「多感な心に寄り添う、優しく瑞々しい青春ドラマ」おいしくて泣くとき saiko *さんの映画レビュー(感想・評価)
多感な心に寄り添う、優しく瑞々しい青春ドラマ
この作品は、単なるラブストーリーや社会問題を提起する重い作品とは一線を画していました。
思春期という多感な時期にしか感じることのできない、繊細な心の揺れをノスタルジックに描いたヒューマンドラマといった印象です。
初恋の甘酸っぱさ、狭い世界で起こる抗えない悩み、そして何も解決できない無力さといった、若者の複雑な感情が、初々しく透明感のある二人によって瑞々しく表現されていました。
脇を固める実力派俳優たちの存在も相まって、感動的なシーンが随所にありました。
一方で、いくつか気になった点もあります。
物語の冒頭でカフェに車が突っ込むシーンでは、観客をグイっと引き込む力がありましたが、後のストーリー展開から分断されたような印象を受けました。
その強い表現が、そのためだけにあったのかと疑問に感じてしまいました。ラストの描き方も同様に、少し切り離されたような感覚が残りました。
映画館で鑑賞してから2ヶ月経って、ようやくこのレビューを書いています。鑑賞直後は、心が洗われるような清々しさと、懐かしさに胸がキュンとする気持ちになりましたが、なぜかその時はレビューを書く気持ちになれませんでした。
強く心に焼き付くような作品とは言えないかもしれませんが、総じて、乾いた心を潤してくれる素敵な作品だったと思います。
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