劇場公開日 2025年4月4日

「人生をかけた約束の物語」おいしくて泣くとき おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生をかけた約束の物語

2025年4月6日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

予告を目にしなかったので内容は全く知りませんでしたが、今週公開の新作ということで、仕事帰りに鑑賞してきました。

ストーリーは、幼い頃に母を亡くして、食堂を営む父と暮らす心也は、貧しい家庭で父の暴力に耐えながら暮らす同級生の夕花とともに、半ば押しつけられるように学級新聞の編集委員を任され、自らを「ひま部」と名付け、授業後に一緒に過ごす時間が増える中で互いの距離は縮まっていくが、ある理由で夕花がいなくなってしまい、それから30年、消息のつかめぬ夕花を待ち続ける心也のもとに、見知らぬ女性が現れるというもの。

全体的には、現在は大人となって子ども食堂を営む心也が30年前を回想する形で、学生時代の夕花との思い出が描かれます。主演の二人の素朴な演技が実に心地よく、二人の淡い恋は観る者の思い出とも重なり、甘酸っぱさが伝わってきます。

と同時に、二人の家庭環境が描かれ、それぞれに寂しさを抱えていたことも伝わってきます。幼い頃に母を亡くし、子どもに無料で食事を振る舞う父を理由に「偽善者のムスコ」と揶揄される心也。クラスに親しい友達はなく、悲惨な家庭で息を潜めるように暮らす夕花。詳細は描かれませんが、子連れの再婚で継父につらくあたられ、義弟と食うや食わずの貧しい生活を送っているようで、あまりに不憫で胸が締め付けられます。

そんな環境にあって、素直な心根を保ち、健気に耐える二人の姿が本当に切ないです。授業後の「ひま部」は、余計なことを思い出さず考えず、心安らぐひと時であり、居場所だったのだと思います。そこで、互いを気になる存在として意識していくのはとても自然なことのように思います。

それでも、果たされなかった母との約束がトラウマとなっている心也が、夕花に対して些細な約束さえもためらってしまう姿が印象的です。ここに本作の大きなテーマがあり、本作は、心也が人生をかけて守り通した約束の物語であると言えると思います。

約束は守れるかどうかではなく、守る覚悟があるかどうかが大切であり、その覚悟は、相手の幸せを心から願う祈りであると訴えているかのようです。亡き母の愛は、心也にしっかりと届き、形を変えて夕花に伝わったように見えます。それは、子ども食堂を営む父の姿にも、夕花の娘の姿にも見ることができます。心から誰かの幸せを願う、大きな愛と優しさに包まれた物語に感動の涙を禁じえません。

余談ですが、かざま食堂の焼きうどんがおいしそうで、食べてみたくなりました。ロケ地が地元なので、もし本当に提供しているお店があるなら、訪れてみたいです。

主演は、長尾謙杜くんと當真あみさんで、思春期の初々しい恋心と複雑な思いが伝わる演技がとてもよかったです。脇を固めるのは、安田顕さん、美村里江さん、ディーン・フジオカさん、篠原ゆき子さん、尾野真千子さん、池田良さんら。中でも、安田顕さんの演技が秀逸で、愛情あふれる父親の姿に目頭が熱くなります。

今回は、舞台挨拶中継があり、長尾くん、當真さん、安田さん、美村さんらが登壇されました。上映前ということで、内容に触れられることはありませんでしたが、話の中で「最初の脚本は3時間半あった」とお聞きしました。原作未読ですが、きっと盛り込みたいエピソードやシーンがたくさんあり、そこから泣く泣く削ぎ落として脚本が完成したのでしょう。そう思うと、本作もとても素敵だったのですが、機会があれば原作にも触れてみたくなります。

おじゃる
おおとりさんのコメント
2025年4月6日

最後は読めたしひま部は2人に共通点を持たせるためのものだけにあり得ない感が、2人とも歳取ったねと泣いてるように思えなくもなかった

おおとり
おおとりさんのコメント
2025年4月6日

最後は読めたし2人とも歳取ったねと泣いてるように思えなくもなかった

おおとり
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