「【今作は、人生経験豊かな一癖あるタクシードライバーが、キャリアウーマンとして自立しながら、心に悩みを抱える女性客をタクシーの車中の会話の中でその心を解きほぐす様を描いた会話劇である。】」ドライブ・イン・マンハッタン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、人生経験豊かな一癖あるタクシードライバーが、キャリアウーマンとして自立しながら、心に悩みを抱える女性客をタクシーの車中の会話の中でその心を解きほぐす様を描いた会話劇である。】
<Caution!内容に触れています。鑑賞後にお読みください。>
■ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で、タクシー運転手のクラーク(ショーン・ペン)は、”オクラホマ”から戻って来たキャリアウーマン(ダコタ・ジョンソン)をダウンタウンまで乗せる。日本で言う”ロング”という奴だ。
ラストの乗客が”ロング”であるからか、クラークは彼女に陽気に話しかける。その会話は、いつしかお互いの恋愛、家族、過去の出来事まで入り込んで行く。
◆感想
・クラークとキャリアウーマンは親子ほど年齢が違うようだ。このことも、後述するが、キャリアウーマンがクラークと長々と話す切っ掛けになったと思う。
更に、クラークは徐々にキャリアウーマンを、我が娘の様に感じて行ったのではないかな、と思ったのである。
・クラークは、バックミラーで、チラリとキャリアウーマンの服装を見て、”自立した女性だな。何の仕事をしている?”と語りかける。キャリアウーマンはそれに答えながら、スマホで恋人らしき男とラインの遣り取りをしているが、酔っているらしき男の文章は卑猥なモノが多く、彼女は眉根を寄せる。
・それを見たクラークは彼女に”その男は、君とは合わないな。自分を大切にしろ。”とジョークを交えながら軽く伝えるのである。そして、徐々にキャリアウーマンから”幼い頃から、父に抱っこして貰った事がなく、別れの時に握手をして貰った事を覚えている、けれども違っているかもしれない。”と話される。この時点で、キャリアウーマンがファーザーコンプレックスを持っており、何故に妻子ある男と付き合っている理由が氷解するのである。
・二人の会話は、可なり際どい所まで行きつつ、事故渋滞の影響もあり長く続く。クラークは最初は一度目の妻を、”頭が空っぽ。”と言っていたが、キャリアウーマンの様子を見て、”素敵な女性だった。”と告げるのである。
そして、到頭、キャリアウーマンは、妻子ある男の子を妊娠していたが、流産した事を涙を流しながら告げるのである。そう、彼女は実家の或る”オクラホマ”に行っていたのである。”オクラホマ”と言えば、分かるよね・・。
<そして、漸くダウンタウンにタクシーは到着し、キャリアウーマンはカードを出し、料金を支払う際に500ドルものチップも弾むのである。
そして、吹っ切れたような爽やかな顔で、クラークが”マイキーと言う名の方が良いな、”と言っていた事を想い出し、”お休み、マイキー。”とニッコリ笑ってアパートメントに入って行くのである。そして、クラークは彼女の荷物を出したトランクに手を置きながら、微笑みながら、夜空を見上げるのである。
今作は、人生経験豊かな一癖あるタクシードライバーが、キャリアウーマンとして自立しながら、心に悩みを抱える女性客の心を、タクシー内の会話の中で解きほぐす様を描いた物語なのである。>
<2025年3月9日 刈谷日劇にて鑑賞>