劇場公開日 2024年12月21日

  • 予告編を見る

「フィルムを通じて対話する世界」対話する世界 しんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5フィルムを通じて対話する世界

2024年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新宿での初上映以来2年ぶりにスクリーンで鑑賞。8ミリと16ミリのフィルムとデジタル撮影を駆使して過去と現在が交錯する物語を描いています。ぼくは最初に観たときは「去年、マリエンバートで」を思い出しましたが、2度めの鑑賞はまた少し印象が変わりました。フィルムに焼き付けられ、映し出される世界はとてもおぼろげで、物悲しくて、それが過去のものであることを強く感じさせられます。もはやこの世界に存在しないものが、フィルムのなかには存在する。その存在感がフィルムの中ではとても強く感じられます。その存在がフィルムを映写した瞬間から、この世界に語りかけ、影響を与えていく。そうした心のなかで起こることを、この作品は描いているのだと思います。失われてしまったものとの対話。それもまた映画のもつひとつの力なんだと思いました。おぼろげで幻のような作品ですが、夏海さん演じる主人公と小原徳子さん演じる過去を生きた女性の力強い存在が、この作品に温かみとぬくもりを与えてくれてると思いました。

しん