「戦闘力ゼロという主人公の設定が、十分に活かされているとは思えない」アマチュア tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
戦闘力ゼロという主人公の設定が、十分に活かされているとは思えない
宣伝文句にある「驚くべき陰謀」とは、一体何だったのだろうか?
主人公の妻が殺されたテロ事件にCIAが絡んでいたということなら、犯人の捜査をろくに行おうとしない時点で、そんなことは推察できてしまい、驚きでも何でもない。
例えば、ラストで、「主人公を暗殺者に仕立てるために、CIAが妻を殺した」みたいな事実(これも、陰謀としてはありきたりだが・・・)が明らかになったならば、少しは「どんでん返し」感を味わえたかもしれないが、結局、何のヒネリもないままで終わってしまい、完全に肩透かしを食らってしまった。
サイバー分析官の主人公が、いとも簡単に様々な情報を入手したり、色々なシステムをハッキングしたりできる「お手軽さ」には目をつぶるとしても、各国を自由に行き来したり、たやすく爆弾を仕掛けたりできるところには、やはり、「ご都合主義」を感じざるを得ない。
主人公が、どこで、何をしようとしているのかが分かっているのに、それを阻止することができないCIAの幹部たちも、標的となっているテロリストたちも、間が抜けているとしか考えられず、「頭脳戦」の醍醐味が、あまり味わえないところも物足りなかった。
主人公が死んだら、CIAの汚点がマスコミに公開されるはずなのに、どうして主人公を殺そうとしているのかといった疑問の他にも、暗殺の教官が殺したCIA職員は誰だったのか(長官が派遣した「信用できる者」?)とか、ラストで船を遠隔操作していたのは誰だったのか(港にいた、主人公に命を助けられたことのある工作員?)とか、説明不足で分かりにくいところが多く、物語に入り込むことができなかったのも残念だ。
せっかく、ひ弱なオタクを主人公にして、派手なアクションや肉弾戦以外のところで見せ場を作ろうとしたのであれば、ストーリー・テリングの面で、もっと工夫があっても良かったのではないかと、少し勿体なく思ってしまった。