「川というモチーフとフィットした作品」光る川 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
川というモチーフとフィットした作品
監督の舞台挨拶付き上映で鑑賞。
原作である「長良川スタンドバイミー一九五〇」という小説の映画化の機運が、十数年前から盛り上がっていたものの実現に至らず、今回、金子監督のところに話が回ってきて、やっと制作された映画とのこと。一本の長編作品を世に出す大変さを改めて感じた。
これまでも山や川をモチーフに、ロケーションを大切にしてきた監督らしく、描き出される映像がとても美しい。山のしっとりした空気感や、木々のにおい、ひんやりとした水の感触までもが伝わってくる作品。
伝承と現代とのつながりという大きな歴史や、その中で繰り返される個々人の生涯史、はたまた豊穣と破壊という様々な面から、川というモチーフはフィットしていて、一つの物語の中でうまくまとめられていた。
公式ページのキャスト紹介でもポスターでも、やっぱり纏っているオーラから華村あすかが前面に出てくるが、自分は、それに劣らず少年役の有山実俊が素晴らしかったと思う。
もっというと、ビジュアルだけでは性別も不明な存在が、一連の出来事を通して、性別の曖昧さはそのままに(仏的な性別を超越した存在として)、精神的に少し大人になるという物語だったと感じた。
これまでスタンドバイミー的な作品は、ある意味、性自認とセットで通過儀礼を経るような印象だったが、今作は、性的なものも全く登場しないわけではないのに、登場人物の成長の力点がそこに置かれず、大切な人を守りたいという一点で貫き通しているところが自分はよかった。
文字情報では、代名詞を使うと性別が割と明確に意識されてしまうところを、映像で見せて、観客に判断させる「映像表現ならではのよさ」の
一つかもしれない。
コメントありがとうございます。
全体を通して派手さはないですが、とてもセンスのよい作品だったと思います。
紙芝居から始まることもあり、子供でも観られそう。
寓話的な側面もあるように感じますし、もっと知られてほしいです。