「【"CIA上層部の深い闇。”世間的には人民を護る組織の闇を背景に、妻をテロで殺されたCIA下っ端分析官の復讐を描いたカタルシス少なき作品。あと、予告編の出し方を考えさせられる作品でもある。】」アマチュア NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"CIA上層部の深い闇。”世間的には人民を護る組織の闇を背景に、妻をテロで殺されたCIA下っ端分析官の復讐を描いたカタルシス少なき作品。あと、予告編の出し方を考えさせられる作品でもある。】
■ある日、CIA分析官のチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)の同じくCIAに勤める妻サラ(レイチェル・ブロズナハン)が、出張先のロンドンのホテルでテロに巻き込まれ殺害される。その事実を出社した時に、上層部のムーア(ホルト・マッキャラニー)に呼び出され告げられる。
チャーリー・ヘラーは、その復讐のためにムーアの指示で教官になったヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)に銃撃など基本を叩き込まれる。が、チャーリーが極秘情報を得ていると知ったムーアが、ヘンダーソンを差し向けるが既に失踪した後であった。
◆感想
・この映画の予告編は、映画館で50回は観た。サラがテロリストに殺される直前のシーンから、チャーリーがスカイプールをリモート操作で爆破して犯人らしい男を落下させるシーンまでの流れが、完全に頭に入っていた。
だが、本編ではそれは些少な部分であり、もっと驚く様なシーンが散りばめられているだろうと思い、映画館に足を運んだのだが、物語の進行がほぼ予想通りに進んで行くのである。ウーム。
・だが、良かったのはチャーリーが妻の死の真相を探ろうとした際に、元々情報提供者であった”ロシアの50歳の男”インクラワインのデータから分析した”世界各地のテロ行為が、政治的思惑によりCIA上層部の指示により引き起こされていた。”という情報と、テロに関わった4人の男女の素顔が割れて行く様は、面白い。
それにしても、今や個人情報駄々洩れ時代である事を象徴的に描いているな、と思う。
更には、”ロシアの50歳の男”インクラワインが、夫の遺志を継いでいた妻(カトリーナ・バルフ)であった事が分かるシーンと、彼女がチャーリーを隠れ家に匿うシーンかな。
・チャーリーは欧州に渡り、情報屋の女性テロリストをガラス張りの密室で心肺機能に問題があるためにチェックしている場に入り込み、街の花屋で買い占めた百合などの花粉(ル・ポラン)を密室に噴霧し、逃げ出した女性は車に轢かれて死亡。そして、もう一人の男も上記のプロセスで死亡。武器調達の男は、チャーリーに嵌められて爆死していくのである。
だが、何故かチャーリーの復讐行為に対してのカタルシスが起こらないのである。
・チャーリーがヘンダーソンに訓練を受けたのも、彼の戦略であり、ムーアが差し向けたヘンダーソンと、ムーアに疑惑を持つ女性CIA長官が差し向けた男との争いも、全てチャーリーの戦略である事は見ていれば分かる。
チャーリーは、弱っちい振りをしながら実は強かなのである。但し、殺す相手に直接的に手を下せない心理的な弱みを持っているのだが、それ故に観ている側にカタルシスが齎されないのである。
■それが一番分かるシーンは、直接的に妻の頭に銃弾を撃ち込んだシーラが乗船するロシア船に乗り込んだ時の、チャーリーとシーラが対峙するシーンである。
シーラはチャーリーに拳銃を渡して”撃て”と言うのだが、チャーリーは撃たない、というか撃てない。その代わりにリモートコントロールで船をフィンランド沖に誘導し、インターポールにシーラたちを逮捕させるのである。
”そこは妻を殺された男だったら、シーラの部下が銃を向けていても、撃ち殺せよ!”と激しく思ったのであるが、彼はあくまで自身で直接的に手を下さないし、一番の復讐相手だけ逮捕って、他の3人は死亡させたのにオカシクナイか?とさらにジリジリするNOBUであった。
<ラスト、女性CIA長官がムーア達の長年に亘る行為を謝罪するシーンと、ムーアが逮捕されるシーンが映し出される。
そして、チャーリーは普段通りにCIAに出社すると、彼の車に死んだもしくは大怪我をした筈のヘンダーソンが乗り込んできて、彼と握手をするのである。
脳内で”ヘンダーソンは、嫌々チャーリーを殺そうとして、ランドリーでの闘いも防弾チョッキを着ていたのだろう。”と無理やり整合性を取って劇場を後にしたのでありました。>
■2025年4月13日 追記
あるレビュアーさんから、チャーリーがシーラを殺さなかった理由"シーラを殺さなかった事で、CIAのムーア達を逮捕させる。"というご意見を頂いた。成程、と思うご意見でありました。
映画の見方は、改めて深いモノだと思いました。感謝でございます。
本当の黒幕はCIAのあの二人
最後にボスを殺したらそこに捜査が及ばない。
という説明はどうでしょう?
映画の中で繰り返し、「復讐してあなたは救われるの?」という問いかけが繰り返されます。
その答えでもあると思いました。
恐怖の顔が見られてもう達成感があったということかしら。
私は「殺せ」とは思わなかったです。
共感どうもです。
私のレビューにも書きましたが、あのラストでは観客側のカタルシスは得られないままですね。ヘンダーソンは怪我が回復したと言うことですか。次があればヘンダーソンとバディかな。