「疑問に思うことや、不自然に感じることが多すぎて、物語に入り込めない」おいしくて泣くとき tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
疑問に思うことや、不自然に感じることが多すぎて、物語に入り込めない
記憶を失っても、「バター醤油焼きうどん」の味は覚えていたというラストは、タイトルのとおりで、それなりに感動的ではある。
だが、そこに至るまでの経緯に、まったくと言っていいほどリアリティーが感じられず、少しも物語に入り込むことができなかった。
そもそも、道端で倒れて記憶を失っただけで、30年間も音信不通になるものだろうか?
おそらく、少女は、施設か里親の元に身を寄せていたのだろうが、事故があった郵便ポストの周辺を調べれば、すぐに身元が判明するのではないか?ましてや、彼女が持ち歩いていたと思われる「割りばしの袋」には、はっきりと店の名前が書いてあるので、そこから、たやすく、自分が誰かを調べることができたのではないだろうか?
少年と少女の別離のシーンにしても、おそらく、少女が、警察に保護を求めたということなのだろうが、だったら、警察が、彼女に駆け寄ろうとする少年を、押し留めようとする理由が分からない。むしろ、彼に同行を求めて、事情を聴取するというのが、警察の普通の対応なのではないだろうか?
大の男が2人ががりて小柄な少年を取り押さえようとする絵柄の不自然さも含めて、無理やり「好き同士なのに引き離される」状況を作り出したように思えてならず、そうした「わざとらしさ」のせいで、主人公たちの絶叫も、ちっとも心に響かなかった。
他にも、机の落書きなどのイジメの証拠があるのに、どうして先生は何もしないのか?無免許運転で保険に入っていなかったのだとしても、加害者には損害賠償の責任があるのではないか?「今夜は帰らない」と父親に電話した少年は、いったい何をするつもりだったのか?店の外観や内装が昔とは違うのに、どうして修理が完了するまで、「そのこと」を秘密にする必要があったのか?といった具合に、疑問に思うことや、不自然に感じることが、次から次へと後を絶たない。
暴力を振るう父親や、学校のいじめっ子たちがのさばり続け、最後まで彼らに正義の鉄槌が下されなかったところにも、釈然としないものを感じてしまった。
少年と少女の初恋の描写が、とても瑞々しくて魅力的だっただけに、こうした杜撰な脚本と雑な演出のせいで、それが台無しになってしまったのは、残念としか言いようがない。