劇場公開日 2025年2月14日

「社会(制度)がいくら変わっても、男の性がいつまでも残念ながら変わらないのなら、女性が変わるしかない」ドライブ・イン・マンハッタン とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5社会(制度)がいくら変わっても、男の性がいつまでも残念ながら変わらないのなら、女性が変わるしかない

2025年2月16日
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今この時もどこかで悪い恋をしている世の女性たちに、もっと自分を大事にして、目を覚まして!という女性応援映画にメッセージとテーマ、作り手の切なる願いを感じる。時は流れる、時代は変わる…。けど、男女平等を妨げている図式を気まずいところまで踏み込んで真理を洗いざらい曝け出す。いくらハード(ルールや仕組み作り)が整えられていっても、それを使うソフトも変わらないと。
始まって間もなくから主人公の見る上下反対にうつる手鏡が、彼女の心理状態をよく表していた。そして、事故渋滞時の後続車両からのクラクションやライトに振り返るショットもまた同じで、つまり彼女が後ろ髪を引かれているということ。それでも、タクシーは前に進んでいく。
一期一会たまたま出逢った、自立した賢い女性と粗野なタクシー運転手。助手席から切り替える形から、同じ画に入るようになり、2人を挟む小窓を開けて正面から見据えた切り返しになり…と次第に2人の心理的距離感が近くなっていくのを表す。タクシー運転手側から観たときの小窓が、視点を絞るための手前の障害物となっていて良かった。
ズケズケと相手の神経を逆撫でする気まずい話題をあえて選ぶお喋りクソ野郎。とりわけ普通にセクハラ発言していて途中下車してもおかしくない。けど、「夏みたいな人だった」って表現がとびっきり素敵で心に残った。ショーン・ペン名優ここにありなカットで鳥肌も立ってしまった。
主演2人の力がすごい。車中の注意深く当てられた照明が彼らを映し出して、2人の抱えているものや事実が次第に見えてくる。製作も兼ねているダコタ・ジョンソンの本気っぷりと悩める様子、爪を噛む仕草に眉間に寄った皺。水中の中で息が苦しくても息をし続ける、難破船にならないために。
人生は真と偽の連続、つまり0と1、そして2。スコアは2対0から始まる。時間稼ぎの事故にも考えようによっては、この病める現代社会への意味を見出せそう。正直、邦題や日本の宣伝方法もあって鑑賞前に思っていたような作品とは違ったけど、原題がヒントや多くを物語っているし、本作もこれはこれでよかった。何より製作意義を感じるし、これだから人間だって捨てたものじゃない。

P.S. チップ額に隣の人が「え〜!」と驚嘆の声を漏らしてしまっていた。久しぶりに会話劇主体の魅力・力強さを感じて、自分もそうした脚本が書きたくなった。

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とぽとぽ