試みかもしれないが、
インテリジェンスを駆使した頭脳戦や緊張感ある展開を、
期待する観客には物足りない。

物語の推進力が主人公の芝居に頼り過ぎで、
観客を掴み続ける力がやや欠けている。

それでも、視覚的・雰囲気的な魅力は見逃せない。

マルセイユ、イスタンブール、バルト海沿岸といったロケーションは、
往年の娯楽映画を彷彿とさせる古き良き街並みと、
冷たく広大な海岸の曇天模様で、
主人公の内面の闘いを詩的に映し出す。
(世界標準としては、
ロンドンすらも、
古き良きという扱いなのかもしれない)

カメラの巧みな構図と色彩設計は、
物語の平板さを部分的に補い、
特にバルト海沿岸の荒涼とした風景は、
孤独と向き合う主人公の心情を視覚的に強化し、
作品に忘れがたい余韻を残す。

音楽も効果的だ。

無音のシーンが多い中、
控えめながら情感豊かなスコアが、
緊張や哀愁をさりげなく高める。

こうした演出の細やかさは、
映画の静かな魅力を一定量ではあるが支えている。

最後に、

ニワトリの鳴き声アラーム、
もっと効果的に使ってほしかった。

蛇足軒妖瀬布