「おそらく原作を読まないとわからないことだらけで、脳内補完にも限界があると思った」おいしくて泣くとき Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
おそらく原作を読まないとわからないことだらけで、脳内補完にも限界があると思った
2025.4.5 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(109分、G)
原作は森沢明夫の同名小説
30年間疎遠になっている想い人を探す男を描いた恋愛&ヒューマンドラマ
監督は横尾初喜
脚本はいとう菜のは
物語の舞台は、愛知県某所
カフェレストランを経営している風間心也(ディーンフジオカ、高校時代:長尾謙杜、幼少期:立花利仁)は、妻・ゆう子(篠原ゆき子)とともに、子ども食堂も並行して営業していた
かつて、父・耕平(安田顕)が始めたもので、心也はその意思を継いでいた
心也には幼少期に亡くなった母・南(美村里江)がいたが、その時に守られなかった約束があって、それが尾を引いていた
ある日のこと、台風が近づいてきたとのことで看板を直しに外に出た心也は、店に突っ込んできた暴走車に轢かれそうになってしまう
一命を取り留めるものの、店先は営業不能状態になってしまう
心也は夏休みまでに営業を再会させたかったが、どこの金融機関も良い返事を返してはくれなかった
そんな折、そのニュースを聞きつけた一人の女性が店を訪れた
彼女は建築士として働いている高梨萌香(芋生悠、幼少期:𠮷田帆乃華)で、店の修理を無償で行う代わりに、願い事を聞いてほしいという
心也は頼る人もおらず、その申し出を受けることになった
物語は、現代パートの心也が30年前の高校1年生時代を回想する様子を描き、そこで夕花(當真あみ)と出会い、そして別れるに至った経緯を紐解いていく
高校1年生の夏休み前、心也は怪我が原因でサッカー部を離れることになり、暇を持て余していた
家に帰れば店の手伝いをさせられるだけで、そんな時に降って湧いたのが「学級新聞作成」の話だった
担任の矢島先生(希志真ロイ)は、立候補がいなければ推薦でと言い、そこでクラスメイトの江南(原愛音)が「部活に入っていない夕花」を名指しで指名した
クラスのみんなも同調するようになり、夕花はそれを引き受けることになった
そして、休部中の心也もそれに加わることになり、二人で学級新聞を作ることになったのである
映画は、二人の甘くて切ない青春時代を描き、それがある理由で転換する様子が描かれていた
それは、夕花のことが気になって家に向かった際に、クラスメイトの石村(水沢林太郎)と遭遇したもので、夕花が義理の父(池田良)から暴力を受けていたことだった
石村は咄嗟に義父に飛びかかり、心也に対して「夕花と一緒に逃げろ」と叫んだ
心也は夕花を安全なところに連れて行き、そこで彼女は「遠くに行きたい」と言い出す
心也は彼女の願いを叶えるべく、列車を乗り継いで、母親との思い出の海岸を目指していくことになった
その後、一晩を駅で過ごすことになった二人だったが、これ以上迷惑を掛けられないと思った夕花は警察に通報してしまう
それによって、二人は離れ離れになってしまい、一通の手紙が送られた後は音信不通になっていたのである
夕花と心也が音信不通になった理由というのがミステリーとなっているのだが、その暴露はかなり呆気ないものだった
警察に連れて行かれた後にどうなったのかはわからないが、どうやら弟を連れてどこかで暮らしているらしく、それを父親に見つかってしまっている
それが手紙を出した直後であり、そこである事件が起きた、というものなのだが、色々と疑問点は多いネタバラシとなっていた
おそらく原作を読めばわかると思われる内容なのだが、最大の疑問点は「夕花と弟・耕太(矢先滉、成人期:田村健太郎)がどうやって離れ離れになったのか、というところだろう
夕花と耕太が父親と離れて暮らせている理由はわからず、母親の元に行ったのか、祖父母の元に隠れたのかはわからない
特に、夕花の母親が一切出てこないので、生きているのかどうかも、そもそも結婚しているのかどうかもわからない
耕太の話だと、夕花と母親の家に彼らがやってきたというもので、おそらく結婚はしていないのだろう
なので、父親が起こした事件によって、家族ではない二人が別の施設に引き取られたというのは考えられる
夕花に関しては、母親が引き取って育てたの可能性もあるが、そのあたりがクリアではないので、どうなって弟と生き別れることになったのかは疑問だった
また、夕花の娘にあたる萌香のお願い事が隠し事になっているのも不思議な話で、最初からあの宝箱を見せれば良かっただけだと思う
二人が会うきっかけになる事故は必要だが、それを交換条件にするというのはあまり効果的な設定ではないように思えた
普通に保険が降りて修理をすることになり、たまたま施工業者として訪れたとか、そう言った縁が結びつけたというのでも良いと思う
ピンポイントにニュースを見て「心也さんかもしれない」というのはかなり無茶な展開になっていて、宝箱の「かざま食堂の箸入れ袋」で普通に辿り着きそうに思えた
いずれにせよ、夕花が誰と結婚して、誰の子どもを産んだとか、心也が夕花という女性に固執し続けているにも関わらず普通に結婚しているあたりも説明不足なのだと思う
映画の延長線上で考えるなら、夕花は義父から性暴力を受けていて、記憶喪失の時に義父との子どもを知らずに産んだ、みたいなことになると思う
また、心也とゆり子の関係に関しては、高校時代を知るクラスメイトの誰かという路線だと思うのだが、心也を気にする女生徒の存在は皆無なので、妻の選択というのも普通ではないように思えた
このあたりを全部説明しろとは言わないのだが、ここまで端折るのならば、もう少しシナリオを取捨選択して、疑問を残さないようなものにした方が良かったのではないだろうか
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