「しっとりとした大人向けの作品」ドライブ・イン・マンハッタン Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
しっとりとした大人向けの作品
タクシーの車内という密室で、ドライバーと客という見ず知らずの者どうしがずっと話をしているだけの、あたかも舞台の会話劇を観ているかのような作品だ。
他の誰かに知られることがない、ある意味、心理的安全性の担保された環境で知り合いには話しづらい自分の気持ちを吐露していくのは、あたかもカウンセリングを受けているかのようだ。
連絡先が登録された極々限られた相手としかやり取りをしなくなって、話し相手の範囲がどんどん狭くなってしまっている現代だからこそ、知らない人に問わず語りのように話をすることで得られるカタルシスの大きさは計り知れないのかも知れない。
原題の Daddio は、男性に対する呼びかけの、ちょっと時代がかった表現で、現代なら dude とか guy などで表現されるだろう。でも、作品を観終わると、監督・脚本のクリスティ・ホールがなぜこのことばをあえて選んだのか分かるような気がする。また、彼女が昨年公開された『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』の脚本を担当していたことを鑑賞後に知って、なるほど、女性の痛みに寄り添える監督な訳だ、と納得した。
ちなみに、聞き手は立派なシュリンク(精神科医)である必要なんかない。さぁ、もしあなたが自分でダメダメだと思っていても、若い世代に対して(初めはきっとウザがられるだろうけど)その失敗から学んだ人生経験を活かすチャンスだよ!
それにしても、ショーン・ペン、ふけたよなぁ……。でも、いい年齢の重ね方をしているように思える。
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